目次
Page 1
ー 女ヤクザと呼ばれて
Page 2
ー “ヤクザ”だからこそ指詰めも体験する
Page 3
ー 居候の元ボクサーに殺されかけたことも

「ヤクザ」と聞いて、多くの人が“男の世界”を思い浮かべるだろう。実際、任侠の世界の女たちは表に立たず、男たちを陰で支えるのが常だ。

女ヤクザと呼ばれて

「私は女ですが、杉野組の杉野良一親分の盃を受けた、れっきとした組員でした。杉野の親分から『まこちゃん、女でもいいからヤクザをやれ』と言われて『やります』と即答。杉野の親分には、私が傷害事件でパクられたときにお世話になった恩義もありましたからね」

 20歳でヤクザの世界に飛び込んだ西村まこさんは、当時をそう振り返る。

「杉野組に入ることが決まると、私の母は組の事務所に挨拶に行ったそうです。相手がヤクザの親分とは知らず『これから娘がお世話になります』と頭を下げたとか。後に『お母さんが行ったのはヤクザの事務所で、挨拶をしたのは杉野の親分だよ』と教えたところ、とても驚いていました(笑)」

 西村さんいわく、女ヤクザと極道の妻はまったく異なる存在だという。

「極道の妻は“姐さん”として、組の若衆の食事を作ったり、身の回りの世話をするのが仕事です。一方、“女ヤクザ”の私は女とついているだけで、実態は男のヤクザとすべて同じ。紋付袴を着て盃を受けたその日から、若衆たちと一緒に“部屋住み”が始まりました」

 部屋住みとは、ヤクザの下積み修業期間を指す。この期間は組事務所や組長の家で生活を送り、幹部の世話、事務所の掃除、組長の飼い犬の散歩などの雑用をこなすという。

「部屋住み時代は男と交ざって雑魚寝が当たり前。私はずっと格闘技をやっていて、学生時代からケンカざんまいだったので、襲われても負けない自信がありました。そもそも女扱いされていないので、襲われる心配もなかったですね。逆にいえば“女だから”という理由で大目に見てもらえることもありませんでした」