(写真はイメージです)

遠く離れて暮らしていたり、仕事や子育てが忙しかったりして、高齢の親を十分に見守れず、不安を抱えている人は少なくない。そんな人のために、センサーやカメラ、訪問サービスなど、「見守り」方法の選択肢が多種多様になっている。そのメリット、デメリットを比較して、親の性格や暮らしに合った最適な見守り方を専門家がレクチャー。

何のために見守るのか目的をはっきりさせる

「高齢の親が一人暮らしをしている」「実家が遠くて頻繁には帰れない」……、離れて暮らす親を心配している人は少なくない。そんな中、利用者が増えているのが、高齢の親や親族を“見守れる”サービスだ。

 緊急通報型やセンサー型など種類は豊富だが、どれを選べばいいかわからないという悩みも。数多くのサービスを試しながら、一人暮らしの実母(77)を3年以上見守っている、「親の見守り」に詳しいすずきみがるさんは、こう話す。

「配偶者が先立ったりして親が一人暮らしになると、多くの人が漠然とした不安を抱えます。でも、『何が不安なのか』がはっきりしていないので、どのサービスを選べばいいかわからず、つい先送りになっているケースが多いようです」

 サービスを選ぶ際に大切なのは、「何のために見守るのか」を明確にすることだという。

「『元気に暮らしていることがわかれば安心』『異変に早く気づきたい』など、見守る目的によって選ぶサービスは変わります。そこからコストを比較するとよいでしょう。安ければいい、高ければ安心というものではありません」

 みがるさん自身も、最初からベストの方法にたどり着いたわけではない。きっかけは毎日続けていたLINE連絡が、突然途絶えたことだった。

「LINEが『既読』にならないし、電話にも出ない。慌てて実家に向かうと、母は近所に出かけていただけでした。でもそれが、『たまたまなのか、本当に倒れているのか』わからないことが、一番こわいと実感したんです」

 そこで最初に導入したのがセンサー型。

「トイレの電気のオンオフで母の動きを検知するタイプでしたが、もう少し細かく把握したくて、冷蔵庫のドアの開閉で感知するタイプに変えました。でも母は、それほど冷蔵庫を開けない。これでは意味がないと次に導入したのが、“かんたん見守りプラグ”です。

 コンセントに差すだけで4種類のセンサーが母の動きを検知するので、生活リズムのちょっとした変化に早めに気づけていい。今は、これにプラスしてAIロボットを使っています。母がロボットに毎日話しかけるようになり、結果的に母も発声する機会が増えたようです」

カメラで親を見守る(イラストはイメージです)

 一方で、導入時には親の気持ちも無視できない。

「正解探し」ではなく「相性探し」

「『まだ元気だから必要ない』という親御さんは多いです。ただ、親は子どもに迷惑をかけたくないという気持ちがあるので、『私が安心したいからお願い』と伝えると、私の場合は受け入れてくれました。そのうえで、どのサービスを導入するのがよいか親子で話し合ってみましょう。

 カメラは監視されているようで嫌だけど、センサーならOKといった、親御さんの希望も聞けるはずです。情報を集めるのは子どもで、最終決断は親、とすると、その家庭の最適解が見つかるのではないでしょうか」

 最近は、自治体による“見守り支援”も充実している。民生委員による訪問や緊急通報装置の貸与、配食サービスを兼ねた安否確認など、地域によって利用できる制度はさまざま。地域包括支援センターや、市区町村の高齢者福祉窓口に相談するのも一つの方法だ。

 みがるさんが最後に強調するのは、親の見守りは「正解探し」ではなく「相性探し」という考え方だ。

「実際使ってみると、合う、合わないは少なからず出てきますし、誰にも万能なサービスはありません。また、最初はアプリでよかったけれど、やはりセンサーが安心で、そのうち訪問も必要になってくるなど、親の状況もどんどん変わっていきます。

 ですからサービスを選ぶときに、解約条件や違約金の有無などは必ず調べておきましょう。最初は、初月無料サービスなどを利用するのがおすすめです

 見守りの最終目標は、親が住み慣れた家でできるだけ長く元気に暮らすこと。「どんな生活を続けたい?」「困っていることはある?」──親子でこれからの暮らしについて話し合うことで、その家庭にぴったりの“見守り方法”が見えてくるはずだ。

