※写真はイメージです

更年期障害の症状が重い人と軽い人では、実は食事内容に違いがあります。症状の重い人の食事を見ると、朝食を抜いたり、肉や魚などに含まれるタンパク質をきちんととらずに、炭水化物や糖分を過剰に摂取していたりします。

 一方、症状の軽い人は、3食を規則正しく食べて、タンパク質はもちろん、ビタミンやミネラルなど、バランスのとれた食事ができています」

 このように説明するのは、栄養療法に詳しい、医師の梶尚志(たかし)先生。

栄養不足が症状の悪化の要因になる

 ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)や不眠、集中力の低下などに悩まされる更年期障害。閉経前後の、エストロゲンなどの女性ホルモンの減少が原因となることが知られているが、そこにどのように「食事」が関係してくるのだろうか。

「体内には、女性ホルモン以外にも100種類以上のホルモンが分泌されており、それらがバランスよく働くことで健康を維持しています。これらのホルモンは、タンパク質と脂質から合成されます。

 また、合成を助けるのがビタミンB群、ビタミンC、鉄分、ビタミンE、ビタミンDなど。ホルモンバランスは食事によって保たれているのです」(梶先生、以下同)

 年をとってのホルモン分泌の減少は避けられないが、必要な栄養がきちんと摂取できていれば、最低限のバランスを保つことはできる。そのため、食事の仕方によって、更年期障害の症状の程度に差が表れるようだ。

肥満を避けるため脂質を控えるのはNG

 梶先生によると、更年期障害の改善において、最も重要なのがタンパク質の摂取だという。

 更年期になると筋肉量と骨密度が落ち、骨粗鬆(こつそしょう)症になりやすく、体力も低下する。タンパク質は、筋肉や骨の形成に欠かせない栄養素で、そのほか皮膚、髪などの材料にもなるので、肌のハリや髪のツヤといった、美容面にも影響を与える。

 また、気分を安定させるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の材料にもなるので、きちんと摂取することで、イライラ、憂うつ、やる気低下の改善に役立つとのこと。

タンパク質は毎食必ずとりたい栄養です。脂質の摂取も大事。女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールが原料です。肥満を避けたいからといって脂質の摂取を控える人がいますが、それだと女性ホルモンの合成が低下して更年期症状が強く出る可能性があります」

 さらにコレステロールは、細胞膜の材料になるなど、体調維持に欠かせない栄養素。肉などの動物性脂質ではなく、魚の脂や大豆、ゴマなどの植物性脂質から摂取するのがおすすめだ。

タンパク質とコレステロールを効率よく代謝するために、ビタミンとミネラルもとりたい栄養素。つまり、バランスよくいろんな食材を食べることが、更年期を乗り越えるカギになるのです

朝食は3食の中でもしっかりと食べる

 栄養素をまんべんなくとることが大事だが、とりすぎに注意したい栄養素もあるという。それが糖質だ。

「エストロゲンには、血糖値を下げるインスリンの働きを助ける役割があります。エストロゲンの減少は、インスリンの効き目を落とすので、余ったエネルギー(糖質)が脂肪として蓄えられ、肥満の原因になります。

 さらに、糖質の過剰摂取から血糖値の乱高下が続くと、アドレナリンなどのホルモン分泌が過剰になり、イライラや不安感、不眠などを招いてしまいます」

 もう一つ、摂取に注意したいのがトランス脂肪酸。揚げ物やスナック菓子などに多く含まれている、不飽和脂肪酸である。

「身体の中には約37兆個の細胞がありますが、それらは脂質の膜で構成されています。エストロゲンは、この膜にある受容体にキャッチされるしくみになっていますが、トランス脂肪酸をとりすぎていると、膜がかたくなってエストロゲンをキャッチできなくなり、さらなるエストロゲンの減少を招いてしまいます」

