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 65歳以降も働く人が増えている昨今。

「求人数は昨年に比べて増加し、ここ数か月は特に急増しています」と教えてくれたのは、40~60代向け求人サイト『マイナビミドルシニア』編集長の三好さん。

シルバー求人は増加中!探し方次第で世界が広がる

「一番の理由は、若手人材が採用しにくくなったこと。その分がシニア世代の採用につながっているのでは」(三好さん、以下同)

 コロナが落ち着き人手不足の業種が多いというニュースを耳にする。

飲食系は特に、コロナ禍で職を失ったり、収入が不安定になった人が多かったため、若者から敬遠されるようになってしまった。コロナが明けてからも、サービス業に若者が戻ってはきませんでした」

 そこで企業側が目をつけたのが、ミドル層とシニア層。求人職種の幅も広がっている。

「特に女性は、やりがいや孤独回避を重視する傾向が強く、給与が最低賃金レベルでも、家から近い場所で、人とつながりを持ちつつ働きたいと言った人が多いようです」

 横浜市シルバー人材センターの阿部さんによると、

「希望職種としては事務系が男女問わず一番人気です。しかし企業側からの依頼数が少ないので、希望には沿えないことも多い」(阿部さん)

 つまり、シルバー求人は充実してきているものの、上手にマッチングできていない人も多いということ。キャリアカウンセラーの上村さんからは、こんなアドバイスが。

「自分自身の価値を再発見し、お金を稼ぐ。そして、社会とつながることで老後はより豊かになります。“得意なことなど何もない”と思う必要はありません。まずはトライをしてみては」(上村さん)

 具体的な探し方、選び方をご紹介!

シニア女性に人気の仕事ランキング
1位 オフィスワーク
2位 販売・接客・サービス
3位 軽作業・製造・清掃
4位 医療・介護・福祉
5位 教育
※マイナビミドルシニア調べ

ネットはもちろん生活圏内の情報も敏感に

 シルバー世代の転職活動を斡旋する企業も年々増えている。マイナビミドルシニアをはじめとする求人サイトや、派遣業界などもシニアに特化したサイトが多く存在する。

「対象がシニアでも、ほぼ100%ネットで情報を得る時代です。また、応募の履歴書はもちろん、その後の採用までのやりとりも、電話ではなくすべてネットで完結することも多い。

 よい情報を得られるようにするためにも、パソコンなどでのリサーチスキルを磨いておくことも重要です」(三好さん)

 また、地元就職志向だからこそ、身近にどんな会社があるのかにアンテナを張っておくことも貴重な情報源だと上村さん。

「地方都市などでは、コールセンターや物流センターがどんどんできている地域もあります。自分の生活エリア内で新しくできた会社や、どんな会社があるのかを積極的に知っておくことで、まったく知らない人よりも、半歩先を行くことができるかもしれません」

高齢者の雇用形態別就業者推移 ※出典:高齢者の雇用形態別推移(役員除く)/労働力調査2021年(総務省統計局)

仕事以外の楽しみもあり、70代以降も生き生き

 社会とのつながりを作れれば、お金はお小遣い程度でいいという方に向いているのがシルバー人材センターだ。

「定年延長などの影響で、最近は60代の方は減少し、70代が6割を占めています。体力レベルに合わせたお仕事の紹介を心がけていますし、それと同時に、センターは社会とつながり、生き生きと過ごしていただくための団体でもあります。

 サークル活動やボランティア活動なども行っていますので、気軽に利用してほしいですね」(阿部さん)

 年々健康寿命も延びてきている昨今。お金や、健康のためにも、また社会貢献のためにも“働く意欲”をうまく現実に当てはめることが重要だ。

仕事が見つかる!続く!楽しめる!極意10

極意1:今日の自分が一番若い!行動は“1日でも早い”ほうがいい

 仕事探しの基本は、思い立ったら早く動くこと。

「もう少し待てばいい求人が出てくるかも……と考えるよりも、1歳でも若いほうが、選択肢は間違いなく広いです」(三好さん)

