物語の舞台は全国展開する大手スーパーマーケットのマルオーホールディングス。かつては凄腕(すごうで)で鳴らしていたものの、とある事情で地方に飛ばされていた主人公の秋津渉は、突如、本社のコンプライアンス室長に任命された。

 唯一の部下である女性社員の高村真琴とともに、セクハラやパワハラといったハラスメント問題に立ち向かっていくのだが――。

初の小説がドラマ化

 本書は現在、テレビ東京系で放映中のドラマ『ハラスメントゲーム』の原作であり、ドラマの脚本を手がける井上由美子さんの小説デビュー作でもある。

「以前から担当編集の方に“小説を書いてみませんか”とお話をいただいていたのをきっかけに、執筆をはじめました。その最中に、ドラマ制作の方から脚本のお声がけがあったんです。

 “小説を書いているので無理なんです”とお伝えしたところ、“その小説をドラマにしましょう”とご提案があり、初の小説がドラマ化されて自分で脚本を手がけることになりました

 井上さんは、小説の執筆にあたりテーマを考えた際、自身の感覚と符合したのがハラスメントというテーマだったという。

「私が子どものころは、『時間ですよ』というドラマで入浴シーンがありましたし、昼メロではラブシーンや悶(もだ)えシーンが当たり前のように流れていたんです。でも、今の地上波のドラマではまず無理ですよね。

 脚本家として仕事をはじめて20年ほどになるのですが、特にここ数年はコンプライアンス的に禁止されるものが多く、窮屈さを感じています。

 この窮屈さと、些細(ささい)な言動がセクハラやパワハラとしてやり玉にあげられてしまう今の世の中は一致していると思い、ハラスメントをテーマに書くことにしました