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 年金だけで暮らしていけるのか不安を抱える人は少なくない。長生きが当たり前の時代、老後のお金を守るカギとなるのは、定年後も収入を得る力だ。無理なく稼ぎ続ける方法をキャリア形成の専門家に聞いた。 

先行き不安の多い今こそ新たな収入源を

 老後を考えると、真っ先に心配になる「お金」の問題。昨年の調査では、高齢夫婦世帯は年金だけの生活だと月約4・2万円不足する計算に。金融広報中央委員会の調査では、60代の2人以上世帯の貯蓄額の中央値は700万円台と、決して十分とはいえない額だ

「私たちを取り巻く経済状況は変化が激しく、厳しさを増しているのは事実。社会保険料の負担が増えたり、アメリカのトランプ政権によって日本経済が振り回されたり……。家計が苦しいと感じ、将来を不安視する人は増えているのではないでしょうか」

 そう話すのは、キャリアアドバイザーの高村祐規子さんだ。

 日本の50歳以上の人口は50%を突破。さらには未婚率の上昇や離婚の増加で、「おひとりさま老後」を迎える女性も多い。特に女性は長寿の傾向があり、平均寿命は87歳を超える。そのときに頼りになるはずの年金だが……。

「年金受給額の目安は、国民年金で月約7万円。厚生年金では夫婦2人で月約23・7万円。持ち家か賃貸かで支出は変わりますが、年金だけでゆとりある暮らしができる世帯はそう多くない印象です」(高村さん、以下同)

 止まらぬ物価高と働き手不足で人件費が上がり、今後、さらに生活費の高騰も予想されている。将来的には年金の手取りは減る可能性も。しかし、「諦めは不要!中高年世代はもっと稼げる」と、高村さんは力強い言葉をかける。

無職だと老後の生活費は赤字になる可能性大!(総務省「家計調査」2025年平均より)

仕事の実務経験や家庭を運営した力量、子育て経験はすべて財産。活かせば、新しい収入源はつくれます。資格や特技がないからと、何も動かないのはもったいない。金額は多くなくても細く、長く得られる収入を持つことや、新しいお金の知識を身につけることを意識し、老後対策を今すぐ始めましょう」

 こんな時代だからこそ、身につけたい“稼ぐ力”。そのための3原則を高村さんがレクチャーする。

稼ぐだけでなく“増やす力”も身につけると老後の安心に

 “稼ぐ力”を身につけるために、まずポイントになるのが、収入源を複数持てるようにすることだ。

【原則1】メインの仕事にプラスして稼ぐ力をアップ!

稼ぐとともに“増やす力”も身につけると老後の安心に

「『本業+副業+投資』の3つで収入を確保することが理想的。収入源がいくつかあれば、老後も収入が途切れるリスクを減らせるので、将来的にも安心感があります」

老後資金を安定させる3つの収入源

 今や「投資」も将来の備えとして欠かせない手段になりつつある。

物価上昇が今後も続くと、現金の価値は目減りします。まだ投資を始めていない人は、少額から始められるNISAや、金(ゴールド)の保有なども視野に。正しいお金の知識を学び、稼ぐとともに“増やす力”も身につけたいもの

 ただし、投資はあくまでも収入源のひとつにして、メインにはしないこと。

「必要な生活費を確保したうえで、慎重に少額から始めるといいですね」

週女世代は子育て経験も武器になる

 収入アップを考えたとき、新しい仕事を思い描く人は少なくない。しかし、「ゼロからのスタートにこだわりすぎないで」と高村さん。

「今までの経験やスキルを活かさないのはもったいない。まずは今までやってきたことを土台にして何ができるかを考えて。経験してきた分野の資格を取る、英語を学ぶなど、実務経験に“+α”すると価値が高まります」

 人生経験も立派な強み。家事スキルは飲食店や介護施設、家事代行など。また、子育ての経験は学童保育スタッフなど、教育関連の仕事などで活かせる。

「今、引く手あまたなのが昔、エンジニアとして働いていた人。デジタル化の流れの中で再び活躍できるフィールドが増えています」

 販売・接客経験があるなら、「登録販売者」の資格取得もおすすめだ。

「登録販売者は、ドラッグストアなどで一般用医薬品を販売することができる資格です。この資格を取得してから応募すれば、採用に有利になるだけでなく、給与アップのチャンスに」