 例えば「65歳まで募集」と求人広告に書いていても、企業側が採用後長く働いてほしい場合は、応募者の年齢も当然加味される。

「職種によっては70歳でも雇用されますが、一般的に62歳と61歳の人が同じ職種の募集できた場合、年齢が一つの基準になることもあるのです」(三好さん)

極意2:ミスマッチを防ぐためにも客観的な自己分析にトライ

 仕事探しを始める前に、技術的なスキルだけではなく、自分の性格や働く目的なども、客観的な視点で把握しておくことが重要。

「自己分析、自己理解をできているかどうかで、仕事が決まってから楽しく働けるか、続けられるかが変わってきます」(三好さん)

「視点を変えることで仕事選びの間口が広がるとはいえ、嫌な仕事を続けるのは難しいと思います。そこは本音で、ご自身の求めているものに近い仕事を見つけていただくのがいいと思います」(阿部さん)

「自己アピールは必要ですが、“できます、大丈夫です”といい顔をしすぎるのは、後でトラブルになりかねません。自分のキャパと現状をきちんと把握し、素直に申告することが大切です」(上村さん)

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極意3:手書きは美徳にあらず履歴書はパソコンで

「熱意や人柄を伝えるため、履歴書は手書きしたほうがいい」という考えは、今の時代は通用しない可能性大。

「最近はインターネットでの応募も増えていますし、履歴書の作成はPCが主流です。手書きのほうが心がこもっているというのも間違いではありませんが、達筆だから高評価とする担当者は、おそらくごくわずかでしょう。

 事務職などは特に、PCを使ってワードなどで作成したほうがスキルのアピールになります」(三好さん)

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極意4:フルタイムより稼げることも!? フレキシブルな“ダブルワーク・トリプルワークが狙い目

「まとまった収入を望むならフルタイム一択」と考えがちだが、働き方を工夫すれば時短や週数日勤務のほうが有利になる場合も。

「年金受給前の方ですと、平日フルタイム勤務で土日休みを希望される方が多いですが、実は週3日とか、朝だけ、夜だけ、といった仕事のほうが、同じ業種でも時給がよかったりするんです。

 当サイトの求人でも、時給が数百円アップするケースが実際にあります。これを利用して、うまく組み合わせて仕事を掛け持ちすることで、トータルの収入を上げることも可能です」(三好さん)

 しかもダブルワーク、トリプルワークを想定した求人は増加傾向だとか。

「マンション管理や清掃などは早朝のみ、夕方のみといったケースが多い。これまでフルタイム勤務以外の求人を対象外と考えていた方も、選択肢が広がります。人間関係のしがらみを避けたいという方にもおすすめです」(三好さん)

極意5:目先の稼ぎだけでなく“続けられる仕事”を見つける

 年金受給までを無理なく乗り切るには、“継続雇用”がキーポイントに。

「ご自身の家庭はいまどれぐらいの金額が必要なのか、何歳まで働こうとしているのかを明確にすることで、仕事を選ぶ目線も変わってきます。

 もし短期間で稼ぐ必要がないなら、無理のないペースで70歳以上まで続けられる仕事を選択するほうがいいのではないかと思います。企業側が求めているのも、長期で働ける人です」(三好さん)

極意6:職種への強いこだわり“〇〇であるべき”を捨ててみる

「人気の事務系など希望の職種1本のみですと、登録後もなかなかお仕事をご紹介できない場合も。これまでの経験にとらわれず、新しいことに何でも挑戦してみたいという姿勢の方は、すぐに仕事が決まることも」(阿部さん)

「最低20万円は必要、30万円ないとやっていけない、など金額縛りで探す方も意外に多いです。本当に必要な金額を洗い出してみて、まずは選択肢を広げることが重要です」(三好さん)

