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 歩く速度が遅くなったと感じたり、段差につまずいたりしたとき、体力の衰えを感じる人も多いのでは。しかし、「老化現象だからしかたがない」と放置してはいけない。  その背後には脳の病気が隠れている可能性も!?

 脳の専門医・篠浦伸禎(のぶさだ)先生が、脳機能を回復させるスーパーフードをご紹介!

脳に障害が起きて動作異常や歩行障害に

「歩く速度や動作が遅くなると、年齢や関節の病気を疑いがちですが、そうではなく脳の病気が隠れていることもあります」と、脳神経外科医の篠浦伸禎先生は警告する。

脳の中で運動機能を司(つかさど)っているのは、前頭葉と小脳です。ここに障害が起きると、思うように身体が動かなかったり、身体のバランスが悪くなったりします。姿勢が保てずふらふらしたり、手足が震えたりすることも。

 このような動作異常を起こす脳の病気は、『認知症』『脳梗塞』『パーキンソン病』などが考えられます。それぞれの病気は、特徴的な症状や予兆があるので、それを知っておくことが大事です」(篠浦先生、以下同)

認知症により歩く速度が遅くなることも

 脳卒中は、身体活動に影響が出る脳の病気の代表格で、日本人の約4人に1人が発症。70代以降で多くなる。脳の血管が詰まったり、破れたりして脳組織が損傷する病気で、高血圧や動脈硬化などの持病のある人は要注意。

 パーキンソン病は50代以降に多く、65歳以上では100人に約1人が罹患(りかん)する。大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少すると発症するが、その原因ははっきりしていない。

「脳の機能障害以外に、ホルモン異常が原因になる病気もあります。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足により動作緩慢などの全身症状が現れる。女性に多いのが特徴です。

 あと、忘れてはいけないのが認知症。脳内にアミロイドβ(ベータ)という異常タンパク質が蓄積され、神経細胞が傷つくことで脳が萎縮します。認知機能が低下することがよく知られていますが、発症すると歩く速度も遅くなります」

動作・歩行に影響を及ぼす脳の病気

免疫力を高める食事が脳機能を回復させる

 篠浦先生は、脳腫瘍の手術を長年行うなかで、がん治療の限界を感じることもあったという。

「がんの悪性度が高いと、手術をしても再発の可能性が高く、抗がん剤治療でも限界がありました。そのときに感じたのが、患者さん自身の免疫力の重要さでした。

 あるとき、脳卒中の患者さんの免疫力アップのために『にんにく油』をすすめたら、症状がよくなり、マヒなどの後遺症も現れなかったのです。それ以後、食事療法の大切さに気づき、にんにく油を積極的に食事に取り入れるよう推奨しています」

 にんにく油とは、にんにくをオリーブオイルに漬け込んだもの。疲労回復、抗酸化作用などの成分を持つにんにくと、高血圧や動脈硬化の予防効果のあるオリーブオイルを合わせることで、最強のスーパーフードになるという。

バランスと栄養価で病気知らずの身体に

「栄養バランスに優れ、栄養価が高い食べ物を『スーパーフード』と呼び、にんにく以外にも“奇跡のフルーツ”といわれるノニ、インド原産の植物モリンガ、緑茶などがあります。

 その効能は古くから知られていましたが、近年は研究が進み、科学的にも効果が認められています」

 にんにくは刻んだり、すりおろしたりすると強い香りの「アリシン」が生じる。アリシンを油と一緒に低温で加熱したり、漬け込んだりすると「アホエン」に変化。

 血栓予防や降圧作用、コレステロール値や中性脂肪値の改善、抗がん作用など、さまざまな効能があるとされる。

「アホエンは熱に弱く、80℃を超えると有用性がなくなるので注意が必要です。アホエンを摂取するには、『にんにく油』を非加熱で、ドレッシングなどとして使うといいでしょう」

 ほかにも、食事は玄米菜食を中心に、発酵食品、海産物、キノコ類、DHAやEPAを豊富に含む青魚類を多くとるようにする。

 反対に、身体に良くないといわれているのが、砂糖、小麦粉などのとりすぎ。また、狭いケージなどの環境で飼育された、質の悪い肉類や卵は避けたほうがよいという。

「また、食事療法とあわせて行いたいのが有酸素運動です。太極拳や速足でのウォーキングなどが最適。脈拍が1分間で110〜120を超えない範囲で、軽く汗ばむ程度が目安です。

 有酸素運動は脳の血流を促進して、認知症をはじめ、脳卒中など脳の病気の予防や改善に役立ちます」

 最近、歩く速度が遅くなったかもと感じたら、まずは「にんにく油」の摂取から始めてみては!

脳機能が向上するスーパーフード「にんにく油」

 脳卒中後の経過も良好!

脳機能が向上するスーパーフード「にんにく油」

[作り方]
(1)エキストラバージンオリーブオイル150mlとにんにく3片を用意する。
(2)にんにくをすりおろし、室温で2時間ほど置く。
(3)エキストラバージンオリーブオイルを容器に入れ、(2)を入れる。室温で5日間置く。
(4)茶こしでこして、にんにくを取り除く。

[使い方]
・野菜サラダにかける
・みそ汁に入れる
・納豆にかける
・冷ややっこにかける
・パンにつけて食べる
など

アホエンの効果で脳の血流が改善

 抗酸化・抗菌作用、血管を広げる作用などがあり、次のような実験データが報告されている。

(1)アルツハイマー型認知症の原因とされる脳内のアミロイドβの蓄積を抑える
(2)脳卒中発症後の神経障害(筋力低下、しびれ、痛みなど)の予防
(3)神経伝達物質や脳の血流を増加させ、認知機能を改善する

脳に悪影響を及ぼす食材とは

砂糖、小麦粉など

 砂糖は、血糖値の急激な上下動による肥満や生活習慣病を引き起こす。小麦粉も血糖値の急上昇を招く。牛乳などに含まれる乳糖の消化・吸収ができない「乳糖不耐症」の人は、乳製品を避けたほうがよい。

質の悪い肉

 狭い畜舎で飼育され、ストレスフルな環境で育った豚や牛、鶏は健康とはいえず、肉質も低下する。牧草地などで飼育された家畜の放牧肉は肉質がよく、味や風味も豊かになる。

質の悪い卵

 身動きのとれない狭いケージに1羽ずつ詰め込まれた鶏の卵は、平飼いに比べて味や栄養も劣りやすい。最近では、「平飼い」とパッケージに表示されていたりするので、質のよい卵を摂取したい。

教えてくれたのは……篠浦伸禎先生●東京大学医学部を卒業。米シンシナティ大学分子生物学部に留学後、都立駒込病院脳神経外科部長を務める。脳の覚醒下手術の第一人者として活躍する一方、食事療法や代替医療にも取り組み、根本治療を実践。現在は篠浦塾を設立し、西洋医学にこだわらない統合医療を推進している。


取材・文/佐久間真弓 イラスト/石山綾子