罪悪感がなくても、法律がある。前出・石崎弁護士は、

「行くつもりがなくて予約をした故意的なケースだと偽計業務妨害。懲役3年以下、50万円以下の罰金です。うっかり忘れたケースですと刑事事件にはならない。しかし過失はありますから、損害賠償請求されることはあります」

 と説明。前出・田中社長らも民事訴訟の検討をしており、逃げ得を許さない姿勢だ。

悪質すぎる4タイプを紹介

 各種サービス業で、横行する無断キャンセルだが、いくつかのパターンに分けられることが、取材の過程で鮮明になってきた。客を自分の店に引き込むため、予約を悪用するケース。それを編集部では【横取り型】と名づけてみた。

 前出・石崎弁護士が、事例を挙げる。

「ある地域に、競合するA、B、Cの3店があるとします。A店の店長が、B店、C店に偽予約を入れて埋める。お客さんはA店を予約せざるをえない状況を作るんです」

 昨年夏に、東京・立川市で起きた事件が、まさにこのケース。同市のマッサージ経営会社の役員がライバル店に偽名で予約を入れ無断キャンセルしたとして、偽計業務妨害の疑いで書類送検された。

 続いては【ポイント不正型】

 今年1月、宿泊予約サイト『一休・com』でホテルの宿泊を予約する際に付与されるポイントを不正に入手し、それを使いホテルを泊まり歩いていた親子が、偽計業務妨害の疑いで京都府警に逮捕された。2200回以上の予約と無断キャンセルを繰り返し、約200万円相当のポイントを入手していたという。

 無断キャンセルをしても宿泊施設側が手続きをしなければ宿泊したとみなされ、ポイントだけが自動的に付与されてしまうシステムの抜け穴を狙った犯行。一部の宿泊施設がまんまと利用されてしまった。同サイトを運営する株式会社一休の担当者は、

「今回のケースは初めてです。予約サイト業界の打撃になる」

 とショックを隠さない。親子は複数のIDを悪用したが

「複数のIDを同一人物が持っていても特定できません」(前出・担当者)

【嫌がらせ型】と分類できるケースもある。店側に恨みを持つ人物が嫌な思いをさせるために犯行に及ぶケースだ。

「元従業員、元お客さん、クレーマーのような客、店員とトラブルになった客など、背景はあると思います。じゃないと系列店ばかりを狙った嫌がらせはしない」

 と前出・石崎弁護士が指摘する事件が、昨年11月に東京・警視庁丸の内署に偽計業務妨害の疑いで逮捕された59歳(当時)の男のケースだ。有楽町の居酒屋に17人分の予約をし無断キャンセルしたのが6月28日。同じ日に、系列店4店舗にも、同じ偽名、同じ電話番号で8~20人分の予約があったが、すべて無断キャンセルされた。