 本格的な趣味があれば、それが高じて仕事にできることも。ただし、“好き”だけで始めるのはリスクが伴う。

まずはマーケット調査が大事。どんな人がお金を払うのか、ほかに競合はいるのか、強みは活かせるのかなど、市場を見極めてから始めましょう

 勢いで転職するのではなく、情報収集のため、希望の業界で試しにパートとして働いてみるのもひとつの方法だ。

AIの進歩で求められる能力

 これからの働き方で重要なのが「仕事の将来性」だ。10年後、20年後にもその仕事の需要がないと、結果として“稼げ”ない。

【原則2】仕事の将来性を見極める

AIの進歩で、人にしかできない能力が求められる

 避けて通れないのがAIの進化。性能が向上するにつれ、すでに一般的な事務職などの単純作業や定型業務の多くが人手を必要としなくなり、今後は医療や介護、保育の現場などでも導入が進むとされる。

「だからこそ、人間にしかできない『質の高い仕事』が求められます。患者や利用者とのコミュニケーションやわずかな表情の変化、体調異変に気づく力、相手の気持ちに寄り添う力など、こうした人間力はAIには代替できません」

 この変化を脅威と捉えるのではなく、むしろ新しいアイデアを生み出し、自分の仕事をアップデートするための道具として、今のうちに味方につけたい。

 AIは知的好奇心を刺激してくれる存在であり、長年の人生経験と掛け合わせることで、企画や業務の幅を広げる強力な助けになってくれるからだ。

『稼ぐ力』を手に入れるには、AIの台頭で今の仕事がどう変わるのか、役割を見極め、どんなスキルを加えれば自分の価値を最大化できるか、その視点が必要不可欠です

【原則3】自分らしく続けられる仕事を見つける

オリジナルの技術が収入とやりがいに

 楽しく収入を得るには、「自分らしい仕事」を見つけられるかがカギに。しかし、どのように見つけたらいいのだろうか。

「これまでやってきたことを具体的に書いてスキルを洗い出し、『自分の強み』を見極めましょう。まずは職務経歴書を作ってみてください」

 具体的な数字や関わった人数なども書き出せるとベストだ。その内容を確認しながら、左上のコラムを参考に、自分の強みについて3つのステップで考えてみよう。特に初めて就いた仕事には本人の素直な“好き”が反映されていることも。

「そこからヒントを得て、自分の強みを活かせる仕事についてリサーチしてみてはいかがでしょうか。可能なら、その業界の人に話を聞いてみるといいですよ。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談し、その業界のリアルな労働環境を確認するのもあり。現在の仕事の需要についても、必ず人材市場の動向を調べましょう」

 今後、高い需要が見込まれるのは、経済的な余裕があるシニア層と、外国人をターゲットにした仕事だ。

「50代以降も働ける」今後も需要が高い仕事

「シニア層は、医療や健康維持、趣味への支出が旺盛。今後は国内外でシニア市場がさらに拡大します」 

 加えてインバウンドの影響で英語が話せる人材を求める企業が増え、キャリアアップや好待遇のチャンスが広がっている。

「バイリンガル向け転職サイトの調査では、英語力が中級(TOEIC735点)以上の50代女性の年収は、そうでない人と比べて120万円、年収が多いという結果も。資格がなくても英語力があれば接客業では重宝されます。やりがいと将来性、2つがそろった仕事なら、いくつになっても楽しく続けられますよ」

 今は何歳からでもチャレンジできる時代。自分らしい稼ぎ方を身につけよう。

稼ぐ力を付けセカンドキャリアで活躍している実例

【実例1】井上理白さん

会社員からアーティストに! 師範の資格で書道教室をスタート

 学在学中に師範の資格を取得後、損保会社勤務を経て書道教室を開いた井上さん。

JPモルガン、東大寺ミュージアムでイベント開催など、グローバルに活躍している書道アーティストの井上理白さん

「最初は生徒6人でしたが、丁寧に向き合ったところ口コミで3か月後には3倍に」

 心理学を取り入れ、生徒の性格に合わせた独自メソッドで、28年目の今年、国内外の生徒数は延べ2000人超に。

 2014年のNY初個展後、NY在住となり、企業ブランドのロゴ制作や海外イベントも手がけ、書道アーティストとして世界で活躍中。

【実例2】守谷優子さん

経理からフラワーデザイナーに! 定年退職後は賢く働く

 定年後、好きを仕事にフラワーデザイナーになった守谷さん。

 週3はフラワーデザイン会社に勤務、派遣でブライダルの仕事も行う。また、現役時代から投資の勉強をし、収入の柱を増やしたそう。

「SNS活用セミナーに通ったり、さまざまなコミュニティーに参加するなど、人とのつながりを大切にしています。お花の仕事は技術職で人に喜んでもらえるので、やりがいも感じられて幸せです」