生活の変化や生活習慣の乱れ、ストレスの増加によって40代以降の突然死が増えているという。
突然死を招く3つの要因
「突然死を招く要因は、大きく3つ。1つ目は動脈硬化です。動脈硬化とは、血管壁にコレステロールなどが付着し、血管が硬くなった状態。その結果、血管が狭くなったり、血栓(血液の塊)ができたりして、血管を詰まらせて脳梗塞などを引き起こします。
2つ目は、心臓の冠動脈が突然けいれんを起こすケース。けいれんが30分~1時間続くと、心臓に送る血液が遮断されて心筋梗塞で死に至ってしまう。
3つ目は不整脈による心室細動です。心臓の筋肉が分厚くなる肥大心筋症の人は、不整脈からの心室細動が起こりやすく注意が必要。最近は、ウイルス性の心筋炎による不整脈も増えています」
そう解説するのは長年、心臓治療にあたってきた杉岡充爾先生。では突然死を防ぐには、一体どうすればよいのか。まず「血管を強くすること」と、杉岡先生は断言する。
「血管は全身にあるので、あらゆる病気の原因になります。心臓が詰まれば心筋梗塞、脳の血管が詰まれば脳梗塞、頭の血管の末梢がポツンポツンと詰まると認知症に。
ですから血管を強くして、血液がサラサラと流れるようにしておく、すなわち『血管をツルツル』にしておけば突然死を防ぐことができます。“血管は年とともに老いる”といわれますが、生活習慣を変えるだけで、いくらでも抗えますよ」(杉岡先生、以下同)
日常に運動を取り入れ血管をツルツルに
「ツルツル血管」の鍵となるのは“NO(エヌオー)”だ。NOとは、血管内で分泌される一酸化窒素のこと。
「NOには血管を広げたり、弾力性を高めたりする働きがあるので、NOの分泌が増えると血管は丈夫になります。そのために最も有効なのが“運動”です。おすすめは有酸素運動、緊張脱力体操、ストレッチ。
まず、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動をすると心拍数が上がり、血流スピードが速くなる。そうすると、NOも分泌されるようになります」
初めから長い時間をやろうとするとおっくうに感じるため、短い時間から徐々に。
「5分や10分行うだけでも、それなりに効果があります。また、緊張脱力体操というのは、筋肉をグッと緊張させて、そのあとに脱力する動き。例えば、肩を思い切り上げて、ストンと下げる。
そうすると筋肉内の血管も収縮して、血液が流れやすくなってNOも増えます。さらにストレッチで筋肉と血管を収縮させるのも、血流スピードを速くして、NOの分泌につながります。この3つの運動は、日常の中でうまく取り入れてほしいですね」
とはいえ、運動のしすぎは禁物だという。
「フルマラソンや全力疾走など、ハードな運動をすると、身体の中の酸素が不足し、反対に身体を酸化させる活性酸素が増えていきます。これは血管にとってはマイナスです。
血管によいとされる運動は、軽く息が切れる程度。心拍数が『220−年齢×0.7』を超えない数値です。50歳なら、185ですから、これを超えると、やりすぎのサインですね」
食事やストレスケアにも目を向けよう
血管をツルツルに保つには、“食事”も重要だ。
「動脈硬化は身体の酸化によって引き起こされますから、酸化を進めない食事、いわゆる抗酸化力の高い食材をとるとよいでしょう。その代表格がビタミンA・C・E(エース)を含む食材です。
いずれも多く含んでいるのはブロッコリーですが、野菜は全般的におすすめです。反対にNGなのは、身体を酸化させるもの。それに炭水化物が加わると、さらに血管の酸化が進みます。具体的にはフライドポテトやドーナツなど。
また、糖分もよくありません。野菜ジュースは一見、栄養がありそうに思えますが、実は野菜の繊維がほとんど除かれた糖分の多い飲み物ですから、注意しましょう。
果物も身体によい栄養成分はたくさんありますが、スイカや梨、桃などは糖分と水分の多い単なるジュースのようなもの。せっかく食べるなら酸っぱめで、繊維質の多いものがベターです。いちばんのおすすめはブルーベリー。冷凍ブルーベリーでもOKです」
また、“ストレスケア”も忘れてはいけない。
「何ごとも完璧主義になりすぎず、大らかに構えることが大事です。ネガティブになりそうなときは瞑想(めいそう)や深呼吸をしてみましょう。深呼吸は息を吸う時間よりも吐く時間を長くすること。3秒吸って6秒吐く、あるいは4秒吸って8秒吐く、そうすると血管の負荷も軽くなるでしょう」
太りやすい更年期世代は小食を心がけよう
更年期世代の女性が気をつけたいのは“肥満”だ。
「肥満は動脈硬化を招く要因になります。特に更年期の女性は代謝が落ちやすく、太りやすいので、なるべく胃を満腹にしないようにしましょう。腹八分目にして、食べすぎない習慣を早めに身につけておくとよいですね。
前述のように、身体を動かすことも忘れずに。運動は何歳から始めても遅くはありません。今日がいちばん若い日です。もう年だからと思わず、とにかくやろうと思った日から始める。さらに新しいことにチャレンジするのもいいですね。それ自体、認知症の予防につながります。同じ生活を続けていると、脳が老いていきますから」
血管をツルツルにする習慣こそ、若さをキープする秘訣なのだ!
杉岡先生も実践!血管をツルツルにする習慣
「私自身、運動は意識して習慣にしています。朝起きたら、30分ほどストレッチをし、週末は2、3時間のテニス。筋トレもしていますよ。食事面では油ものをとらない、を基本に、腸内環境を整えたり、肝臓の力を高める“解毒”も大事にしています。
特にブロッコリーは、肝臓の解毒作用が高いので、積極的にとるようにしていますね。さらに睡眠。脳の老廃物を取り除くには寝るのがいちばん。毎日7、8時間の睡眠はとるようにしています」
教えてくれたのは……杉岡 充爾先生●すぎおかクリニック院長、医学博士。千葉県船橋市立医療センターの救急医療に約20年間携わり、約1万人の心臓治療にあたる。2014年に「すぎおかクリニック」を開院。顧客満足度100%の人気クリニックとして、メディアにも数多く出演。YouTubeチャンネル「ドクターすぎおかのスーパー健康サポートTV @ すぎおかクリニック千葉県船橋市」はチャンネル登録者数16万人と多くの人の支持を得ている。
取材・文/池田純子