 食事をするうえで、特に注意したいのが朝食だ。朝食は、一日の活動の原動力となる食事。このエネルギー補給が不十分だと、さまざまな不調につながってしまう。

「朝食をしっかりとって、昼は腹七分、夜は軽めが、理想の食事バランスです。更年期前後の年齢は、子育てなどが一段落して、これからさらに人生を楽しむ時期。更年期を軽く乗り越えて、女性としてさらに輝いてほしいと思います」

更年期に現れる主な症状

顔のほてり・発汗

 エストロゲンの減少により、自律神経系のホルモンや神経伝達物質のノルアドレナリンが分泌され、急に顔がほてったり、のぼせたりする。突然、身体が熱くなり、汗が止まらなくなることも。

動悸・息切れ

 更年期障害の代表的な症状で、リラックスしているときに心臓が急にドキドキしたり、階段を少し上っただけで息切れしたりする。数分から30分程度で収まるが、一日に何度も起こることもある。

不眠・不安感

 エストロゲンの減少とともに、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンも減少し、気分の落ち込みやイライラが現れる。睡眠に関わるホルモン・メラトニンも減少するため、不眠に悩まされることも。

意欲の低下・楽しみの消失

 神経伝達物質・ドーパミンの働きが悪くなり、何に対してもやる気が起きず、意欲が低下してしまう。これまで楽しかった趣味なども楽しく感じられなくなり、外出や趣味の活動も減ったりする。

更年期の症状を軽減する主な栄養素

大豆イソフラボン

 大豆に含まれるポリフェノールの一種。エストロゲンと似た働きをするので、摂取するとホットフラッシュやうつ症状を軽減できる。一日の摂取目安量は、納豆1パック、豆腐1/2丁(150g)、みそ汁2杯。体内に蓄積されないので、毎日食べるとよい。

タンパク質

 身体と心の土台になる栄養素。体力、筋力が低下してくる更年期は意識的にとりたい。不足すると不安感や意欲低下などもみられる。そのほか、体温調整がうまくいかなくなって、冷え性が悪化することも。肌や髪、爪といったパーツの見た目にも影響がある。

脂質

 コレステロール(脂質)はホルモンの材料になり、不足するとホルモンバランスが崩れて更年期の症状が悪化する。青魚のEPAやDHA、えごま油やアマニ油などに含まれるオメガ3脂肪酸は、積極的に摂取したい。

ビタミンB群

 神経伝達物質のセロトニンやドーパミンの材料となる栄養素で、不足するとイライラや不安感、不眠、意欲低下などの不調が現れる。特にビタミンB6・B3(ナイアシン)は重要。

ミネラル

 カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛は、自律神経や心拍、代謝、骨の健康を維持するのに重要な働きをする。鉄と亜鉛はタンパク質と一緒にとると吸収率が上がる。

理想の朝食と食事のポイント

食事のポイント
・朝食はしっかりと、栄養バランスを意識して
・毎食、タンパク質が豊富な肉と魚などを食べる
・大豆製品を積極的にとる
・完全栄養食の卵は、栄養不足のときの補助食品となる
・カルシウムとタンパク質、脂質を含むチーズもおすすめ

 朝食抜きで昼食を食べると、血糖値が急上昇して肥満を招く。また、血糖値の乱高下は自律神経を乱し、ホットフラッシュやイライラ、不安感などの症状を悪化させる。

 朝食は必ず食べるのが鉄則。3食ともタンパク質を取り入れる。糖質を含む炭水化物やデザートは食べすぎに注意。

梶尚志先生●梶の木内科医院院長。総合内科専門医、腎臓専門医。家庭医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「身体の不調」に栄養学的なアプローチから治療を行う。メディア出演や講演活動など幅広く活躍。

教えてくれたのは……梶 尚志先生●梶の木内科医院院長。総合内科専門医、腎臓専門医。家庭医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「身体の不調」に栄養学的なアプローチから治療を行う。メディア出演や講演活動など幅広く活躍。著書に、『更年期の不調の原因は栄養不足が9割』(あさ出版)など。


取材・文/佐久間真弓