肝臓のイメージ

50代に入って気をつけたい食習慣のひとつに、「飲酒」がある。特に女性は、“特有のリスク”が一気に高まるという。肝臓の健康を保ち、病気を寄せつけないお酒の飲み方、つまみの選び方を肝臓専門医の浅部伸一先生が解説。

閉経後の飲み方に注意

女性は閉経後、お酒の飲み方に気をつけてください。過度な飲酒が、病気のリスクを高めることになるからです

 こう注意喚起するのは、肝臓専門医の浅部伸一先生。お酒好きの女性には心配な話だが、でもなぜ閉経後なのか!?

「女性も男性も、お酒を飲みすぎると脂肪肝の危険を伴います。脂肪肝とは中性脂肪が肝臓に過剰にたまった状態を指し、さまざまな病気を引き起こす要因になります。肝硬変や肝がんに進行したり、糖尿病や肥満、動脈硬化などの生活習慣病につながったりするのです。

 ただ男性が若いうちから脂肪肝になりやすいのに対し、女性は女性ホルモンに守られている期間は脂肪肝になりにくい。それが閉経を境に終了してしまうため、過度の飲酒により脂肪肝を招き、各種病気のリスクが一気に高くなるわけです」(浅部先生、以下同)

 そのほか過度の飲酒により、骨粗しょう症や乳がんのリスクが高まることもわかっているそう。そして、さらに心配なのが、近年女性も増加傾向にあるアルコール依存症だ。

女性の社会進出から飲酒が習慣となり、ストレスなどが原因で軽度のアルコール依存症に陥る女性が増えています。また主婦の場合、一人で過ごす日中は自由にお酒を飲めて、誰からも制止されないため、キッチンドリンカーとなるケースもあります

 やっかいなのは、アルコール依存症予備群でありながら、ほとんどの人は自覚していないこと。故に、大多数は「自分はまだ大丈夫」と思い込んでいる。

『お酒を飲まないと気分が落ちる』『お酒を飲めば元気になる』という状態だったら、初期段階の危険な兆候です。アルコール依存症は脳の病気でメンタルに影響を及ぼすため、お酒を飲むことで気分の浮き沈みが起きやすくなるのです。心当たりがある人は、一度お酒の飲み方を見直したほうがいいでしょう

 過度な飲酒はやめて、健康を維持しながら上手にお酒と付き合う方法を具体的に知りたいところ。まずは基本のお酒選びから。

喉ごし派は微アルやノンアルで

「お酒には大きく『醸造酒』と『蒸留酒』があります。醸造酒はビール、日本酒、ワインなど、蒸留酒は焼酎、ウイスキー、ウオッカなどです。

 醸造酒には糖質が含まれるのに対し、蒸留酒は蒸留の工程で不純物が取り除かれるため、糖質をほとんど含みません。ですから脂肪肝対策となり、ダイエットにも適しているといえます。もちろん、蒸留酒であっても飲みすぎたら意味はありません

浅部伸一先生

 次は飲み方。「最初の一杯はビール」が定番だが、浅部先生は低アルコールの「微アル」や「ノンアル」からのスタートを推奨する。

「最初のビールは、すぐ飲み干してしまう人も多い。一気に飲むと体内のアルコール分解が追いつく前に酔いが進み、結果的に飲みすぎにつながってしまいます。お酒や飲み会を長く楽しむには、酔いの立ち上がりをゆっくりとしたほうがよく、そのための微アル、ノンアル活用です。最初のビールをやめられない場合は、途中でノンアルを挟めばいい。

 ちなみに最初の一杯にシュワシュワッとした爽快感の“のどごし”を求める人は多いですが、これは炭酸がもたらすもの。それなら、微アルでもノンアルでも大差はないんですよね

