なぜ、どのように事故が起きたのか? どうすれば住民の安全を守れるのか? その問題に向き合わないまま国策として進められてきた原発に対し、自治体から強烈なカウンターが。函館市が国に、原発新設の差し止め訴訟を起こしたのだ。

原発新設の凍結を求めて国を提訴、函館市が異例の裁判を闘うワケ

 原発建設の凍結を求めて、自治体が国と電力会社を訴える─。史上初の裁判は14年4月に始まった。

 建設中のJパワー(電源開発)大間原発(青森県大間町)は、津軽海峡を隔てて函館市まで最短23キロ。両者の間にさえぎるものはなく、国際海峡である津軽海峡は誰もが自由に航行できる。領海は3カイリ(5・5キロ)と狭く、テロの恐れも危惧されている場所だ。「世界一危険な原発」と呼ぶ人までいる。

 工藤寿樹市長は裁判について、「勝算はある」と自信をのぞかせる。

「こちらは長期戦も覚悟でやっている。裁判が長引くほど原発の建設工事は進められないのだから、好都合。訴訟費用は寄付を募った。全国から5500万円ぐらい集まっています」

 函館市の主張は明快だ。「このまま原発が作られたら、自治体として住民の安全を守れない」ということに尽きる。

 放射能は同心円状に飛ぶわけではなく、事故被害は広範にわたる。万が一の事態が起きれば、原発立地自治体の問題だけではすまないことは、福島第一原発事故をとおしてわかった「事実」だ。

建設中の大間原発。危険性が指摘されるフルMOX燃料を使う原発は世界初
すべての写真を見る