上関原発の新設に抗議して座り込みをする島民たち 撮影/山秋 真

 原発の新設に36年、抗い続けている地がある。山口県上関町の祝島だ。豊かな海に浮かぶ、周囲約12kmのハート形の島。その集落の目の前、約3・5km対岸の田ノ浦を、中国電力(以下、中電)は上関原発の予定地とする。

 だから祝島の人々は、総数1000人を超えた当初から400人を切った現在まで、一貫して約9割が反対の声をあげる。

 この3月末も、山口県漁協の祝島支店(旧祝島漁協)として、上関原発を建てるための漁業補償金の配分案を否決。18年前から9回目の受け取り拒否だ。

「この漁業補償金は、これからも拒否し続ける。私らは海で育って、海で仕事をして、みなさんに魚を届けるのが誇り。原発を建てては絶対にダメだ。福島の事故が証明しているでしょう」

 3月の採決のあと、祝島支店の運営委員長・岡本正昭さん(69)はそう話した。

祝島民を苦しめる問題とは

 人をだまして金を奪う話は聞いても、金の受け取りを迫る話は珍しい。なぜ祝島はその稀な事態となったのか。

 『漁業権とはなにか』(熊本一規、日本評論社)によれば、「漁業補償金が支払われるのは、事業者が不法行為を犯すことを回避するために補償契約を結んだうえで工事にかかる必要があるから」といえる。

 漁業権は財産権だ。それに損害を与える埋め立て事業は、補償せずに進めれば不法行為となる。だから事前に補償し、侵害行為について同意を得て、始めなければならない。その手続きが補償契約だという。

 ところが、上関原発の予定地周辺の旧8漁協のうち祝島漁協は、1982年の計画浮上当初に賛成を表明した組合長をリコール。漁業者は以降、原発反対を決議する形でそれぞれの意思を示し、補償交渉にも応じなかった。

 前出・岡本さんによれば、上関原発の原子炉建設予定地は南岸が岩礁で藻場があり、親魚が産卵し稚魚が育つ場。取水口や放水口近くも好漁場だ。だが「海が埋め立てられ、原子力発電所が建設、運転されると、これらの漁場が失われる」(後述する裁判での岡本さんの意見陳述書より)。