※写真はイメージです

「『人は血管とともに老いる』という言葉があるのですが、血管の老化は全身の老化や病気の根源。でも肌や髪、身体の衰えは目で確認できるのに対し、血管は外からは見えず、お手入れもできないのがやっかいなんです」

 そう教えてくれたのは、血管のエキスパートである医師の高橋亮先生だ。

「石灰化」した血管はもう元には戻せない

 加齢や、よくない生活習慣で血管が硬くなる。その状態が長く続き、さらに悪化すると動脈硬化に至り、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性が。

「しかし、まだ動脈硬化の段階ならケアによってしなやかさを取り戻すことは可能なんです。問題なのが、そこからさらに進んで血管が石灰化してしまうこと。そうなると残念ながら元の状態に戻すのはほぼ不可能。

 だからこそ早い段階でのケアが必要で、そのカギを握るのが身体の中でつくられる一酸化窒素(NO・エヌオー)という物質です」(高橋先生、以下同)

 この物質が血管の内壁から分泌されると血管の壁がしなやかになると同時に血管が広がり、血流がよくなる。

「NOが分泌される→血管の内壁がゆるむ→血管が広がって血流がよくなる」というのが繰り返されると、血管はますますしなやかさを取り戻し、動脈硬化を防ぐことができる。

ストレッチで血流がアップするとNOの量も増える!

年代的にも季節的にも血管への負担が大!

 特にミドル世代は、女性ホルモンの影響で血管が硬くなりやすくなるため、より注意が必要だ。

「女性ホルモンのエストロゲンには、NOの分泌を促進し血管をしなやかに保つ働きがあります。つまり、エストロゲンの分泌が激減する更年期は『血管の曲がり角』。ここでNOをしっかり分泌させる生活習慣を身につけることで、将来の老いや病気のリスクを下げられると考えます」

 春先という季節も血管に負担をかける。

昼と夜の気温差が大きく、うっかり薄着で外出してしまって帰りに寒さで震えてしまったり、冬ほど寒くないからと脱衣所の暖房をつけないで入浴しようとしたり。寒さによって血管がギュッと収縮することで、血管に強い負荷がかかるのです

 血管は自律神経との関わりも大きく、新生活や気候もリスクになる。

新生活によって環境が変わることでストレスになり、過緊張が続くと、血管を収縮させて血管への負担が大きくなります。また、春が終わって梅雨に入ると、低気圧によって自律神経が副交感神経に傾き、だるさや眠気といった症状が起きやすい。

 でも仕事など、どうしても日中は活動せざるを得ないため、無理に身体を活動モードにしようとします。すると、血圧が上がりやすくなってしまうという悪循環も。ここから夏ぐらいまでは、血管リスクが高い季節といえるでしょう」

簡単「ながらストレッチ」でNOを分泌させよう

 ミドル・シニア世代の血管をいい状態に保つには「ちょっとした運動習慣をつけること」と高橋先生は即答。

実は血管をやわらかくする薬というのは存在しません。血管からNOを分泌させるパワーを上げることが何より効果的なんです。それには運動によって血流を増やし、血管を拡張させること。

 といっても、毎日忙しい中まとまった運動の時間をとるのは大変ですし、運動ギライの方もいるでしょう。そこで提案したいのが、テレビやスマホを見ながらでもできる『ながらストレッチ』。

 わざわざヨガマットを敷いて、なんてしなくてOK。イスに座ったまま、隙間時間に気軽にできます」

 むしろランニングなどのハードな運動よりも、ストレッチのような軽い動きのほうがNOはしっかり分泌される。リラックスした状態で筋肉を伸ばすと、副交感神経が優位になり血流がよくなるのだ。

 ズボラさんでもNOを効率的に生み出すポイントは、筋肉の6〜7割が集まる下半身の筋肉を伸ばすこと。ストレッチされた部分の血管から分泌されたNOは、血流に乗って全身を駆け巡り、全身の血管に恩恵をもたらすという。

「血管の若さとしなやかさを保つには、継続することが大事。私自身、1日5分ストレッチを続け、1年で悪玉コレステロール値が正常に戻り、体重も15kg落とせました。NOを増やすと毛細血管も元気になり、肌や頭皮への血流もよくなるため、美肌や薄毛予防も期待できます」

 今回は、座ったままでできる3つのストレッチを紹介するので、ぜひ試してみて。

座ったままでもできる「ながらストレッチ」

 身体の中でも大きいお尻と太ももの筋肉をほぐす習慣をつけよう。下半身の大きな筋肉を動かすことで、血液循環もよくなり、NOも効率よく分泌されるので一石二鳥!

ソファでお尻伸ばし

 映画の途中で大臀筋をストレッチ

ソファでお尻伸ばし

(1)ソファに浅めに座り背もたれに背中を預ける

 ソファに浅く腰かけ、完全に体重を背もたれに預けるように背中をつけてリラックス。イスだと動いてしまって危ないので、ソファで行うのがおすすめ。

(2)片方のひざを抱えお尻の伸びを感じる

 片方のひざを曲げて腕で抱え上げる。抱え上げた脚側のお尻が気持ちよく伸びているのを感じて。反対の脚も同様に行う。

イスで前もも伸ばし

 ランチ後の食休みに大腿四頭筋をストレッチ

イスで前もも伸ばし

(1)イスに座り片方の脚を後ろに伸ばす

 座面の半分だけに浅く座り、落ちたほうの脚を後ろにできるだけ伸ばす。

(2)背中を預けて前ももをストレッチ

 背もたれを両手でしっかりつかみ、背中を寄りかからせる。前ももが伸びているのを感じて。反対の脚も同様に行う。

イスで裏もも伸ばし

 SNSをチェックしながらハムストリングをストレッチ

イスで裏もも伸ばし

(1)片脚がはみ出すようにイスに座る

 片脚が座面からブラブラはみ出すような姿勢で、イスに座る。靴下をはいていると滑るため、靴下ははかないか、かかとだけ脱ぐと◎。

(2)ひざを伸ばして前傾になる

 つま先を立て、上半身をゆっくり前に倒していく。裏ももが伸びているのを感じて。ひざが曲がらないように保つのがポイント。反対の脚も同様に。

※キャスターなどのない安定感のあるイスやソファで行い、痛みや違和感があるときは直ちに中止し、無理をしないこと。腰痛などで整形外科に通院中の場合は、担当医に相談してから実践してください。

高橋亮先生の近著『血管の名医が薬よりも頼りにしている狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク出版)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

教えてくれたのは……高橋 亮先生●医師・医学博士。血管、心臓における幅広い知識と技術を持ち、内科・外科、基礎研究・臨床と横断的に活躍。近著に『血管の名医が薬よりも頼りにしている 狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク出版)。


取材・文/遊佐信子 イラスト/平松 慶(『血管の名医が薬よりも頼りにしている 狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』より流用)