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「冷え」と「乾燥」は冬の代表的な不調。内臓の働きや免疫力の低下にもつながるため、放置せずに早めに対策したいもの。

「実はこの2つはどちらも血行不良が引き起こしています。その大本となる原因が『毛細血管の衰え』です」

 と話すのは、内科医の石原新菜先生。

血行不良が冷えと乾燥を招く

「毛細血管とは動脈と静脈の間にある髪の毛の10分の1ほどの非常に細い血管のことで、全身の細胞に酸素や栄養を届ける役割があります。そんな毛細血管は内皮細胞とそれを覆う壁細胞が二重になることで壁を作っているのですが、加齢や生活習慣の乱れでその壁は『劣化』してしまいます。

 すると、細胞同士の結びつきが悪くなって隙間ができてしまい、身体の隅々に栄養を届けられなくなるのです」(石原先生、以下同)

 このように、血管自体は存在しているのに酸素や栄養の運搬ができなくなった毛細血管をゴースト血管といい、ゴースト化が進んだ毛細血管は最終的には消滅してしまう。

ゴースト化した血管が増えると血行不良が起きやすくなります。血液には体内の熱を全身に行きわたらせる役割もあるので『冷え』が加速。さらに、酸素や栄養が行き届かなくなることで肌の新陳代謝も弱まり『乾燥』も一緒に進みます。

 なので、冷えと乾燥を招いている血行不良の大本の原因であるゴースト化している血管を正常に戻してあげることが、両方の症状を改善させる近道なのです」

ゴースト血管の救世主となる酵素に注目!

血管の老化が「冷え」と「乾燥」を招く

「毛細血管を回復させる方法として近年注目されているのが、血管の中にある『Tie2(タイツー)』という酵素。Tie2は体内で作られる物質で、毛細血管内の内皮細胞と壁細胞を結びつける役割が。結びつきが強くなると、血液がきちんと巡るようになりますから、全身の血行が改善していくのです」

 このTie2を活性化させるためには、壁細胞から分泌される『アンジオポエチン-1』というタンパク質が必要不可欠。これも体内で分泌される物質だが、残念ながら加齢とともに分泌量は減ってしまう。

「ですが、このアンジオポエチン-1と似た成分を含む食材をとると、Tie2を活性化させることが可能です」

 Tie2を活性化させる食材として石原先生がすすめるのが、ルイボス、シナモン、ヒハツなどの植物。これらに含まれる成分がアンジオポエチン-1の代わりにTie2の活性化を促してくれる。

「ルイボスには、抗酸化作用の高いポリフェノールが豊富に含まれ、シナモンの香りにはリラックス効果もあります。ヒハツの辛み成分には血管膨張作用もありますので、これらの食材を組み合わせたお茶を飲むことで血行不良が改善していき、冷えと乾燥の両方にアプローチできます」

50代以上の女性は特に冷えやすい

 ただ、注意したいのは完全にゴースト化してしまった毛細血管は回復がむずかしいということ。逆に、消えかけている状態の血管であれば、対策ができるということだ。

「加齢とともに経年劣化で毛細血管は衰えるので、症状が気になる方はとにかく早めの対策を。さらに、女性はホルモンバランスが崩れやすく、自律神経が乱れて血流が滞ってしまいがち。更年期以降は女性ホルモンの分泌量が一気に減ってしまい、冷えと乾燥は加速する一方なので、50代以上の女性こそすぐの対策が必須です

 毛細血管にアプローチする以外にも、冷えや乾燥を改善させる方法もあるという。

「例えば、私は夏でも腹巻きをして内臓を冷やさないようにしたり、5本指靴下をはいたりして血行促進を意識した生活を送っています。ほかにも、血の巡りをコントロールしている自律神経を乱さないように室温を調整するなどの対策をしています」

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 また、身体の内側からのケアも欠かせない。

「日頃から、血行促進に加えて“肌の新陳代謝を保つ”ことも意識しています。肌が乾燥するのは、水分と油分を保持するバリア機能が低下するからで、それを維持するためには肌の代謝を落とさないことがカギなんです。そのためには、タンパク質・ビタミン類・鉄など、肌のターンオーバーを促進する栄養素をとることが大切。

 乾燥が気になるときは、いつもより意識して主菜でしっかりタンパク質をとって、ビタミンや鉄分は間食で補うことが多いです。肌の健康維持にも役立つビタミンEが豊富なナッツ類や、鉄分豊富なドライフルーツがおすすめですよ」

 ほかにも先生が実践している温活アイデアを下記にて紹介。これで冬の冷えと乾燥対策はばっちり!

今すぐやって!血流&代謝アップ温活アイデア5選

頭寒足熱の服装で上半身は着こまず「下半身」を温める

 人間の身体は頭に熱が行きやすく、下半身は冷えやすいという特徴が。下半身を重点的に温めて血を巡らせることが大切。外出時にはパンツやスカートの下にタイツやレギンスを1枚プラス。腹巻きレッグウォーマー、5本指靴下の使用もおすすめ。家にいるときも下半身を重点的に温めよう。

室内と外気の温度差は「7℃以内」に保ち「自律神経の乱れ」をなくす

 室内と外気の温度差が7℃以上になると、自律神経が乱れやすくなるため、気温差が7℃以内になるように暖房を調整することで、自律神経が乱れにくくなり血流改善につながる。エアコンなどの暖房は、外気温を確認しながら、高く設定しすぎないように注意。乾燥対策に加湿器なども導入して。

血流改善!「ルイボスティー」に「シナモンとしょうが」をプラス

 Tie2を活性化させる成分が含まれるルイボスティーとシナモンに、体温を上げるしょうがを加えたお茶を習慣に。シナモンパウダーを2~3振り、しょうがは皮ごと5gをすりおろすか、チューブを2~3cm。シナモンの代わりにヒハツパウダーでもOK。

イラスト/konpal

「パックしながらの塩風呂」で「温め・保湿」にWアプローチ

 天然塩を一つかみ加えた40~41℃のお風呂に10分つかると、塩のミネラル分が身体を芯から温め、皮膚表面にできる塩の被膜で保温効果も。最後の3分間でシートパックをすれば保湿も同時にできる。塩が使えないお風呂には、毛細血管を開かせる効果のある炭酸系の入浴剤を。

白湯はそのまま飲むと冷える「天然塩」のちょい足しでポカポカに

 白湯はそのまま飲むと体内で冷たくなれば「水」になるだけで、かえって冷えにつながると石原先生。ミネラル分を豊富に含む天然塩には温め効果があり、これを一つまみ、うっすら塩味がつく程度加えると身体の芯からポカポカになる一杯に。精製塩ではなくミネラル豊富な天然塩を使用して。

石原新菜先生●医師、イシハラクリニック副院長。主に漢方医学、自然療法、食事療法により種々の病気の治療にあたる。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 冷えと乾燥の話』(日本文芸社)など。

教えてくれたのは……石原新菜先生●医師、イシハラクリニック副院長。主に漢方医学、自然療法、食事療法により種々の病気の治療にあたる。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 冷えと乾燥の話』(日本文芸社)など。

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取材・文/伊藤淳子