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ー 『風間公親』好発進、フジテレビvs日テレの構図
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ー テレビ局が狙う視聴者の年齢層

 木村拓哉(50)が主演するフジテレビ系連続ドラマ『風間公親-教場0-』(月曜午後9時)の第1話(30分拡大)が個人全体視聴率7.2%、世帯視聴率12.1%を記録した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 高い数値だった。この時間帯で1位。放送が始まったばかりの春ドラマではもちろんトップだし、3月まで放送されていた連ドラでこの数値を超えるのも『相棒21』(テレビ朝日系)しかない。ちなみに『相棒21』の3月1日放送分は個人視聴率7.6%、世帯視聴率13.2%だった。

『風間公親』好発進、フジテレビvs日テレの構図

 視聴率と質は別次元のものであるものの、『風間公親』の第1話は質も良かったと思うし、面白かった。木村扮する刑事指導官が、新米刑事の赤楚衛二(29)を厳しく指導する物語だったのは知られている通り。ベテランと若手の刑事が組む作品はイギリスが本場だが、コクや味わいで負けてなかった。

 どうしてこの視聴率だったのかを考えてみたい。「なぜ、連ドラの世帯視聴率が20%を超えなくなったのか」「世帯視聴率が15%以下でヒットと呼べるのか」といった声もあるからだ。

 まず、この世帯視聴率は現在の常識なら間違いなくヒットだ。この日の午後9時台の総世帯視聴率(以下“HUT”=テレビを観ていた家の割合)が50.0%、同10時台は41.7%だったからである。『風間公親』の午後9時台の占拠率は約24%に達していたことになる。かなり高い割合だ。

 ドラマの世帯視聴率が20%を超えなくなった一番の理由はHUTが落ちたから。20%超えのドラマが次々と誕生した1990年代後半のゴールデン帯(午後7時~同10時)のHUTは65%~70%以上あったが、今は50%程度しかない。

 HUTが落ちた理由には「観たい番組がない」「ネットのほうが面白い」といったテレビ界が深刻に受け止めるべきものもあるが、見逃せないのがハードディスク録画機器の普及。もうタイムシフト(録画)視聴は当たり前だ。

 3月20日に放送された『罠の戦争』(フジテレビ系)はタイムシフト分の世帯視聴率だけで8.3%に達していた。放送分の世帯視聴率は7.6%だから、逆転していた。合計した総合世帯視聴率は15.3%あった。

『TVer』(見逃し無料配信動画サービス)は1人が何回も再生することもあり、1再生が1人とは限らず、タイムシフト分の視聴人数のほうが遥かに大きい。ちなみにタイムシフト分の視聴率は放送から2週間後に出る。バラエティよりドラマのほうが録画する人が多く、『風間公親』も高いタイムシフト視聴率を記録するのではないか。

 次に他局の同じ時間帯の番組がどうだったのかを見てみたい。いつの時代も他局に強力な番組があると、視聴率は獲りにくい。テレビマンたちは他局の状況を「裏環境」と呼び、常に気にする。

■日本テレビ系『しゃべくり007 2時間スペシャル』(午後9時~同11時)個人全体6.8%、世帯11.7%

■テレビ朝日系『帰れマンデー見っけ隊!3時間スペシャル』(午後7時~同9時54分)個人全体5.0%、世帯8.5%、『報道ステーション』(午後9時54分~同11時10分)個人全体4.9%、世帯4.9%

■TBS系『クレイジージャーニーSP』(午後9時~同11時57分)。個人全体2.6%、世帯4.4%

■テレビ東京系『月曜プレミア8 世界!ニッポン行きたい人応援団スペシャル』(午後7時~同9時54分)個人全体3.6%、世帯6.2%、『ワールドビジネスサテライト』(同10時~同58分)個人全体1.0%、世帯1.9%

■NHK『ニュースウォッチ9』(午後9時~同10時)個人全体4.2%、世帯7.3%、『映像の世紀バタフライエフェクト』(同10時~同45分)個人全体2.1%、世帯4.1%

『風間公親』は日テレの『しゃべくり007』には迫られたものの、ほかの局は引き離した。日テレは春ドラマで1、2を争う話題作になりそうな『風間公親』の出鼻をくじくため、人気番組『しゃべくり007』を拡大したのではないか。各局ともやる戦略だ。