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 子育ても一段落し、少しずつ自分の時間が取れるようになる50代以降。でも、いざ何かしようと思っても、気軽に誘える友達がいないことに気づき、孤独を感じる人も少なくない。地域や職場での人間関係が希薄になったともいわれ、SNSなどの顔を合わせないコミュニケーションも増えている現代社会の影響も。

人生後半でもつながる新たな人付き合い

 そんな寂しさを払拭しようと、熟年世代になってから、単なる知人より一歩踏み込んだ“友人”を求めるのは、難しいことなのだろうか。

むしろ50代、60代こそ、新たな友達ができやすいと私は思います。さまざまな経験を乗り越えてきたことで、共感する話題も豊富ですし、“ママ友”のように子どもを通じた関係ではないので、本来の自分のキャラクターで付き合えるのでは

 そう語るのは、コミュニケーション心理学を用いて人付き合いの悩みに救いの手を差し伸べているカウンセラーの泉野晶代さん。

 子育て、趣味、仕事……過去の人生での経験の引き出しが多いからこそ、共通の話題が見つかり、新たな縁となることも。

 そこで、感性の似た人と出会い、質のいい縁をつなぐためには、自分自身も心がけてみるべきことが。

自分が“楽しい”と思える時間を見つけてみましょう。カラオケだったり、推し活だったり、もの作りだったり。そうした趣味のフィールドでつながった人たちと、まずは一定の距離をとりつつ関係を築くのがスムーズにいきやすいと思います。

 ご近所のサークルや習い事でもいいと思います。自分自身がその趣味を楽しんでいれば、おのずと“この人と話してみたい”と思える人が出てくるはず。周りの人も近づきやすくなりますよ」(泉野さん、以下同)

節度を守った距離感が大切

 もちろん、旧友とも“新たな縁”をつなぐことはできる。

何年も連絡が途絶えていても、ふと“会いたいな”と思う人がいたとします。あまりに久々だと、大きなきっかけがなければ連絡しずらいかもしれませんが、話してみたいなと思えば気軽に連絡を取ってみては。向こうから連絡もないし、忙しいだろうし……と思っているだけでは、会う機会もないままその“縁”が切れてしまいます」

 大切なのは自分の気持ちや現状を、見栄を張らずに素直に伝えることだ。

 新たな縁でも、旧友でも、つながりを持てた場合、それを育むために、気をつけるべき点があるそう。

「熟年になってからの人付き合いで大切にしたいのは、お互いにとって節度を守った距離感を保つこと。若いころは、秘密を共有したり、自らをひけらかすことで深い関係を築こうとすることもあるかもしれません。

 しかし、この年代になると皆、さまざまなことを抱えているはず。ずかずかとプライベートゾーンに踏み込んでしまうような会話を続けてしまうと、関係は壊れやすいです

新たな関係を築く上で心がけること

 では、お互いにとって“ちょうどいい距離感”とはどういうものなのか。

人はそれぞれ、他人との関係性を保つために、間合い(領域)をとっています。いくら昔ながらの関係であっても、たわいもない会話から“この人はここまで言われたら嫌かな?”と想像することも大切。

 例えば、良かれと思ってのアドバイスや励まし、頼まれてもいない行為など、気遣い“してあげている”と思いがちなこれらは、相手の間合いに勝手に踏み込んでいることになるかもしれません。自分が良かれと思っていても、相手の本意は違っていることもありますから。手伝いましょうか?と声をかけて、相手が大丈夫と言ったら、それ以上は踏み込まない。過剰なおせっかいは控えて、相手を尊重する関係性をつくれたらいいですね」

 そしてそれは、自分がされる場合でも同じ。

誘いを断ったら悪いからと、無理に相手に予定を合わせたりすると、疲れてしまいますよね。そうならないためには、相手を尊重しつつ、NOもちゃんと伝えられるようになりましょう。そして相手のNOも快く受け入れる。そうやってそれぞれのフィールドに無理に立ち入らないようにすることが理想的

 家庭、親の介護などを経る中で、時間や気力が限られ、人付き合いがゆるやかに選別されていくのは自然な流れ。この世代の友情は「いつも一緒」ではなく、「気が向けばつながる」関係を大事にしたい。

 友達は遮二無二増やすものではなく、形を変えて関わり続けるものだと捉え直す──。人間関係を数や濃さで測るのではなく、心地よさで受け止める視点こそが、ひとり不安を静かにやわらげてくれるのだ。

肝心なのは自分がどう捉えるか

 逆に、今ある縁にしがみつきすぎないことも大切。例えば、友人から急に距離を置かれると、嫌われたと思ってネガティブになりがち。

何かきっかけがあったにせよ、全く身に覚えがなかったにせよ、あなたが不安に思う気持ちを抱くような相手ならば、いったん距離をとったほうがいい。そんなときこそ、別の新しい友達、心地いい縁を見つけられる機会だと思ってみましょう。人間関係が変わるときは、成長・変化できるとき。そんなに残念がる必要はないのです」

 最近は、人間関係もリセットして、建前だけの親戚付き合いや友人関係は必要ないと考える人も多い一方で、老後にひとりは不安……という思いもよぎる。

「老後にサポートしてもらえる制度などを、元気なうちに調べておくのは大事だと思います。親戚でも友人でも、本当は付き合いたくないと思っているのに、老後の不安のためだけに関係を続けるのは、自分の負担になること。それが続くとさらに人から遠ざかって孤独な気持ちを抱えやすいんです。

 不安を解消するために人付き合いをするのではなく、自分が前向きになれる、人生のエッセンスになるような関係がいいですね」

 自分を信頼し、未来が豊かになることに心を向ける。そして自分と相手、それぞれのプライベートを尊重することを意識しておけば、心地いい関係をつないでいくのは決して難しくない。身構えすぎずに、自分が心から楽しいと思えることを見つけることから始めてみては。

年を重ねても“濃い縁”はつくれるおすすめアクション

(1)推し活仲間をつくる

 自分の好きなことのスクールやコミュニティーに参加してみよう。同じ興味、価値観を持った人となら話も弾みやすく、楽しめるはず。また、無理せず主体的に行動できるのもメリット。

(2)ボランティアに参加する

 人のために動くことで人生が豊かになる上、同じ目的を持つ仲間に出会えるボランティアはかなりおすすめ。ゴミ拾いや動物の保護活動など、自らサークルをつくってみるのもアリ。

(3)一度連絡が途絶えた旧友

 結婚や育児など、ライフステージの変化とともに疎遠になってしまった旧友も、再びつながれる可能性は大。連絡する際は、“寂しいから会いたい”と素直に気持ちを伝えてみよう。

泉野晶代さん●NLP協会認定トレーナー。オフィスイズ代表。人間関係の悩みを心理学により克服した経験を生かし、NLP心理学を中心にカウンセリング、コーチング、セミナー講師として活躍。相談件数は1万件以上。

教えてくれたのは……泉野晶代さん●NLP協会認定トレーナー。オフィス イズ代表。人間関係の悩みを心理学により克服した経験を生かし、NLP心理学を中心にカウンセリング、コーチング、セミナー講師として活躍。相談件数は1万件以上。著書に『これで人づきあいは楽になる』(明日香出版社)など。

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取材・文/當間優子