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 手元が見えにくいと感じたとき、100円ショップの老眼鏡に頼る人もいるのでは。

「ただの老眼」という思い込みが怖い

『絶対に使ってはいけない』とは言いません。普段使いの老眼鏡の予備や、ちょっとレシートを見る程度なら便利なツールです。ただし、常用するには大きなリスクがあります

 そう話すのは眼科医の平松類先生。最大の問題は、病気の発見機会を逃すことだという。

『ただの老眼だ』と思って安心しているのが、いちばん怖いんです。老眼だと思っていたら、実は片目が緑内障で失明寸前だったというケースは、実際珍しくありません。眼科で老眼鏡の処方箋を作れば、必ず眼底検査などで病気のチェックをします。

 緑内障や網膜疾患、白内障など、自覚症状がないうちに目の病気が見つかることも多い。でも100円ショップや雑貨店で買ってしまうと、この大切なステップを飛ばしてしまうんです」(平松先生、以下同)

 合わない度数の眼鏡を使い続けることにも問題がある。

「そもそも既製品の老眼鏡の度数が、あなたにぴったり合っているかどうかは疑問です。数種類の度数から選べる商品もありますが、『なんとなく合っている気がするもの』を勘で選ぶわけですよね。

 頻繁に利用していると、そのたびに目に負担がかかり、目の老化が余計に進み、老眼がより加速しかねません。度数が強すぎる老眼鏡を使うと、目のピント調節機能に過度な負担がかかります」

 結果的に、老眼の症状を悪化させる可能性があるという。既製品の老眼鏡には、度数以外にも問題がある。

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既製品の老眼鏡は左右の度数が同じですが、多くの人は左右の視力が違います。片方の目だけ度数が合っていないと、脳が無理やり両目のピントを合わせようとして、疲れるんです

 中には乱視を持っている人も多い。目の酷使から脳が疲労を起こし、頭痛や肩こり、吐き気、さらには自律神経の乱れといった症状につながる可能性もある。

「PD(瞳孔間距離:左右の黒目[瞳孔]の中心からの直線距離)も既製品では調整できません。この距離が眼鏡のレンズの中心(光学中心)と合っていないと、それだけで眼精疲労の原因になります。

 安価な老眼鏡の中には、レンズに歪(ゆが)みがあったり、屈折率が一定でないものもあります。長時間使用すると、視界が歪んで見えたり、色がにじんだりします」

度数を調整できるものやルーペも同様

 最近では、自分で度数を調整できるタイプの老眼鏡も登場しているが──。

「確かに度数は調整できますが、そもそも度数を頻繁に変える必要はないのです。いずれにしても、乱視の補正などはできません。眼科の処方箋をもとに、眼鏡専門店できちんと作れば、乱視の補正もしっかりと行ってくれますし、結果、お得でもあるでしょう」

 利用している人も多いルーペ(拡大鏡)についても、注意を促す。

「長時間の使用は推奨できません。そもそも、老眼鏡とルーペでは使用目的がまったく異なります。ルーペの機能は『拡大すること』だけです。ぼやけた文字を判別する作業は脳で行われており、長時間ぼやけたものを見ていると、その画像を正しく読み取れるように脳が補正処理を続けないといけない。

 そのため、脳に負荷がかかり続け、目も疲れてしまいます。目と脳、両方のパフォーマンスが落ちてしまうんです」

 ちなみに、「老眼鏡を使うと老眼が余計に進むのでは」という声もあるが、これは誤解だという。

老眼鏡を使ったからといって、老眼が進行することはありえません。老眼は老化現象の一種ですから、個人差はあるものの誰でも徐々に進行するものです

老眼鏡をどこで購入?約3割が100均や既製品

日常の生活と食事で目を守る対策を

 なるべく、日常生活の中で目を労りたいと平松先生。

「まず大切なのは『照明』です。薄暗い場所で本を読んだり、スマートフォンを見たりすると、目は必要以上に緊張します。適切な明るさを確保することで、目の負担を減らすことができます」

 デスクワークをするときは、手元だけでなく部屋全体を明るくするのが理想的。そして、姿勢にも気をつけたい。

「スマートフォンやタブレットを見るとき、首を前に出して画面に顔を近づけてしまう人が多い。この姿勢は首や肩に負担をかけるだけでなく、目にも悪影響を及ぼします。画面との距離は30cm以上を保ち、目線がやや下向きになるようにするのが望ましいです」

 休憩をとることも大切。デスクワークやスマートフォンを見る時間が長くなると、目はピント調節のために、緊張し続けてしまう。

1時間に一度は遠くを見て、目の筋肉をリラックスさせる習慣をつけてください。窓の外の景色を眺めたり、部屋の奥の壁を見たりするだけでも効果があります

本などを読む際は適切な明るさを確保して ※写真はイメージです

 食生活について、目の健康には抗酸化作用のある食材が有効なのだとか。

「ビタミンCやビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンなどの成分は、目の老化を防ぐ働きがあります。これらは緑黄色野菜や果物、ナッツ類に多く含まれています。特にほうれん草、ブロッコリー、ケール、卵黄などは、ルテインやゼアキサンチンが豊富です」

 習慣的にお茶を飲むのもおすすめ。緑茶には強い抗酸化作用があり、目の細胞を守る働きが期待できるそう。

「お茶のカテキンには血流を改善する効果もあるため、目の疲労回復にも役立ちます。お茶を飲むときに、目の健康を意識すれば、なおいいでしょう」

緑茶は抗酸化作用があり目によい効果が ※写真はイメージです

「老眼しぐさ」に気づいたら

 老眼かなと思ったら、まずは眼科を受診する。これが何よりも重要だと平松先生。

「もし『見え方』がちょっとでも変わったら、眼科を受診し、その結果を受け入れ、適切な対応をとることです。

 すでに眼鏡を使っている人で、近くを見るとき、無意識に眼鏡を上げる『おでこメガネ』、無意識に眼鏡を下げる『鼻メガネ』、見やすい距離に無意識に『手にした物を動かす』──。このようなしぐさが現れたら、要注意です」

 自分に合わせて作った老眼鏡は、目の負担を最小限に抑え、快適な視界を提供してくれる。

初期費用はかかりますが、目の健康と生活の質を考えれば、決して高い買い物ではありません。老眼は年齢とともに進行するため、数年ごとに度数を見直す必要があります。『見えにくくなってきたな』と感じたら、我慢せず眼科で相談してください

 目は一生使う器官。日々のケアと定期的な検査を心がけたい。

“100均老眼鏡”で起こりうること
□合っていない度数で目が疲れる
□頭痛・肩こりが続く
□左右の視力差・乱視に気づかない
□緑内障などの病気を見逃すことも

平松類先生●医学博士。二本松眼科病院副院長。昭和大学医学部卒業、昭和大学東病院助教、三友堂病院眼科科長、彩の国東大宮メディカルセンター眼科科長を経て二本松眼科病院勤務。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディアにも多数出演。

お話を伺ったのは……平松 類先生●医学博士。二本松眼科病院副院長。昭和大学医学部卒業、昭和大学東病院助教、三友堂病院眼科科長、彩の国東大宮メディカルセンター眼科科長を経て二本松眼科病院勤務。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディアにも多数出演。著書に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ ワイドハンディ版 横とじだから見やすい!』(SBクリエイティブ)

平松先生の著書『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイワイドハンディ版横とじだから見やすい!』(SBクリエイティブ)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。