
毎日畑仕事をし、収穫した野菜で3食自炊する、時に趣味にも夢中……。御年93歳のきのえおばあちゃんの日常生活をYouTubeで見ると、ほっこりする人も多いはず!
孫のひきこもりがきっかけでスタート
動画を撮影、編集するのは、孫のひろさん。YouTubeは、ひろさんから声をかけて始まった。
「当時、僕に持病があり、自宅にひきこもり状態だったんです。そんな僕を兄が気にかけてくれて、おばあちゃんの毎日をYouTubeで紹介してみたらどうか、と提案してくれたのです。
僕も社会との関わりを持てるし、それがおばあちゃんとの思い出の記録になるならやってみようと思い、僕からおばあちゃんに相談してみたら、おばあちゃんがいいよと言ってくれて、それでスタートしました」(ひろさん、以下ひろ)
いくらかわいい孫の頼みとはいえ、きのえおばあちゃんに戸惑いはなかった?
「毎日、孫が家に閉じこもっていたから、少しでも元気になってくれればいいと思い、最初はちょっと恥ずかしかったけれど、思い切ってやることにしました」(きのえおばあちゃん、以下きのえ)
実は、きのえおばあちゃんとひろさんは、畑を挟んで同じ敷地に住む近居家族。もともと、きのえおばあちゃんは29歳のときにこの土地に嫁ぎ、リンゴやブドウなどを大規模に作る果樹農業をしながら、1男1女を育てた。娘にあたるのが、ひろさんのお母さんだ。
ひろさんは男5人兄弟の4番目。小さいころから、きのえおばあちゃんとはよく会っていたけれど、YouTubeを始めてからは、きのえおばあちゃんの一番身近な存在となった。
ところでひろさんは、きのえおばあちゃんのどんな毎日を紹介したいと思った?
「うちのおばあちゃんは年齢のわりに、ひとりで何でもやっているなと思っていて。ですから、おばあちゃんの元気な様子や活発なところ、おちゃめなところを動画でお届けできたらいいなと思って配信しています」(ひろ)

引っ込み思案のおばあちゃんが大変身
実際、YouTubeを始めてしばらくは、きのえおばあちゃんに変化は見られなかったが、チャンネル登録者が1万人を超えたころから、周りが変わり始めた。
「大勢の方に見ていただくようになり、『こんなおばあちゃんになりたい』なんて、うれしいコメントもたくさんいただいて、そこからおばあちゃんも変わりました。生き生きして、前向きに毎日を過ごすようになったと思います。僕の母から見ても、おばあちゃんの変わりようはすごかったようで、まるで別人になったみたいと言っていました」(ひろ)
もともと引っ込み思案で、人前でしゃべることも苦手。こんなふうになるとは、夢にも思わなかったと、きのえおばあちゃんも話す。
「動画を見た方から、いろいろ褒め言葉をいただくのがうれしいですね。生きがいというか、人生に張り合いが出てきました」(きのえ)
よく動きよく食べる、これが健康の秘訣
シャキッとした姿勢のきのえおばあちゃんを見て、やっぱり気になるのが健康の秘訣(ひけつ)。大きな病気をしたことはなく、病院にもほとんど行ったことがないとか。
「健康の秘訣は、労を惜しまないで、なるべく動くことですね。畑仕事もしていますし、自分流ですがラジオ体操の第一は、ほとんど毎日欠かさずやっています。あとは3食きちんと食べて、よく寝ること。当たり前のことをしているだけで、特別なことは何もしていませんよ」(きのえ)
動画にはバランスのとれた食事がたくさん出てくるけれど、毎食を用意するのは面倒ではないのだろうか。
「あまり面倒とは思いませんね。なるべくバランスよく栄養がとれるように、少しは考えています。とにかく白いご飯が大好きです。朝起きて、おなかがすいていることも、ありますよ」(きのえ)
果樹農業は83歳で引退したが、今でも30種類ほどの自家用野菜を栽培している。春から秋にかけては畑仕事が忙しいが、畑仕事が休みになる冬場は家の中でピアノを弾いたり、ナンプレを解いたりして趣味を楽しんでいるそうだ。きのえおばあちゃんの今、一番の楽しみは?
「友達との集まりですね。月に2回は、ふれあい講座や元気広場といった年寄りの集まりに参加して、ゲームや折り紙なんかをしています。あと、週に1回は回復支援センターに行き、運動をしています」(きのえ)
お年寄り同士の交流も、きのえおばあちゃんの元気のもとになっているよう。
「年をとると、話し相手がいるのはいいことですね。あとは、周りに頼りになる人がいること。健康ならいいけど、ちょっと病むと本当に心細いですからね」(きのえ)
きのえおばあちゃんにとって頼りになるのは、やっぱり家族。YouTubeを通して、家族の絆はより強まった。「100歳までYouTubeを続けたい」と言う、きのえおばあちゃん。その姿をお手本にして、健康長寿を目指したい!
「長寿ごはん」いろいろ
自分で作った野菜で自炊
・定番料理
カレー、天ぷら、茶わん蒸し、ハンバーグ、ホイコーロー、唐揚げ
「カレー」はひき肉を使うのが、きのえおばあちゃん流。辛口のルーと甘口のルーをブレンドして、絶妙な辛さに仕上げる。畑からとってきたばかりの季節の野菜を「天ぷら」にすることも多い。小麦粉を水で溶いた衣をしっかりつけて、カラッと揚げる。

・ひろさん、大好き料理
ひろさんの大好物は「ホイコーロー」と「唐揚げ」。キャベツと豚肉を炒めたホイコーローは、タレから手作り。白いご飯がすすむ! 唐揚げは、カレー粉を混ぜたカレー味や、玉ねぎと鶏肉を合わせた天ぷら風など、きのえおばあちゃんのオリジナルレシピ!

きのえおばあちゃんのある日の1日
〔6:00〕起床・畑仕事
朝起きたらすぐに、自家用野菜を育てている畑をひと回り。食べ頃なものを収穫し、みそ汁の具やあえもの、漬物にして朝食のおかずにする。特にみそ汁は、野菜をたっぷり入れて、具だくさんにしている。
〔7:00〕朝食・朝の体操・昼食準備
ラジオ体操のあとは新聞に目を通したり、掃除をしたり。テレビはほとんど見ないけれど、気になるドラマがあれば見る。老人会の集まりで出かけることも。いろいろな用事を済ませるうちに、あっという間にお昼!昼食の用意に取りかかる。

〔12:00〕昼食・のんびり、または畑仕事・夕食準備
昼食を食べたら、たっぷり昼休み。2時間ほど昼寝をする。春と秋はそこから畑仕事をして夕食準備。夏は先に夕食準備をして、涼しくなる4時か5時ごろから畑へ。畑仕事のない冬場は、家の中でピアノを弾いたり、ナンプレを解いたり、趣味を楽しむ。
〔19:00〕夕食
ご飯、みそ汁、メインに肉か魚、野菜料理など、栄養バランス抜群。夕食を食べたあとは、のんびり過ごす。8時ごろにお風呂に入り、9時には就寝。早寝早起きが、きのえおばあちゃんの基本のルーティン。
〔21:00〕就寝

きのえのプレイランド●93歳のきのえおばあちゃんの毎日の暮らしを、孫のひろさんが撮影、編集している大人気チャンネル。現在、登録者数は12.4万人。きのえおばあちゃんが作る料理を中心に、週に4回、動画を公開している。[YouTube:@kinoe_playland]
取材・文/池田純子