雅和さんは84歳の母親と同居していた。

「雅和さんは下半身に障害があり、約3年前から車イスの生活でした。母親も同じころ認知症になり、近くに住む智宏さんが2人の介護をなさっていたんです」(前出の主婦)

母・弟宅のマンション
母・弟宅のマンション
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 もう少し事件の背景を遡る。母親がこのマンションに住み始めたのは約30年前のこと。

「お母さまは会計事務所で働き、ご主人は刑事でした。2人の息子さんはそれぞれ家庭を築いていたので、ご夫婦で定年を迎えたころ転居されてきました」と前出の住人男性。

 間取りは3DK。部屋は狭かったが、物持ちのいい高齢夫婦にはちょうどいい広さだった。しかし、15年前に夫が他界し、母親ひとりの生活が始まった。母親はマンションの自主管理組合で初の女性理事長を務めるなど精力的で、息子の世話にはならなかった。

華やかな経歴が邪魔に

 ところが約6年前、次男・雅和さんが東京から戻ってくることに─。

「雅和さんは秀才で、お母さんの自慢の息子でした。県内随一の進学校といわれる静岡高校から京都大学に進み、卒業後は大手家電メーカーに就職して、役員まで務めたそうです」(前出の住人男性)

 しかし、その家電メーカーで6~7年前、大リストラが敢行された。雅和さんがクビを切られたのではない。切ったほうだった。

「人事部長でしたからね。仲間のクビを切った責任をとって、自らも会社を辞めたんです。精神的に相当参ったようで2男をもうけた奥さまとも離婚し、このマンションでお母さんと2人で生活するようになりました」(前出の主婦)