
日本人が大好きな米。しかし糖質制限ダイエットなどの影響もあり、控えるという人も出てきた。
主食が「白米」それだけで「リスク」
「白米は精製によって食物繊維やミネラル・ビタミンの大半が削り取られたもの。ほとんどが糖質なので、食べると血糖値の急上昇を招きます。血糖値の高い状態が続くと糖尿病のリスクが高まったり、血管の壁が傷つくことにより動脈硬化になりやすくなったりします」
と話すのは、予防医学に詳しい医師の山田知世先生。
「それに、血糖値が高い状態は美容の大敵である『糖化』のダメージを受けやすくなります。さらにはインスリンというホルモンが過剰に分泌され、脂肪が蓄えられやすい身体になるんです」(知世先生、以下同)
白米好きにはなんとも耳が痛い話が次々と……。
「主食のポイントは、“精製されているかどうか”。白い小麦粉も白米同様、食物繊維などの貴重な栄養素がほとんど削り取られています。市販のパンの大半は輸入された精白小麦粉が原料で、残留農薬や添加物の問題も。
うどんやパスタなどの麺類も減らしたいですね。精製された炭水化物食品は口当たりがよくて食べやすいのですが、栄養学的には“抜け殻”。日常的にとるべきなのは、“茶色い炭水化物食品”です」
全粒粉のパンやパスタ、そば粉100パーセントのそば。そして何よりの推しは「玄米」だそう。
ぬかや胚芽が残ったままの玄米には、マグネシウムをはじめとしたミネラルやビタミン、抗酸化物質のファイトケミカルといった、アンチエイジング効果の高い栄養素がたっぷり。食物繊維も多くて食後の血糖値が上がりにくく、身体への負担が少ないという。
さらに玄米特有のファイトケミカルといえば、脂肪の吸収を抑え、高脂肪食への依存を断ち切ってくれる成分、「ガンマオリザノール」が豊富に含まれる。高脂肪食とは肉類や揚げ物に代表されるもの。食べすぎると血管を老化させて生活習慣病を引き起こすほか、腸内環境を悪化させるという。
「強烈なうまみを脳が記憶するのでもっと食べたい、また食べたいという脳依存を引き起こしやすいんですが、玄米を食べているだけで自然と欲しなくなることが研究によって証明されています。
ガンマオリザノールは血糖値を調節する膵臓(すいぞう)の働きをサポートするため、糖尿病の予防や改善にも効果的。玄米食を習慣にするだけで糖尿病が完治するケースもあります」

1日1回は玄米の冷やごはんを
玄米が身体にいいことはわかったが、それでもホカホカ白米の誘惑は強い。
「だったらせめて、冷ましてから食べましょう。それだけでも健康にかなり貢献できますよ」
冷ますといいのはなぜか。そのポイントは「レジスタントスターチ」という成分だ。
「お米の糖質は炒飯によって吸収されやすくなりますが、冷ますことで食物繊維のような性質に変化するんです。それがレジスタントスターチです」
レジスタントスターチは消化されずに大腸まで届いて腸内細菌のエサになり、その結果、腸内細菌は短鎖脂肪酸という物質をつくる。これが腸内環境を整え、免疫力向上や大腸がんの予防効果につながる。

ほかにも心身のさまざまな健康効果を生みだす。腸が整うと聞けば便秘解消になりダイエットにもいいというのは当たり前の話だが、心身のアンチエイジングにもなくてはならない条件なのだ。
冷ます際は自然に温度を下げること。知世先生は炊いた玄米をお皿に平たく広げ、常温になるまで冷ましている。玄米特有のにおいが苦手な人も、冷やごはんにすれば気にならなくなるメリットも。
「1日1回でもいいので、玄米の冷やごはんに切り替えられるといいですね。炊飯時に塩と酒を加えればうまみもアップ。慣れないうちは白米や雑穀米、もち麦を混ぜて炊くのもいいです。3分づきや5分づきなどもありますが、できれば未精製の玄米を。玄米は農薬が残りやすいため、無農薬のものを選びましょう」
ちなみに、玄米を炊く前に水にしっかりつけておけば、玄米に含まれる貴重な栄養素を存分に摂取できる。


みそ汁+亜麻仁油で最強の健康食
玄米ごはんとみそ汁。これこそが日本人の「究極の食事」の基本だと知世先生。食の欧米化が進むなか、かつての日本の伝統食は健康において非常に理にかなっているという。
みそは大豆発酵食品でミネラル豊富。みそ汁に旬の野菜や芋類、海藻やきのこなどを加えれば、それだけで立派なおかずだ。栄養価も格段に上がり、腹持ちもよくなる。
「みそ、漬物、納豆に含まれる発酵微生物は腸内環境をよくするのに欠かせないもの。玄米とあわせて毎日の食事の主役にしましょう」
そこに加えてほしいと知世先生が力説するのが「亜麻仁油」。オメガ3脂肪酸が豊富で健康によい油としてよく見聞きするようになった。とはいえ低品質のものも多く出回っているそう。有機栽培された亜麻の種子を低温で搾り、中身の見えない完全遮光の真っ黒なビンに未精製のまま詰められたものを選ぶのがポイント。
加熱NGなので生のままサラダやできあがった料理に回しかけるほか、知世先生のイチオシが亜麻仁油納豆。よく混ぜるとトロッとしておいしくなり、子どもも喜んで食べるとのこと。
「何をどう食べるかを気にすれば、体調がみるみる変わり、心も元気になります。1日1回は玄米の冷やごはん、具だくさんみそ汁、そして亜麻仁油納豆。今日から実践してみてください」

教えてくれたのは……山田知世先生●医師。杏林予防医学研究所研究員。一般社団法人日本幼児いきいき育成協会(JALNI)理事。京都大学医学部附属病院で研修医修了後、同糖尿病・内分泌・栄養内科専攻医を経て、現在は書籍の執筆、監修、動画出演などさまざまなメディアで活躍中。3児の母。近著に『細胞レベルで老けない!最強の食事』(宝島社TJMOOK)などがある。
取材・文/井上真規子