熱中症のかかりやすさは、体調に大きく左右される。

 たとえば、風邪気味だったり、二日酔いや徹夜が続いていたり、下痢をしているなど、身体に負担が掛かっているとき、あるいは、肥満や、生活習慣病があって薬を服用している場合などには、より注意が必要だ。

 また、子どもや若者、高齢者といった年齢、身体の大きさ、仕事の種類、その日に過ごす場所などさまざまな条件によっても、かかりやすさは変わってくる。そのため、水分や塩分をどのくらい摂れば良いのかといった予防の目安は、一様ではない。

日常的な体調管理が最善の予防策

 三宅教授が薦める予防対策は、日常的な体調管理だ。

「翌日、外での活動が予定されているときには深酒をしないなど、その時々の注意は不可欠ですが、大切なのは毎日同じ条件で自分の身体をチェックしておくことです。

 朝か夜、トイレに行った後に体重を量る。体重は毎日それほど変わらないので、軽ければ脱水気味、重ければ水分と塩分の取り過ぎ(塩分は水分を保持するので)と考え、いつもより軽い(300~500グラム程度)なと思ったら、水をコップ1杯飲んでから就寝や出勤をする。

 また、血圧と脈拍を測り、普段と値が違うときには無理をしないなど気を配ると良いですね。毎日は大変だと思うかもしれませんが、熱中症が最も多い梅雨明けから9月まで、約3カ月間のことですから」

 もちろん、これを1年間続ければ、鉄壁の健康対策となる。

 かつて日本の夏は、うちわや打ち水、風鈴の音色などでしのぐことができる風情のある夏だった。近年は、そんなものではとても太刀打ちできない、暴力的な猛暑が続くことも多い。そこで暮らす私たちにも、それなりの覚悟と対処が必要である。


梶 葉子(かじ ようこ)◎医療ジャーナリスト 成蹊大学文学部日本文学科卒。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。システムエンジニアを経てテクニカルライターとして独立。その後、医療・医学分野にフィールドを移し、2002年ごろから医師・医療機関への取材・インタビューを中心に執筆活動を続ける。