首都圏が地震で二重に危ないワケ

 能登半島地震を受け、2つの巨大地震の発生が懸念されている。東京圏を襲う首都直下地震。それとマグニチュード(以下、M)9クラスといわれる南海トラフ地震だ。

 前出の島村教授によれば、

地震には2つのタイプがあります。1つは海溝型地震。プレートが押されて変形し、ひずみが生じることで起きる地震です。東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震は、海溝型の典型です。

 もう1つは内陸直下型地震。プレートがゆがんだり、ねじれたりして発生します。今回の能登半島地震は、この直下型の地震でした」

 海溝型地震は被害の起きる範囲が広く、津波被害が甚大。直下型地震は人の住んでいる真下で揺れ、建物や家屋の倒壊を引き起こす特徴がある。

「海溝型も、直下型の地震も起こりうる二重に危ない場所、それが首都圏です。首都圏の地下では3つのプレートが重なり合っています。こんな場所は世界でもここだけ。そこへ激震が襲う日は今日かもしれないし、もっと先かもしれない。ただ、必ずくることは確かです」(島村教授、以下同)

首都圏の地下では3つのプレートが重なり合う イラスト/もりたりえ
首都圏の地下では3つのプレートが重なり合う イラスト/もりたりえ
【イラスト】世界で唯一!3つのプレートが重なる首都圏の地下の構造

 '11年3月11日に発生した東日本大震災によって、首都強震のXデーは早まったおそれがあるという。

「東日本大震災は北米プレートを東南方向に大きく動かしてしまった。それにより各所にひずみが生まれ、地震が起きやすくなったことは確か。首都圏での大地震の発生が早まるかもしれません」

 歴史を振り返ると、海溝型地震は周期的に発生してきた。

「例えば1703年に起きた元禄関東地震は、1923年に発生した関東大震災の“元祖”だといわれています。このほかにも江戸時代には十数年に1度、震度6以上の揺れに襲われていましたが、ここ100年は極端に少ない。

 時間がたつほどプレートにエネルギーがたまり、それが満ちたときに起きるのが地震です。今のペースが続くはずがないので、いつか元の頻度に戻る。東日本大震災は、そのきっかけになるかもしれません」

 東京都防災会議によれば、首都直下地震の「最悪のシナリオ」として、建物倒壊が19万4431棟、死者数は6148人と試算している。

なかでも東京の下町エリアは江戸時代に埋め立てた地域で、地盤がもろい。木造家屋の密集地も多く、地震の際に火災で延焼する危険性があります。消防車が通れないほど細い道も少なくない」

 経済への打撃も大きい。前出の米ムーディーズRMSの試算では、関東大震災級の首都直下地震が発生した場合、経済損失は48兆5000億円に上る。東日本大震災の約3倍に相当する被害額だ。

「災害は病人や妊婦、障害のある人など、いわゆる弱者に牙をむく。インターネットからの情報を得にくい高齢者への支援策も必要です」