泉田裕彦知事の出馬撤回で注目を集める新潟県知事選の投票日が今週末に迫ってきた。脱原発を掲げる「泉田知事の路線を継承する」と約束した米山隆一氏と、自公公認の元新潟市長・森民夫氏の両候補による一騎打ちだ。この結果次第で、原発再稼働が加速する懸念が広まっている。

 NPO法人『環境エネルギー政策研究所』の飯田哲也所長は指摘する。

「東電のメルトダウン隠しを暴いた福島第一原発事故の真相究明、地震の揺れを低減させる緊急対策所『免震重要棟』の設置を求めるなど、泉田さんの功績は大きい。元経産省の官僚で、相手の手の内がわかっていたからできたという面もある。鹿児島の三反園知事が川内原発の停止を九電に要請していますが、はたしてどこまで頑張れるか」

 その川内原発では1号機が、今月6日から、福島第一原発事故を受けて作られた新規制基準に基づき再稼働した原発として全国初の定期検査に入り、運転を停止した。このため現在、国内で稼働中の原発は、川内2号機、伊方3号機(愛媛県)の2基だけ。

 しかし、全国の原発では再稼働に向けた審査を申請中だ。本来であれば廃炉になるはずの老朽原発も含まれ、さらに新設・増設工事、新たに造る計画まで続々と進められている。

「プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使う、プルサーマル発電の原発から先に動かそうとしています。今年8月に再稼働した伊方3号機、新潟の柏崎刈羽6・7号機もそう。新潟で森知事誕生となったら次の再稼働は柏崎でしょう」

プルトニウム保有のためのアリバイ

 日米原子力協定によって、日本は例外的にプルトニウムの利用が認められている。だが、プルトニウムは核兵器に転用できるため、大量に持っていれば国際社会の批判を招き孤立しかねない。

「そこでアリバイに使おうというわけです」

 もうひとつの使い道が、1兆2000億円もの予算が投じられてきた高速増殖炉『もんじゅ』だ。

「原発で使った使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉という原子炉の燃料に再利用すれば、発電しながら使った以上の燃料を生み出せる……。そんな夢のような計画でしたが、もんじゅは運転開始の翌年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、運転停止の状態。プルトニウムを取り出すための六カ所再処理工場も失敗続きです」

 実用化に至ることなく今年、もんじゅは廃炉へ動き出したが、国は高速炉の研究継続を明言している。