年間被害額4500億円超。何の数字かわかりますか? なんと「万引き」による被害額で、1日あたりで計算すると、なんと毎日約12.6億円が被害に遭っているのだそう!

繰り返す万引きは心の病気!?

実は、この数字は表面化している額なので、相当の暗数があるはずなんです。当院に来る万引き依存症の患者は、捕まるのは平均10回に1回くらい、と話していましたし、店舗側が全件を警察に通報していたら仕事にならないという側面もあるんです」

 お店での示談や、見つかっていない万引きを合わせるとこの倍、もしかするとそれ以上の可能性もある、と語るのは、さまざまな依存症の問題に取り組む、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん。ちなみに「万引き依存症」というのは本書の造語で、衝動制御ができず万引きを繰り返す人を表していて、正式名称は「クレプトマニア」「窃盗症」という病気です。これまでにクレプトマニアについての本は疾病モデルに偏った治療が中心の内容が多く、一般の人が手にとりにくかったそう。

万引きというのは被害が見えづらい犯罪なのですが、社会に与える影響が大きい。小さな個人商店などは万引きが原因でつぶれてしまうこともあるんです。なので本書では“万引き=加害行為”であることを軸に展開しています」

 そうはいっても万引きしている人を知らないし、見たこともないので「私には関係ない」と思う方は多いはず。しかしある日突然、それまで万引きと無縁の生活をしてきた人が、気づいたら万引きをしてしまうことは少なくないそう。またある小売りチェーンでは、最初から万引きをされることを念頭におき(万引き犯に対応するとその件に店員がかかりっきりになり、仕事ができなくなるため)、予想される損失分をあらかじめ値段に上乗せし、万引きを見て見ぬふりをしているところもあるんだとか。こうなってくると、他人事ではないですよね?