居候の元ボクサーに殺されかけたことも
先日、そんな彼女の波乱の半生を綴った自叙伝『「女ヤクザ」とよばれて』(清談社Publico)が上梓され、大きな話題を呼んでいる。発売に至った経緯とは?
「現在、私が所属しているNPO法人・五仁會の竹垣悟会長に、本の執筆を提案されたのがきっかけです」
五仁會は元暴力団員や元受刑者、元非行少年などの自立と就労支援を通して、犯罪減少と地域社会の安全を目指すNPO法人。竹垣さんの姿勢に共鳴した、西村さんをはじめ元暴力団員で服役の経験がある3人が立ち上げた。西村さんは同会の広報部長兼岐阜支局長を担っている。
「'17年ごろから、個人的に昔の仲間や居場所がない人の面倒を見ていたのですが、居候の元プロボクサーに殺されかけたこともあり、1人で活動する難しさを感じていました。
そんな矢先、竹垣会長と出会い、五仁會の活動を知ったんです。四代目山口組・竹中正久親分の元側近を務めたほどの人が、地域のために額に汗して街の清掃活動をする後ろ姿に胸を打たれました」
彼女は、竹垣会長との出会いについて「更生するラストチャンスだ」と感じたそう。その後、竹垣氏に五仁會・岐阜支局の立ち上げを快諾してもらい、本格的に活動を開始した。
「岐阜県の夜の街・柳ヶ瀬にある『ロアビル』が、五仁會岐阜支局の拠点です。ロアビルには、前科がある人や薬物中毒、ひきこもりなどさまざまなワケアリの人が住んでいるので、トラブルは日常茶飯事。
しかし、立ち上げメンバーのひとりであり、ロアビルの管理人を務める藤本好道さんは人生経験が豊富なので、どんなトラブルにも動じません。また、もうひとりのメンバーで人材派遣業を営んでいる青山佳寿生さんは、刑務所から出て、働く場所のない人たちの就労支援もしています。
つい最近も支局に因縁をつけてきた人間がビルに乗り込んできましたが、全員肝が据わっているので冷静に対処できました」
最後に西村さんは「行き場のない人々の“よりどころ”になりたい」と希望を語る。
「現在の活動を通して薬物依存の専門家に話を聞く機会があり、薬物依存症の人は常に不安や孤独を抱えている事実を知りました。薬物から抜け出すには社会とのつながりが必要なんです。
実際に『クスリよりも五仁會の活動のほうが楽しい』と話してくれる会員もいて、やりがいを感じています。これからも岐阜支局が、彼・彼女たちの“居場所”になれるように頑張ります。もし、次回作が出せるなら“ロアビルの危険な日常”を一冊にまとめたいですね(笑)」
元女ヤクザ・西村まこのカオスな日々は続く──。
『「女ヤクザ」とよばれて』清談社Publico(税込み1870円)
国が初めて「女性暴力団員」と認定した西村まこの半生を綴った一冊。ケンカに明け暮れる不良少女時代を経て飛び込んだのはヤクザの世界。ケンカ、恐喝、拉致監禁に管理売春――あらゆる悪事に手を染めた彼女が踏み出した、更生への道とは。
取材・文/とみたまゆり