パートの掛け持ちで保険料支払い増額も

 106万円の壁を超えたら社会保険料の支払いとそれによる手取りの減少をもたらすのは事実であり、一見デメリットのように感じる。

 しかしその一方で勤務先に社会保険料を半分負担してもらいながら、健康保険と厚生年金の恩恵を受けられるメリットも認識しておかなければならない。

「健康保険でいえば傷病手当金の制度があります。病気やケガで仕事を休んだ場合、給与の約3分の2にあたる給付金を最大1年6か月間もらえるというものです。厚生年金でいえば将来の年金はもちろん、万が一の際の遺族年金や障害年金も厚くなる。

 社会保険に加入しなければ国民健康保険と国民年金への加入になるので、そういった保障は得られません。106万円の壁を超えて働くほうが、長い目で見れば安心ですよね」

 このような利点を知らずに壁を超えるのを避けようとすると、逆に損を招くケースも。パートのダブルワークはその典型例だ。

 例えば、A社とB社それぞれで月収6万円を得た場合、1社単位では106万円の壁は超えず、社会保険加入にはならない。だがそこには落とし穴が。

「A、B社を合わせた年収は144万円となり、もうひとつの壁である“130万円の壁”を超えてしまいます。年収130万円以上になると、106万円の壁を超えていなくても夫の社会保険上の扶養を外れることに。

 勤務先の社会保険には入れず、自ら国民健康保険と国民年金に加入しなければならない。その金額は概算で年30万円余りになります」

 一方、C社のみで働き月収12万円を得て106万円の壁を超えたら、社会保険料は概算で年21万円余りとなる。

「負担の差は約9万円と大きい。どちらが得かは言うまでもありません」

ダブルワークで“106万円の壁”超えないほうがお得なの?

・A社 月6万円
・B社 月6万円
・C社 月12万円

A社+B社の場合

「106万円の壁」は超えないが、「130万円の壁」に該当=国民健康保険と国民年金への支払い年間30万円ほど

C社のみ

「106万円の壁」を超えるため、社会保険に加入する=社会保険料は年間21万円ほど