自らを「50歳を過ぎた新人です」と語る井上さん。本作にはどのような思いが込められているのだろうか。

「本来、働くのは楽しいことだと思うのですが、今の時代はそう感じるのが難しいですよね。

 だから、右往左往している登場人物たちを見てちょっと笑ってもらいつつ、“働くのは楽しいことなんだなぁ”ということを思い出してもらえたら、作者としてとても幸せです」

ライターは見た!著者の素顔

 井上さんの日々の楽しみのひとつは、愛犬のマロンちゃんと遊ぶことなのだそう。

「マロンは16歳のパピヨンで、目が見えず耳も聞こえないんです。毎日、一緒に散歩に出かけるのですが、ヒゲの感覚とか嗅覚(きゅうかく)とかを使って普通に歩いているので、本当にすごいなぁって思っています」

 今後はご自身が10代のころに読んでいた田辺聖子さんや筒井康隆さん、森村桂さんのような、気楽に読めつつ文学性が高い作品を書いていきたいと話していました。

『ハラスメントゲーム』井上由美子=著(河出書房新社/税込1620円) ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
【写真】インタビュー中の井上由美子さん
いのうえ・ゆみこ●兵庫県生まれ。テレビ東京勤務を経て、1991年、脚本家デビュー。主な作品にNHK連続テレビ小説『ひまわり』、『きらきらひかる』、『白い巨塔』、『14才の母』、『昼顔』、『BG~身辺警護人~』など。向田邦子賞、芸術選奨文部科学大臣賞、ギャラクシー賞など受賞も多数

(取材・文/熊谷あづさ)