 ビールから始まり、ワイン、日本酒、焼酎など、種類が異なる複数のお酒を続けて味わう飲み方、いわゆる“ちゃんぽん”。悪酔いしやすいといわれるが、実際はどうなのか。

ちゃんぽんの一番の問題は、お酒の摂取量が大幅に増えてしまうことです。お酒の種類が変わるとそこで味覚がリセットされ、一から再び杯を重ねます。また、アルコール度数の低いものから高いものに変わると酔いも進み、ブレーキが利かなくなります。結果的にお酒を飲む量がどんどん増えていき、悪酔い、二日酔いを招くわけです

 飲みすぎを防ぐには前もってその日、飲む量を決めておけばいいという。

今日は日本酒1合までとかワイン4分の1までとか、自分でルールを設定します。お酒を飲むと理性が緩むため、もう一杯、あともう一杯となりがちです。たまには量を多く飲む日があってもいいですが、習慣化すると危険。ルールを決めて飲酒するようにしましょう

 最後は、お酒のつまみ選び。飲みすぎ、二日酔いを避けられる意外な一品として“唐揚げ”を挙げる。

唐揚げに代表される油を使った食べ物は消化に時間がかかり、胃の中に長く残ります。そのおかげでアルコールの吸収が遅れ、飲みすぎや二日酔い予防になります。胃が空っぽの状態だと一気にアルコールが体内に吸収され、早く酔っ払ってしまうことに。飲む前に油を使ったつまみを食べておく、『オイルファースト』ですね

 だが油を使った料理は、カロリーが気になる。 

その場合、白身魚のカルパッチョや、ドレッシングに油を使ったサラダなどを選べばカロリーを抑えられます。脂質、タンパク質を含むチーズもいい。高タンパクかつ脂質たっぷりのゆで卵もおすすめです

 対して、絶対NGというのが、“締めのラーメン”など飲んだあとの炭水化物。

飲み過ぎリスクと健康的な飲み方は

飲食後のラーメンは血糖値を上げ、カロリーも過多なので、肥満の原因になります。脂質や塩分も多いので健康にもよくない。締めの一品を食べるなら、お麩入りのみそ汁などが好ましいでしょう

 お酒は付き合い方次第。上手に飲んで、心身の健康を保ちたいものだ。

女性は注意!お酒の飲みすぎリスク

乳がん

女性ホルモンのひとつ、エストロゲンに影響を与えて、アルコールの摂取量が増えるほど、乳がんのリスクも高まる。エストロゲンが減少する閉経後は特に、飲みすぎに気をつけなければならない。

脂肪肝

男性は若いうちから、女性は閉経後から食べすぎ飲みすぎが原因になって、脂肪肝になりやすい。アルコールが脂肪の代謝・消費を抑えるので、お酒の飲みすぎが脂肪肝を入り口に、さまざまな病気を呼び込むリスクを高める

骨粗しょう症

閉経後は、女性ホルモン減少の影響で骨粗しょう症のリスクを高めるが、過度な飲酒はそれに拍車をかける。骨の形成を抑制し、骨密度を低下させるので、ちょっとした転倒などでも骨折の危険を伴う。

お酒別 おすすめの健康的な飲み方

ビール

低アルコールの「微アル」や「ノンアル」を有効活用する。最初の一杯や途中の一杯に挟むことで飲みすぎ、二日酔いを軽減できる。

ワイン

醸造酒のひとつ。赤・白は好みで。少し贅沢して、価格が高めのものを選べば、ゆっくり味わって飲めるはず。

日本酒

醸造酒のひとつ。香りの強い吟醸酒などをゆっくり味わうとよい。熱燗にすれば、徐々に冷ましながら飲めるのでおすすめ。

焼酎

蒸留酒のひとつ。水やお湯で割って飲むとよい。缶チューハイの、アルコール強めのストロング缶は飲みすぎに要注意。

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取材・文/百瀬康司

浅部伸一先生 医学博士、消化器病専門医、肝臓専門医。東京大学医学部卒業後、病院勤務などを経て、製薬会社に転じ、新薬開発などに携わる。現在は、アシュラスメディカル株式会社所属。肝臓やお酒に関する記事執筆、講演、メディアなどで幅広く活躍中。著書多数。