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「早起き、ダイエット、節約。日々習慣にしたいのに、意志が弱いからと諦めている人も多いのでは? でも、実は意志の問題ではないのです」

 そう話すのは、明治大学教授で言語学や脳科学に詳しい堀田秀吾先生。

「もともと人間の脳や心は、変化を嫌う仕組みになっていて、新しいことを始めたり、継続したりすることが苦手。ですから行動科学や脳科学的にみると、習慣化できないのは当然。でもコツさえつかめば容易になります」(堀田先生、以下同)

何も考えずに身体を動かすのが一歩

 堀田先生が提唱している3つがコチラ。

「まずは、動く。脳のやる気を生み出す側坐核(そくざかく)という部分は、行動をしないと働きません。また脳と身体の関係は、脳から身体に指令が下ると思われがちですが、脳科学や心理学では身体が動くと意識も動き出すことがわかっています。

 つまり身体が先でメンタルは後。身体を無理やりでも動かせば、やる気は徐々に生まれる。何はともあれ、まずは行動することが大切です」

 2つ目は、新たに習慣化したいことを「既存の習慣にくっつける」

「朝にコーヒーを飲む習慣がある人は、飲んでいる間に英単語を覚える、家計簿をつけるなど、新しい行動をくっつけて行ってみてください。ハビット・スタッキングと呼ばれるこのテクニックを実践することで、精神的な負担をあまり感じず、楽に習慣化しやすくなります」

 3つ目は、「環境の利用」

「人間は意思決定をする際、環境に大きく左右されます。例えば、禁酒中なのに冷蔵庫にお酒があったり、節約中なのにウインドーショッピングをしたりすれば、意志が揺らぎやすくなりますよね。こうした環境を避け、逆に習慣を継続しやすくなる環境を作ることが大事」

 運動を習慣にしたいなら、前日のうちにトレーニングウエアやシューズを目につく場所に出しておく。節約したいなら、ECサイトのアプリをスマホから削除したり、クレジットカード情報を保存しないなど、“やりたい行動はすぐできる状態に”“やめたい行動は手間がかかる状態に”しておく。そうすることで、意志の力に頼らずに行動をコントロールしやすくなるそうだ。

目標は“小さく”し“見える化”する

「習慣化とは、つまり継続する気力と体力。必要なのは脳と身体の健康を保つこと。それには適度な運動と質の良い睡眠が大切です」

 これらが不十分だと脳に酸素を届ける血流が滞り、うまく働かなくなるため、朝に軽めの有酸素運動や筋トレ、7時間以上の睡眠と20~30分間の昼寝を心がけるといいという。また、睡眠や食事の時間を決めて規則正しい生活を送ることで、睡眠の質を上げたり疲労を抑えたりすることにもつながる。

おすすめは、起床時の背伸びやキッチン作業中の足踏みなど。特に背伸びは血流アップや自律神経の切り替えに有効なので取り入れてみてください

 運動と睡眠は、幸福度を上げてメンタルを維持するためにも欠かせない。

「睡眠不足は不安感を強めるという研究結果も出ているので良質な睡眠は必須。さらに身体が元気に動いていると脳は“自分はいま元気なんだ”と判断し、一層そうなるようにドーパミンやアドレナリンなどの元気になる脳内ホルモンを分泌。運動するとポジティブになるのはそのような理由です」

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 不安やイライラを感じたときは、まずは深呼吸。気持ちを落ちつかせてくれる手軽な日常アクションだ。

 つい面倒になりがちな片づけは、小さい目標を立て、時間を決めて実行すること。

「脳は情報量が多いと負担を感じ、やる気をなくしてしまう。散らかっている部屋を全部片づけようとしたら、大変そうだし無理、と脳が判断し諦めてしまうんです。つまり脳が感じる負荷が小さいほどやる気が出やすくなる。机の上の片づけを3分間だけ行うなど、目標は小さくして取り組んでみて。それができれば成功体験になり、次のモチベーションにもつながります」