メリット・デメリットを比較! 【タイプ別】見守りサービス

 高齢者を“見守る”方法は、緊急通報やセンサー、カメラ、訪問、アプリなど、そのサービスの種類は多彩。それぞれの特徴やメリット・デメリットを知り、親の暮らしや家族の不安に合ったものを選ぶことが、安心への第一歩になる。

【緊急通報型】

セコム(セコム・ホームセキュリティ<親の見守りプラン>)
アルソック(HOME ALSOKみまもりサポート)など

 緊急ボタンやペンダントを押すと、警備会社や専門スタッフが駆け付けるサービス。24時間365日体制なので、急病や転倒など緊急時への対応が速く、一人暮らし高齢者の安心度は高い。

メリット:専門スタッフが迅速に対応。緊急時の安心感が高い
デメリット:月額料金は比較的高め。本人がボタンを押せないと利用できない

【センサー型】

KDDI(かんたん見守りプラグ)
ネコリコ(まもりこ)など

 照明、トイレのドアや冷蔵庫の開閉など、日常生活の動きをセンサーで検知し、生活リズムの変化や異変を家族へ通知する。親が機械を操作する必要がない。駆け付けを付帯できるサービスも。

メリット:プライバシーを守れる。比較的低コストで始めやすい
デメリット:設置場所によって精度が左右される。緊急時に直接対応はできない

【カメラ型】

ソニーネットワークコミュニケーションズ(MANOMA<マノマ>)
ラムロック(みまもりCUBE)

 室内カメラでリアルタイムに様子を確認するタイプ。映像で状況を把握できるため、認知症や転倒リスクが高い人にも活用されている。異変の早期発見や介護負担の軽減など、メリット多数。

メリット:状況を映像で確認できる。防犯対策にもなる
デメリット:プライバシーへの抵抗感が大きい。死角が生じる場合がある

【訪問型】

日本郵便(みまもりサービス)
ヤマト運輸(クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン)
ヤクルト(愛の訪問活動)など

 企業のスタッフや配達員などが定期的に自宅を訪問して、健康状態や生活の様子を確認し、家族へ報告するサービス。自治体が実施するものもある。孤立や不安の軽減にもつながる。

メリット:直接会って体調を確認できる。生活環境も把握できる
デメリット:訪問日以外は見守れない。訪問者との相性が影響する

【アプリ型】

NTTドコモ(つながりほっとサポート)
KDDI(安心ナビ)
アイテム(ピースサイン)など

 スマートフォンを利用し、生存確認や位置情報、スマホ利用状況などを家族と共有するタイプ。無料や低価格で利用できるサービスも多い。スマホを操作するだけなので、親の心理的負担は少ない。

メリット:導入しやすく費用も安い。手軽に始められる
デメリット:スマホ操作に慣れていることが前提。通信環境に左右される

【ハイブリッド型】

 センサー型に駆け付けサービスを追加できるものや、カメラ型とセンサー型が一体化した機器など、複数の機能を組み合わせたサービスも増えている。みがるさんも、センサー型にAIロボットを組み合わせている。一つで解決しようとせず、必要に応じて機能を足していくのがおすすめ。

サービスを選ぶときのコツ

・「異変に早く気づきたい」「毎日元気か知りたい」など目的を明確にする
・親の生活習慣に合ったサービスを選ぶ
・親が嫌がらずに受け入れる方法を優先する
・子どもだけで決めず、親と話し合って選ぶ
・価格だけでなく「安心できるか」で比較する

「人気だから」「安いから」で選ぶのではなく、親の生活スタイルや健康状態、自分が何を心配しているかを基準に選ぶことが大切。最初から完璧を求めず、一つずつ試しながら、相性のいいサービスを見つけよう。

導入時の注意点

・センサーは設置場所によって検知精度が変わる 
・初月無料や機器のレンタルなど、お試しサービスから始める
・一度に複数導入せず、一つずつ慣れてから追加する
・親の生活リズムが変わったらサービスも見直す
・解約条件や違約金の有無を事前に確認する

 導入しただけで安心できるものではない。設置場所や使い方によっては十分な見守りができないこともある。また親の状態は変化するため、定期的に見直しながら、その時々に合うサービスへ切り替えていくことが重要。

すずきみがるさん 医療職として27年勤務。FP、ケアマネジャーの資格を持つ。父の急逝をきっかけにブログ「みがるの終活」をスタート。一人暮らしの母と一緒に試した見守りサービスの体験談・比較情報などを発信している。

取材・文/池田純子