「コロナはもう過去の病気」と思っていないだろうか。実は昨年の新型コロナウイルス死亡者数はインフルエンザの約3倍。冬だけでなく夏にも流行を繰り返している。命を守るために知っておきたい、コロナの最新状況と対策を専門医に聞いた。
インフルエンザとの違いは「夏にも流行る」
2020年からの新型コロナウイルス(COVID―19)の流行が一段落し、2023年5月には5類感染症(インフルエンザと同じ分類)に移行。コロナ禍は過去のものと思っている人も多いかもしれない。
だが、「知られていないだけで、コロナの脅威はまだ続いています」と言うのは、感染症に詳しい関雅文先生。コロナとインフルエンザには、決定的な違いが3つあるという。
「1つ目は、インフルエンザよりコロナのほうが、はるかに死亡者数が多いということです。インフルエンザの感染者数はコロナよりも多いですが、死亡者数になると、完全に逆転します。昨年は、約7000人のインフルエンザ死亡者数に対して、コロナは約2万1000人。約3倍です。“命を失う”という点では、コロナのほうが圧倒的に危険なのです」
特にコロナで亡くなる人は、高齢者が多い。
「心臓が悪い、血圧が高い、脳梗塞を起こしたことがあるなど、基礎疾患のある高齢者のほうが、コロナで重症化し、命を落としやすいと以前から言われています。コロナウイルスは、主に血管の内側を覆う細胞の表面にある分子と結合して、感染を引き起こしますが、この分子は加齢で増えやすいことがわかっています。
さらに、高齢者は基礎疾患がある方も多く、血管がもろくなっており、侵入したウイルスが急激に増殖しやすい環境にあります。そのため、血管内で激しい炎症が起きて血栓ができやすくなり、脳や心臓、腎臓に障害を引き起こし、死亡率の高さにつながっているのです」
インフルエンザとの違いの2つ目。「夏にも流行る」ということだ。
「インフルエンザは冬の乾燥している時季に流行しますが、コロナは冬だけでなく夏にも流行ります。年に2回のペースで変異を続け、『盆と正月に患者数が増える』のが、この5年間の傾向でした。季節性の流行というより、人の移動に合わせて変異して、流行する特徴があるのです」
しかも、冬よりも夏のほうが感染者数は多いという。
「原因はいくつかあります。1つは“ウイルス干渉”によるもの。複数の種類のウイルスが体内で活発になることは少なく、冬はインフルエンザという強力なライバルがいることで、コロナの出番は減っています。夏に流行るウイルスもありますが、威力はインフルエンザほどではない。
ですからコロナは、夏のほうが流行しやすいわけです。かつ、夏は熱中症予防としてマスクを外しがち。そのせいで、お盆に子どもたちが里帰りしたときなど、人が集まったところでクラスターが起きます。暑いかもしれませんが、人が集まるところではマスクをしてほしいですね」
今年の夏の傾向は、どうなのだろうか。
「この冬はインフルエンザが流行し、コロナの患者はあまり見られませんでした。今のところは落ち着いていますが、患者数はゼロにはなっていません。そして、これからお盆に向けて広がっていく可能性があります。
この夏の原因株として警戒されているのが、BA.3.2系統(セミ型)といわれる変異株です。初期に流行したものに似ていて、いわゆる先祖返りした株です。特徴的な症状は、喉の痛み。熱が出て喉が痛いときは、ただの風邪と思わず、コロナを疑って、すぐに受診しましょう」
インフルエンザより圧倒的に死亡者数が多い
やはり今年の夏も油断できないようだ。今からできるコロナ対策は?
「まずワクチンです。今年の株は、今までのワクチンでは効きにくいことが予想されていますので、最新のものを打ちましょう。手洗いやマスクも欠かせません。さらに、免疫力をつけておくことも大事なので、適度な運動、睡眠、食事では栄養価が高いものや、感染予防の研究がなされている乳酸菌を意識的にとるのもよいでしょう」
関先生が特に強調するのは、3つ目のインフルエンザとの違い。
「コロナには後遺症があるということです。30代~40代の女性を中心に、咳や頭痛が残りやすいことがデータで出ています。もし、熱や喉の痛みが出たら、これぐらい大丈夫と思わず、すぐに病院で治療を受けてください。そうすることで、コロナだったとしても後遺症を減らせます」
収束したと思われたコロナだが、まだまだ終わっていない。夏は特に注意と肝に銘じて、今すぐコロナ対策に取り組みたい。
コロナとインフルエンザの死亡者数
昨年の死亡者数は、インフルエンザが約7000人に対して、新型コロナは約2万1000人。一昨年は約3000人に対して約3万6000人。インフルエンザよりコロナのほうが、圧倒的に死亡者数が多いことがわかる。
有効的な対策とインフルとの違い
感染予防・対策は下記4つが有効
1.ワクチン
主流株に合わせた最新のワクチンを打つことが、最大のコロナ対策になる。インフルエンザと同じように秋に打てば、1週間もすれば抗体ができる。世界的には年2回打つことが推奨されているが、基礎疾患のある人は少なくとも年1回は必ず打ちたい。
2.手洗い
夏は汗や日焼け止めなどで肌がべたつきやすく、ウイルスが付着して残りやすい環境。アルコールによる手指消毒はもちろん、石けんを使った流水による手洗いを行うように。手を拭くときは、共用のタオルは避け、ペーパータオルか個人専用のタオルで。
3.マスク
人混みでは、マスクをつけるように。ウイルスの遮断性能が高い「不織布タイプの冷感 マスク」や医療用と同等の高い防御力を備える「冷感サージカルマスク」がおすすめ。口元に空間のできる立体型なら、暑苦しさを軽減できる
4.食生活の整え
夏に積極的にとりたいのは、ヨーグルトやチーズなどの乳製品。タンパク質を手軽に補給でき、乳酸菌が腸内環境を整えて免疫力を高める。ヨーグルトにビタミンCやクエン酸が豊富な果物を組み合わせると、亜鉛を吸収する力がアップ。
コロナとインフルエンザの違い
新型コロナ感染症
・変異のスピード:年に2回程度
・季節性:気温・湿度に影響されにくい通年の感染症。近年の傾向では夏に流行している
・感染伝播の強さ:免疫回避能力があり、感染の広がりを防ぎにくい
・主な感染部位:血管へ感染し、肺炎のみならず脳血管や心血管への障害がみられる
・重症化した際の特徴:血管障害を通じて全身に影響し、中長期的な後遺症が残ることが少なくない
・病原性:高齢者で重症化しやすく致死的となる
季節性インフルエンザ
・変異のスピード:年に1回程度
・季節性:寒さ・乾燥に強く、冬に流行しやすいが、近年はその限りではない
・感染伝播の強さ:抗ウイルス薬の投与による予防が期待できる
・主な感染部位:肺など呼吸器系
・重症化した際の特徴:高齢者では肺炎、小児においては重症化すると脳症をきたしやすい
・病原性:小児、高齢者で重症化しやすく、病原性が高い
取材・文/池田純子
