新発売の“冷水5分”で楽しめる「冷しカップヌードル」。ひんやりおいしい、ピリ辛キムチ味(左)と鶏塩レモン味(右)の2種/写真提供:日清食品(即席ラーメン)

 身近な存在なのに、意外と知らないことが多いカップ麺とかき氷。「なぜカップ麺は3分待つの?」「かき氷はいつから食べられていた?」――その理由や歴史をひもとくと、知られざる工夫や驚きの事実が見えてくる。専門家に聞いた。

8月25日は「即席ラーメンの日」

雑学1:即席ラーメンの調理時間、なぜ「3分」が多い?

「一番おいしく食べられて、待つストレスも感じにくい“ちょうどよい時間”だからです」(日清食品 広報担当)

 8月25日は、世界初のインスタントラーメンが誕生したことにちなんだ「即席ラーメンの日」だ。今や私たちの国民食でもあるカップ麺や袋麺だが、「なぜ調理時間は3分の商品が多いのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。その秘密を、1958年に世界初の即席ラーメンを発売した日清食品の広報担当者に聞いてみた。

「一番の理由は、3分が『最もおいしく食べられる時間』だからです」と担当者は明かす。さらに3分という時間は心理的にも待つストレスを感じにくい絶妙なタイミングなのだという。実は、技術的には「1分」で戻る麺を作ることも可能だ。

「ただ、そのためには麺を細くする必要があり、食べている間に伸びやすくなるデメリットが生じます」

 待つストレスがなく、最後までおいしく食べられる絶妙なラインが「3分」だったのだ。一方で、4分や5分待つ商品があるのは、「麺の太さ」が最大の要因。太い麺ほど、お湯の吸収に時間がかかるためで、うどんなどでコシや喉ごしのよさを実現するには5分程度が必要になる。

 また、「熱湯3分」のカップ麺を作る際、カウント開始のタイミングは?

「お湯を注ぎ終わってからです。上のフタを閉めるのは、保温と蒸らしのため。カップ内に蒸気をとどめ、麺や具材にしっかり熱を伝える役割があります」

 基本的に即席ラーメンは熱湯を用いる前提だが、今年は水だけで作れる革新的な新製品「冷しカップヌードル」が登場して話題を呼んでいる。

「原材料の配合や麺の内部構造を工夫した新製法により、冷水でも短時間で均一に戻る、専用の麺が完成しました」

 冷たい水を注いで5分待つだけ。暑い夏に火やお湯を使わず食べられる、まさに未来の即席ラーメンだ。

「待つ時間」に隠されたおいしさへの緻密な計算。今年の即席ラーメンの日は、3分間の技術の結晶をじっくり味わってみてはいかがだろうか。

原点は高級スイーツ

雑学2:かき氷の歴史はいつごろ始まり、昔の人はどう楽しんでいたの?

「古くは平安時代中期。氷室から運び、削った氷に煮詰めた樹液をかけた超贅沢品」(和文化研究家・All About「暮らしの歳時記」ガイド 三浦康子さん)

 いまや欠かせない夏の風物詩になっているかき氷。その歴史をひもとくと、かつては限られた特権階級しか口にできない超高級スイーツだった。

 和文化研究家の三浦康子さんによると、日本最古の記述は平安中期の『枕草子』に登場する「削り氷」だという。

「当時、冬に氷室で保存した氷を、夏に朝廷へ献上する文化があり、削った氷にツルの樹液を煮詰めた蜜『甘葛』をかけたものは、天皇や上級貴族だけが味わえる貴重な贅沢品でした。刃物でかき取った大きな粒でガリッとした食感に、甘みはほのかだったと考えられています」

※写真はイメージです

 氷を削って蜜や果汁をかける「氷食」という冷菓が、遣唐使を通じて古代中国から伝わったとされているが、日本の削り氷は氷室文化と結びついて独自の発展を遂げたそう。

「江戸時代になると鋸などで削るシャリシャリした食感へ進化。砂糖の普及により、シロップにはみぞれ(砂糖蜜)や金時(小豆)が登場し、後期には天然氷を運ぶ商売によって庶民にも広まりましたが、当時の価格は現在の数千円相当だったといわれています。

 本格的に大衆化したのは、明治時代に人工製氷技術と氷削機が誕生してから。『かき氷』という名称も、氷をかき取る『欠き氷』を語源に明治期に定着しました」

 実はかき氷には食べ方やスタイルに地域差があるという。

「シロップを器の底に入れるのが関東(特に東京)の伝統ですが、全国的にはふわふわ氷の普及に伴い、上からかけるのが主流。ご当地文化も多彩で、北海道ではソフトクリーム、名古屋ではフルーツやゼリーをのせたスタイルが人気です。

 九州ではガリガリとしたかたい氷が根強く愛され、鹿児島名物『白熊』のように練乳や豆をあしらったかき氷も有名。沖縄では、甘く煮た金時豆の上にかき氷をのせる『ぜんざい』が定番です」

 この夏は、長い歴史や地域ごとの文化に思いを馳せながら、ひんやり贅沢なひとときを味わってみては。

取材・文/荒木睦美