アメリカ(左)やタイ(右)など海外でも販売され親しまれている
アメリカ(左)やタイ(右)など海外でも販売され親しまれている
【写真】売上げが低迷してしまった“黒歴史”パッケージ

 狙いどおり、『かっぱあられ』はヒット商品となり、会社の看板商品へと成長した。だが、「よりおいしい商品」を目指すため、さらに進化させる研究をやめなかった。

『かっぱえびせん』は、『かっぱあられ』発売開始から9年後の1964年に発売されます。その間、26回の試行錯誤を繰り返したのち、作り上げたという記録が残っています。小麦製のあられというベースは変えずに、どうすればよりおいしく健康的な商品になるかを考え続けました

創業者の好物だった川えびの天ぷらが原点

 その過程でひらめいたのが、“えび”だった。

小さいころ、創業者の松尾孝はよく川えび捕りをしていて、そのえびを使った母親の天ぷらが好物でした。川えびの天ぷらのようなお菓子を作れば喜んでもらえるのではないかと思い、現在まで続く、天然えびが殻も丸ごと入った『かっぱえびせん』は誕生しました

 同商品は、キシエビ、サルエビ、アカエビ、ホッコクアカエビ(通称甘えび)など数種類の天然のえびをブレンドし、頭からしっぽまで殻ごとすべて入っている。「カルシウム入り」とうたうのは、このためだ。

えびのうまみ成分を計測し、『かっぱえびせん』に合うえびを複数種類選んでいます。そのうまみをベースにして生地を作っているんですね

 また、製法も当時から基本的に変わっていないとか。

「鮮度の良いえびを、すぐに冷凍することで、鮮度を維持したまま工場に運びます。加工する際も、生えびを粉末状にするのではなく、丸ごとすり身にして生地に練り込みます。そして、揚げるのではなく香ばしく煎ることで、生地が適度に膨らみ、サクサクした食感に仕上がるようにしています。この製法は、発売当初から変わっていません

『かっぱえびせん』の心地よい食感は、フライではなく煎るからこそ。「加工へのこだわりから、かっぱえびせんを1袋作るのに3日間はかかる」と塩崎さんが話すように、こだわりが詰まった同商品は、発売開始から6年で売り上げ100億円を超えるブランド商品へと飛躍した。