里子の喜びを得られたことに感謝

 Sさん夫婦はその後もうひとり養子を迎え、現在は12歳と8歳の子どもを育てている。2人とも生まれてすぐからともに暮らしているため、普段は養子と意識することがないという。

「養子だと忘れてしまうことも多々あります。子どもが熱性けいれんを起こしたとき、救急病院で“ご両親はこういう病気をしたことがありますか?”と聞かれて真剣に考えてしまった(笑)。しばらくして、そういえば血縁がないというのを思い出しました」

 子どもをもたず、夫婦ふたりで暮らすという選択は考えなかったのだろうか。前出の岩朝さんは当初、夫と意見が分かれていたと話す。

「夫は、夫婦ふたりでよくない? と言っていました。僕は君と一緒になりたくて結婚したんだからと。でも私は子どもが大好きで、子育てをしない人生など考えられなかった。だから離婚も頭をよぎりましたが、それを話したら夫が考え直してくれました(笑)」

 岩朝さん夫婦と娘の関係は良好だ。4歳で家に迎えた娘は今、12歳になる。

「この前、久しぶりに会った知人が“だんだん本当の親子みたいになってきたな”と言ったら、娘が凍りついてしまって。あとで聞いたら“あんなふうに言われたら逆に、本当の親子じゃないと言われたみたいで傷つく”と。以前は、夫婦だけでいいと言っていた夫も、今では“里親をやらない人生なんて考えられない”と言っています。

 里子は虐待を経験した子も多いので大変さもありますが、この喜びを知ることができて本当によかった。血縁はなくても、年月で家族にはなれるんです

 岩朝さんは興味をもった人にはぜひ、知る勇気を出してほしいという。

「私も不妊治療をしていたときは本当に世界が狭くなっていました。次の周期のことしか考えられず、今思うと、まったく私らしくなかった。治療と並行でいいので、実際に養子や里子を迎えた人に会ってみるなど、一歩前に進んでもらえたらと思います。どんな形にせよ、子育ては楽しいですよ


《PROFILE》
岩朝しのぶさん ◎NPO法人『日本こども支援協会』代表理事。養育里親としての経験をもとに、さまざまな理由で保護されている子どもたちを取り巻く問題に取り組んでいる。