■『ルノワール展』(国立新美術館)

 浦島さんによると、今年はアート展的には“アタリ年”なのだそう。今後、見逃せない企画展は?

「まずは、国立新美術館(東京都)で開催中の『オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展』(8月22日まで)。印象派時代の最高傑作『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』は初来日、『ピアノを弾く少女たち』も見られます」(浦島さん)

 “今、オルセー美術館に行っても面白くない”と言われるほど、ルノワールの代表作がこぞって見られるというから大注目。

「『ルノワール展』は、4月下旬から始まって、早くも入場者数30万人を突破しています。ルノワールは何がすごいかといえば、こだわりを持って、明るい絵しか描かなかった。

 世の中、暗いことだらけだからこそ“暗い絵なんていらない”と。だから、リウマチになって手が動かなくなっても、幸せな絵を手に筆を縛りつけて描いたとか、口に筆をくわえて描いたとか、そんな伝説が残る人なんです」(福本さん)

■『ポンピドゥー・センター傑作展』(東京都美術館)

 さらに2人が挙げたのが、東京都美術館で開催中の『ポンピドゥー・センター傑作展』(9月22日まで)。

「“ポンピドゥー・センター”とは、パリにある有名な近代美術館。面白いのが、1906年から、ポンピドゥーが開館される1977年まで“1年に、1作家、1作品”を選び、年代を追いながら展示されています」(浦島さん)

 いろんな作家の、いろんな作品が一気に見られ、フランス美術の流れもばっちりわかるという。

「ピカソの『ミューズ』、マティスの『大きな赤い室内』を筆頭にシャガール、デュフイなど有名な作家の作品がいっぱいの、いいとこどり。あのポンピドゥー・センターが所蔵している絵ですから、これはいいに決まっています。そして、近代の作家がまた面白い。すごく突飛もないことをする人が、どんどん出てきますから」(福本さん)

 福本さんのイチオシはデュシャン。

「この人は、レディーメード……既製品で芸術をやるんですよ。新品の男性用便器を買ってきて自分のサインを入れて『泉』と名づけ、作品として出したら、もう大センセーショナル(笑)。

 今回は『自転車の車輪』をぜひ見てほしいですね。そして、忘れちゃいけないのがクリスト。とにかく物を梱包するアートをやった人です。今回見られるのは小さなサイズなんですが。建物を梱包したり、あげくの果てには海岸線を梱包したり……。そういうワケのわからない作家の作品もいっぱい見られます」