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 病気でかかるお金の心配は尽きないが、ファイナンシャル・プランナーの山田静江先生は、まずこうしたお金の心配は2つに分けて考えてほしいという。

医療費、介護費は公的補助を利用

『医療費の負担』と『収入減』、お金の心配は、この2つに分けて考えます。医療費が心配なら国の高額療養費、収入の補償は健康保険組合の傷病手当金という制度が助けになります」(山田先生、以下同)

「高額療養費制度」とは、1か月に支払った医療費の自己負担分が、年齢や所得に応じた自己負担限度額を超えると、その超えた分が払い戻される制度。

 例えば、70歳未満で年収約370万~770万円の場合、上限額は8万100円+(医療費-26万7000円)×1%。

 仮に医療費が100万円かかっても、窓口負担は3割で30万円だが、高額療養費が適用されると、自己負担額は、8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円。つまり8万~9万円で抑えられる。

 また過去12か月に高額療養費を受けた月が3回以上あると、4回目から自己負担限度額は、さらに引き下げられる「多数該当制度」もある。

 そのほか、同じ月に同一世帯で自己負担額が一定額を超えた場合、合算し、さらに、上限額を超えた分が戻ってくる「世帯合算制度」もある(70歳未満は2万1000円以上の自己負担のみ合算)。

「大手企業や若い人の多いIT企業の加入する健康保険組合では、国の高額療養費に独自の付加給付を設けて、自己負担限度額をさらに引き下げているところもあります」

 介護費についても、「高額介護サービス費」が利用できる。1か月に支払った介護サービスの自己負担合計が、所得に応じた自己負担限度額を超えたら、支払った介護費が一部戻ってくる。

 また、同じ世帯で1年間(8月から翌7月)に支払った医療費と介護費の合計が、上限額を超えたら払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」もある。

高額療養費制度とは

高額療養費の見直しが段階的に行われる

「支払いに上限があるならひとまず安心」と思いきや、国の医療費が膨れ上がる今、高額療養費や高額介護サービス費の見直しが図られている。高額療養費制度の見直しを巡る国会での紛糾も記憶に新しい。

「高額療養費は、2026年8月と2027年8月の2段階で引き上げられる方向です。まず、年収に応じて月額上限は7~38%の引き上げになります。年収約370万~770万円の層は、約8万円から約8万6000円に負担が増えるとされています。

 また2027年8月には、所得区分が現行の4区分から13区分に細分化されて、高所得者層の負担が増える見込みです。

 高額介護サービス費についても、すでに高所得者の上限額は引き上げられていますし、施設利用費の負担も増えています。今後、さらに自己負担割合の引き上げや、自己負担限度額と所得区分の見直しが続く可能性はあります

 来たる負担増に備えて、自分で安心を確保しておくことが大事、と山田先生は声を強める。

国民健康保険だと傷病手当金の支給なし

 病気になったときのもう一つの心配。「収入が減ったらどうするか」を解消する制度として、傷病手当金がある。

「病気やケガで連続して3日休んだときに、4日目以降から月収の約3分の2が健康保険から支払われます。加入する健康保険によっては上乗せ給付、会社によっては福利厚生として所得補償制度を設けているところもあります」

 注意点は、傷病手当金がもらえるのは、職場の健康保険に加入している人のみということ。国民健康保険加入の人はもらえない。

まず自分の加入する健康保険の制度を知って、いざ病気になったら、どれぐらい補償してもらえるのかを事前に調べておくことが大切です。

 また医療内容は自分で選べますから、入院したら大部屋でいいのか、個室がいいのかなど、そこまで考えたうえで、必要であれば、民間の保険の加入を検討しましょう。保障の手厚い大手企業の人や貯金がたくさんある人は不要かもしれませんが、自営業の人や蓄えが心もとない人は加入しておくと安心です」

 保険に入っている人は、病気になったら病気のことだけを考えられるが、そうでない人は、まずお金のことを考えるという。

治療に専念するためにも、保険に加入して、お金のリスクは減らしておいたほうがよいでしょう。特にがんのように継続的にお金がかかる病気は、保険の必要性が増すようです。私の周りで、がんになって、がん保険に入っていた人は半分ぐらい。

 保険に入っていなかった人は、口をそろえて『入っておけばよかった』と言います。がんになってつらいときに、お金が出ていくのと入ってくるのとでは、心持ちが違いますから。最近は、がんになっても加入できる保険商品も人気です」

運動や食事管理は基本となる「備え」

 とはいえ、病気リスクに備えるためには、お金だけでなく、健康維持の努力も必須となる。

「毎日運動したり、食事に気をつけたりすることは、病気を防ぎ、お金のリスクを減らすことにつながります。日々の健康維持は、お金を貯める、保険に入るのと同じぐらいの価値があるのではないでしょうか。そのうえで、貯金や保険など、病気になったときの備えをしておきましょう」

 これからの医療費の負担増を念頭に、できることを考えておきたい。

医療+介護で必要な貯金はいくら?

 将来かかる医療費と介護費のために、500万円は準備しておきたい。保険は、貯蓄がない人ほど入っておいたほうがよいが、一定の貯金があれば入らなくてもOK。「500万円貯まるまで保険に入る」という手もある。

認知症にどう備える?

 認知症が心配な人は、「認知症保険」の加入も。認知症と診断されたり、所定の介護状態になったりしたら、一時金や年金で保険金を受け取れる。軽度認知障害(MCI)の段階で、一時金が受け取れる商品もある。

 認知症に備えて財産を管理する方法は、「家族信託」「成年後見制度」「代理人制度」などがある。家族信託とは、自分の資産を家族に託して管理や処分を任せる仕組み。

 後見制度は家庭裁判所が後見人を決める法廷後見と、自分の意思で決める任意後見があるが、家庭裁判所への報告義務など制約が多い。金融機関からお金を引き出すだけなら、代理人制度を利用すれば、指定された家族が自由にお金を動かせる。

高額介護サービス費とは
 1か月の介護保険サービスの利用料の合計が、自己負担限度額を超えたら、その超えた分が払い戻される制度。医療と介護の合計額が限度額を超えたら、払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」も。

傷病手当金とは
 病気やケガで3日連続して休むと、4日目以降の、休んだ日に対して、給料(日額)の約3分の2が健康保険から支払われる。給料が支払われている場合は調整される。健康保険の付加給付や会社の福利厚生で上乗せされるケースも。

山田静江先生●ファイナンシャル・プランナー。終活アドバイザー協会会員。早稲田大学商学部卒業後、東海銀行(現・三菱UFJ銀行)、会計事務所などを経て2001年に独立。セミナー講師、執筆・監修、個人面談などを行う。近年は人生後半期の諸問題、特に医療・介護と高齢者施設、セカンドライフのマネープラン、相続に力を入れている。

教えてくれたのは……山田静江先生●ファイナンシャル・プランナー。終活アドバイザー協会会員。早稲田大学商学部卒業後、東海銀行(現・三菱UFJ銀行)、会計事務所などを経て2001年に独立。セミナー講師、執筆・監修、個人面談などを行う。近年は人生後半期の諸問題、特に医療・介護と高齢者施設、セカンドライフのマネープラン、相続に力を入れている。


取材・文/池田純子