安保関連法案が参院で審議入りした7月27日、衆院強行採決で国民から猛反発を受けた安倍首相は「わかりやすく丁寧な説明を行うよう引き続き努力する」と約束した。しかし、いくらソフトな言葉を並べてみても、最後はマッチョな強行採決で締める。12万人の国民が国会議事堂を包囲して「強行採決反対!」と叫んだものの、政府与党は今週中にも法案を参院特別委で採決する方針だ。それでもなお、法案反対を貫く菅原文子さんに怒りの声を聞いた─。

安保成立で日本全体が「基地の島」に野田聖子さんは自民党を飛び出して!

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菅原文子:『辺野古基金』共同代表、故・菅原文太さんの妻

「強行採決は初めからわかっていたこと。野党のほうが国会議員の数自体、少ないわけですし。国民の反対をなんとも思っていないから、来年夏の参院議員選挙への影響なんて考えもしないで、やってもかまわないという発想が出てくるのでしょう」

 穏やかな口調で、しかしキッパリとそう言い切るのは、昨年11月に亡くなった俳優・菅原文太さんの妻・文子さんだ。夫とともに始めた有機農業での野菜作りに励む一方、沖縄・辺野古への米軍基地移設阻止を目指す『辺野古基金』の共同代表も務める。

「沖縄の人たちは民主主義を考え抜いてきた。鍛えられていますよ。米軍基地があり、憲法より日米安保が上位にある環境で、いつも政治がそばにあったから」

 そんな沖縄の問題と安保法案は、地続きだという。

「戦争法案が成立するということは、日本全体が沖縄化するということ。自衛隊の基地は日本じゅうにある。米軍の基地や演習場も北海道から沖縄まである。集団的自衛権が効力を持てば自衛隊と米軍は一体化します。訓練も一体化する。基地の共有も増える。沖縄のように、日本列島は巨大な基地の島になりますよ」

 戦争を知る世代のひとりとして、安倍首相の“ウソ”を見過ごさない。

「安倍さんは積極的平和という言葉をやたらに使うでしょう。それじゃあ個別的自衛権のもとでは、消極的平和だったんですか? 沖縄は別としても、じゅうぶん平和だったじゃないですか。安全保障環境がどうとか、中国や北朝鮮の脅威だとか、政治家が危機をあおって脅すときにはね、裏に必ず何かがある。たいていは金儲け。アメリカは戦争を続けなければ経済が立ち行かず、背後には、世界的な軍産複合体がいます。そんな戦争の片棒を日本も担ぐのですか? それでいいのでしょうか?」

 “安倍政治を許さない”“絶対に止める”。私たちの怒りは国会周辺を越えて全国に拡散。とりわけ若者やママたちの活躍が目立つ。あのおとなしい日本人が! と、海外でも驚きをもって伝えられるほどだ。

「政治家よりも国民のレベルのほうが高い。安保反対の声が与党議員からほとんど出ないのは、それだけ今の議員のレベルが低い証拠。政治家としての理念も志もなく、勇気もない。親の地盤を継いで、たまたま受かっちゃったみたいな人たちが国会議員をやっている。安倍首相なんて典型です。ただ、彼らを選んだのは私たちでもある。それでも自民党総裁選に名乗りを上げた野田聖子さんは頑張ったと思いますよ。ほかの自民党議員は情けない。おしまいだなって、アキレました。野田聖子さんには自民党を飛び出せと言いたいわよ。女性と若者の声を代表する党の党首についてほしい。海外を見ても女性リーダーが頑張っていますよね」

 今週中の成立が見込まれる安保法案だが、あきらめるのはまだ早い。

「これからが正念場。まずは来年の参院選です。安倍政権を倒して安保法案を廃案にするには、とにかく声を上げて抵抗し続けるしかない。政治家の役割は、ひとつは国民を飢えさせないこと。安全な食べ物を食べさせること。もうひとつは、これは最も大事です。絶対に戦争をしないこと─。主人は、翁長雄志沖縄県知事の応援演説でそう言いましたが、加えて、私はよい社会を作るってことだと思う。女性や若者たちの手で、安倍さんの言う“美しい日本”ではない、もうひとつの日本を作り上げなければいけません」