2017年3月、映画『サクラダリセット』公開前イベントに登壇した阪井(右から2番目)

「私はおよそ8年間、flumpool(フランプール)のギタリスト阪井一生氏の依頼でドラマの劇中音楽を制作してきました。しかし、自分が作曲した楽曲が阪井氏の名前で発表され、作曲者としてのクレジットが掲載されなかったんです」

 こう告白するのは、ピアニスト・作曲家として活動する大浦史記氏。'27年発売予定のホラーゲームの音楽を担当する傍ら、ピアノ講師も務めている。

 多部未華子が主演を務め、ディーン・フジオカらが出演した'25年4月期のドラマ『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)。劇中で使用した楽曲(以下、劇伴)の『声にならない想い』をめぐり現在、大浦氏は阪井を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしている。

 自身が同楽曲を作曲したにもかかわらず、作曲者としての氏名表記が適切に行われなかったと主張しているのだが、いったい2人の間に何があったのだろうか――。

10曲弱で報酬は2万円

 阪井が所属する4人組ロックバンド・flumpoolは、'07年1月に結成。

 '08年に配信シングル『花になれ』でメジャーデビューを果たすと、同年にリリースした『Over the rain~ひかりの橋~』が、TBS系ドラマ『ブラッディ・マンデイ』の主題歌に起用され、注目を集めた。

「'09年にはNHK紅白歌合戦に初出場。'10年、映画『君に届け』の主題歌に起用された同名曲で人気を不動のものにしました」(スポーツ紙記者)

 大浦氏によれば、阪井との劇伴制作に関わるようになったのは、今から10年ほど前のことだった。

「音楽関係者の紹介をきっかけに阪井氏から仕事をいただくようになりました。ドラマのイメージや簡単な指示を受け、それに沿って楽曲を制作。ピアノを中心とした曲を作り、納品していました」(大浦氏、以下同)

10月13日、東京地裁中目黒庁舎で本人尋問が行われスーツ姿で出廷した『flumpool』ギタリスト・阪井一生

 最初の仕事は、'17年9月に放送された『FNS27時間テレビ にほんのれきし』(フジテレビ系)の劇伴制作だった。

「番組では3本のスペシャルドラマが制作されることになり、阪井氏が劇伴を担当することになりました。当初は阪井氏が作った曲にピアノを加える仕事だと思っていましたが、実際は私がゼロから制作しました。10曲弱を納品し、報酬はおよそ2万円でした。仕事をもらえたことがうれしく、報酬の額は気にならなかったんです」

大浦氏が明かす8年間の劇半制作

 正式な契約書は交わしておらず、自分の名前がスタッフクレジットに掲載されることもなかったという。ただ、当時の大浦氏は、そのことを大きな問題とは捉えていなかったと話す。仕事を通じて阪井との関係が続き、その後も複数の作品で劇伴制作に携わるようになったからだ。

「2回目のオファーは、'21年配信のNetflix『未来日記』Season1で、'22年配信のSeason2でも、阪井氏に依頼され制作に関わりました。両シーズンを合わせておよそ12曲を手がけ、報酬は各5万円でした」

楽曲は主にLINEで納品していた

 しかし、これらの作品でも、自分の名前は作曲者としてクレジットされなかった。こうしておよそ8年間にわたり、阪井からの依頼を受けて劇伴を制作してきたという。

 この関係に変化が生じたのが、ドラマ『対岸の家事』の劇伴制作だった。同作の公式スタッフ欄や本編のエンドロールには、音楽担当者として阪井の名前が掲載されているのだが……。

「阪井氏から制作の依頼を受けたのは、'24年12月です。これまでどおり、ドラマのイメージを伝えられ、16曲を制作してデータを提出しました。その中の1曲が、今回の訴訟の対象となっている『声にならない想い』です。

 4度目となる今回こそ、自分の名前を作曲者としてきちんと表記してほしい――。そんな思いから、'25年1月18日、楽曲がこれまでと同様に採用されるのであれば、公式サイトのスタッフ欄やドラマのエンドロールに、阪井氏と連名で名前を掲載してほしいと話をしました」

 しかし阪井からは、エンドロールや公式サイトに名前を記載することは難しいと説明され、“クレジットを入れることがマストなのであれば、今回の仕事は白紙にすることも考えなければならない”という趣旨の話があったという。

「すでに16曲納品していましたし、断ることで今後の仕事がなくなるかもしれないという不安、阪井氏との関係が悪化するのでは、という恐怖から、今回のクレジット記載はしないことで了承するので、次回からはきちんと扱ってほしいと伝えました」

「ゴーストライターではない」の説明

 すると、阪井から『対岸の家事』のサウンドトラックCDの発売の可能性と、配信では共作にできる可能性があると提案を受けた。

「もしCDが発売されるなら、曲ごとにクレジットを載せられるかもしれない。また、アルバム自体を阪井氏と私の共同制作として出す案も提案されました。

 しかし、私は全曲に関わったわけではないので、アルバム全体を連名にする必要はなく、自分が作った曲だけクレジットしてもらえればよいと考えていました。そこでCDの発売が正式に決まったら改めて話し合いましょうと伝えました」

 その後、阪井からの連絡はなく、'25年4月、大浦氏はSNSを通じて、『対岸の家事』のサウンドトラックCDが発売されることを知った。

「私が制作に携わった『声にならない想い』が収録されていたので、作曲者としてのクレジット表記を求めたものの、CDはすでに完成してしまったとのことで実現しませんでした。阪井氏は自分の独断で進めてしまい、申し訳なかったとしながらも、私のことはゴーストライターのような扱いではないと説明を受けました」

阪井はクレジットについて独断で進めてしまったことを謝罪。大浦氏をゴールトライターではないとしているが…

 しかし、大浦氏は悔しさのあまりその翌日、阪井宛てに内容証明郵便を送付。阪井の所属事務所とテレビ局にも連絡し、今回の問題について説明したという。

「驚いたのは、事務所もテレビ局も阪井氏の背後で私のような作曲家が制作に関わっていることを知らなかったんです。音楽配信サービスでは対応が進み、当初は阪井氏との共同表記だったApple Musicの作曲者欄も、'25年9月には私の単独表記に変更されていました」

 大浦氏が問題視しているのは、クレジットの表記だけではない。JASRAC(日本音楽著作権協会)への作品登録についても、疑問を抱いているという。

「今回のトラブルをきっかけに過去の作品を調べたところ、『未来日記』などで、自分が作曲したと考えている楽曲が阪井氏名義で登録されていることがわかりました。今回の訴訟の対象となっている『声にならない想い』も、当初は阪井氏の名義で登録されていましたが、現在は私名義に変更されています」

 その後、裁判所が間に入って調停を試みたものの、合意には至らず、'25年9月、阪井を相手に訴訟を提起した。

「損害については、金銭に換算しにくい面があります。名前が記載されなかったことで、8年間にわたり音楽関係者と知り合ったり、作曲家として認知される機会を失ったと考えています」

 今回の訴訟では『声にならない想い』をめぐる100万円の損害賠償、謝罪文の掲載、『対岸の家事』のサントラCDの在庫破棄と流通停止などを求めている。

 果たして、法廷で阪井氏は何を語ったのか。『【独自.2】『flumpool』ギタリストが訴えられていた!「嘘をついている」“ゴーストライター”作曲家が法廷で語った言い分』で詳細を報じる。