極意7:スキルアップにつながる“無料セミナー”などを受けてみる

 スキル不足を自覚している、または未経験のことにも挑戦したいという人は、自ら動いて備えることが大切。セミナーなどで、事前知識を得ることで、自分に本当に向いている仕事なのかを改めて検討することもできる。

「都や県の他、各地のハローワークが主催し、無料で受講できる求職者支援制度でパソコン講座などを活用し、ご自身のスキルアップを考えてみては」(上村さん)

「当センターでは会員向けに、家事援助サービスや除草作業などの技能講習会や、安全講習会を行っています」(阿部さん)

極意8:“朝活”を生かす働き方で生活の充実度を上げる

 働く目的を変えてみることで、お金だけではない充実感を得られることも。

「求人数が多い清掃の仕事は、午前中に完了する案件が多いので、自分の時間を作りやすく、ルーティンにしやすいという側面が。また、身体を動かすことで、健康面のメリットも期待できます。

 会員の方からも、最初は事務が希望だったけれど、やってみたら続けやすかった。身体の調子がよくなったといった声も聞かれます」(阿部さん)

極意9:世の中のニュースに興味や疑問を持つ

 どんな仕事を目指すにしろ、今の世の中に無関心になってしまうのはNG。

「トレンドやニュースに敏感に反応すること、常に好奇心を持つことは、すごく大事です。例えば物価上昇のニュースなら、なぜ上がるのか?何が影響しているのか?というように、連鎖して考えることが、自分の知識や生活を豊かにしてくれます。技能的なスキルだけでなく、自分自身のブラッシュアップも心がけて」(上村さん)

極意10:おしゃべりとは違う“コミュニケーションスキル”を磨く

 女性にとって、武器にも落とし穴にもなりうるのが、コミュニケーション。

「女性のコミュニケーションスキルは企業側も非常に注目しています。しかし、注意したいのが、おしゃべりと混同してしまっているケース。その場で求められていることをしっかり把握して」(三好さん)

「自分の話したいことを一方的に話すのではなく、相手との距離を見極めて」(上村さん)

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上村眞智子さん●キャリアデザイン工房(有)オフィスUEMURA代表、(社)生涯キャリアデザイン研究所理事。キャリアカウンセリングをはじめ、キャリア教育セミナー、行政機関・事業団体の就職支援セミナーなど幅広く活動。
教えてくれたのは……上村眞智子さん●キャリアデザイン工房 (有)オフィスUEMURA代表、(社)生涯キャリアデザイン研究所理事。キャリアカウンセリングをはじめ、キャリア教育セミナー、行政機関・事業団体の就職支援セミナーなど幅広く活動。
三好裕さん●40~60代向け求人サイト『マイナビミドルシニア』編集長。新卒・中途の企業向け採用支援、再就職支援事業のコンサルタントを経て2016年、マイナビミドルシニアの立ち上げに参加。2022年、同編集長に就任。
教えてくれたのは……三好 裕さん●40~60代向け求人サイト『マイナビミドルシニア』編集長。新卒・中途の企業向け採用支援、再就職支援事業のコンサルタントを経て2016年、マイナビミドルシニアの立ち上げに参加。2022年、同編集長に就任。
阿部航さん●横浜市シルバー人材センター総務課事業企画担当主事。シニア世代向け、企業向けにセンターの広報活動、事業管理、講習会の企画・開催、会員の安全管理等を担当。センターの年間相談数は2000~3000人。
教えてくれたのは……阿部 航さん●横浜市シルバー人材センター 総務課事業企画担当 主事。シニア世代向け、企業向けにセンターの広報活動、事業管理、講習会の企画・開催、会員の安全管理等を担当。センターの年間相談数は2000~3000人。

(取材・文/當間優子)

 

高齢者の雇用形態別就業者推移 ※出典:高齢者の雇用形態別推移(役員除く)/労働力調査2021年(総務省統計局)

 

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