 難易度の高い貯金や節約の習慣化には目標や成果を“見える化”することがポイント。

脳はとにかく忘れっぽい。リマインドがなければ目的を忘れて継続するのが困難になります。なので貯金残高を見える場所に貼っておくなど見える化をし、“あと〇円しか今月は使えないから節約しよう”など視覚的な刺激を頻繁に与えてみましょう」

 堀田先生によれば、習慣の定着は約66日かかるそう。

「脳は、筋肉と一緒で日々継続すれば鍛えることができます。習慣化のコツをつかみ、毎日の生活に取り入れてみて」

 下の項目は堀田先生がすすめる身体にいい、ちょっとした習慣だ。脳をうまくダマしながら、健康効果を向上させるヒントとしてこちらも参考にしてほしい。

気づけば続く「すごい習慣」

【食べすぎ防止】おでこをトントンする

 おでこを30秒間タッピングするだけで、食欲が半分から3分の1程度まで減少したという研究がある。これは、おでこの後ろに位置する衝動抑制を担う脳の一部を意識的に活性化させることで、暴飲暴食の抑制になるという理屈なのだそう。

 ただし、空腹を我慢すると幸せホルモンが減少するため、メンタルには悪影響。食べすぎを防ぎたいときに使おう。

【食べすぎ防止】おでこをトントンする

【過食対策/ダイエット】脳内食事をする

「お腹がすいていないのに食事をとってしまう」「食後なのにお菓子をたくさん食べてしまう」など、過食に悩んでいる人は、脳内で食べることを想像するのがおすすめ。

 さまざまな研究で、想像するだけである程度、食欲を抑えられることが明らかにされている。食べる前に、食べた後の自分の姿を想像してみると、より効果がアップするはず。

【過食対策/ダイエット】脳内食事をする

【病気リスク減】よく笑う

「笑う頻度と死亡や病気のリスク」を分析した研究で、ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて死亡率が2倍高く、さらに脳卒中など心臓や血管の病気を発症する確率も高まることがわかっている。

 笑うとストレスが改善し、脳の健康に良い影響がもたらされるので、面白いコンテンツなどを積極的に取り入れて笑う習慣をつけよう。

【病気リスク減】よく笑う

【疲労回復/ストレス軽減】手浴する

 脳血管障害の患者を対象にした研究によると、指先から手首までを38度の温水で10〜15分温めると痛みが緩和し、病気の回復に対するやる気が向上したことが報告されている。

 手の血管には交感神経が集中していて、手を温めることでストレスの緩和やリラックス効果が期待できる。疲れやストレスを感じたら手浴を試してみよう。

【疲労回復/ストレス軽減】手浴する

【免疫力アップ】怒らない

 研究によれば、一度怒るとその後6時間以上も免疫力が下がり続けることがわかっている。健康のためには、できるだけ怒らないことが大切。

 逆に、他者へのいたわりや慈しみの感情を抱くと免疫力が高まり、思いやりを行動に移せば、さらに高まる可能性があると報告されている。他者へ思いやりのある行動をすることで、自分の健康にも良い効果があることを覚えておこう。

【免疫力アップ】怒らない

【メンタル向上】感謝日記

 1日の終わりに感謝できることを書き出す「感謝日記」をつけるだけで、幸福度が25パーセントもアップすることが、明らかになっている。人によってはポジティブな気分になったり、睡眠の質が改善したりしたケースも。

 1日の終わりに「天気がよかった」「ランチがおいしかった」など5つほど感謝できることを思い出して書き出すだけでOK!

【メンタル向上】感謝日記
堀田秀吾先生●明治大学教授。専門は言語学・法言語学で、ことばと心理、コミュニケーションの関係を研究している。裁判における言語の使われ方や、日常の会話に潜む思考のクセなどをわかりやすく解説し、テレビや雑誌などメディア出演も多数。

教えてくれたのは……堀田秀吾先生●明治大学教授。専門は言語学・法言語学で、ことばと心理、コミュニケーションの関係を研究している。裁判における言語の使われ方や、日常の会話に潜む思考のクセなどをわかりやすく解説し、テレビや雑誌などメディア出演も多数。著書に『科学的に証明された「すごい習慣」大百科』(SBクリエイティブ)など多数。

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イラスト/若田紗希 取材・文/井上真規子