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ー 本当は危ない健康習慣20
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ー 危険な飲み合わせ 処方薬×サプリ&漢方

 熱中症予防には水より経口補水液がいい、便秘解消には食物繊維――。これまで正しいと思い込んでいた定説の中に実は身体によくない行為がいくつもある。健康を害さないために今すぐやめたほうがいい健康習慣、あなたもやっていませんか?

 コンビニでも手軽に入手できる経口補水液。特に暑い日の熱中症対策としては、水よりも身体への吸収率がいいので効果的だと思う人も多いのでは。

本当は危ない健康習慣20

熱中症の予防にはただの水より経口補水液が有効

 環境生理学に詳しい松山大学特任教授の田中英登先生は、経口補水液を熱中症予防として摂取するのは危険だと言う。

「そもそも経口補水液は、脱水症状を改善するための医療用として開発されたもの。身体に吸収されやすいよう、塩分濃度も、血液の浸透圧に合わせて高く設定されています。それを平常時から摂取していたら、塩分のとりすぎで高血圧になってしまいます」(田中先生、以下同)

 有益な経口補水液も、使い方を間違うと健康被害につながりかねない。では、正しい摂取の仕方は?

「運動で大量に汗をかいたあとなど、かなり脱水が進んだ状態で摂取するなら問題ありません。経口補水液の中には『熱中症予防』と明記されたものもありますが、経口補水液はあくまで『緊急時用』だと認識することが重要です」

暑い日は冷却スプレーで手軽にクールダウン

 冷却スプレーや冷感シートは、手軽に肌の熱を冷ますことができる便利グッズ。外出時に常備すれば、炎天下でも快適に過ごせそうだが……。

「冷却グッズの主な成分は、アルコールやメントールといった皮膚に刺激を与えて涼しいと感じさせる物質。あくまで感覚に働きかけるので、体温には何の影響も与えません」

 気温の高い炎天下などで汗をかくのは体温調節のため。かいた汗が蒸発するときの気化熱が、体温を下げる働きを持っている。ところがそこで冷感グッズを使用すれば、脳が涼しいと錯覚し、発汗の指令を出さず、結果として体温が上がることに。

「冷感グッズは使い方を間違えば熱中症“促進剤”になってしまうんです」

 では、どんなときに活用すればいい?

「例えば、エアコンの効いた会社に外出から戻ってきて、なかなか汗がひかないとき、冷却スプレーを使えばより早くリフレッシュできます。冷却グッズを使用するなら、暑くない状況での使用をおすすめします」

ダラダラ汗はこまめに拭いてさわやか肌をキープ

 ベタベタした不快な汗は、ハンカチなどでこまめに拭き取りたいものだが、熱中症対策の面から見ればNG行為だという。

「そもそも発汗により体温が下がるのは、かいた汗が乾いて蒸発するときに身体の熱が奪われるため。汗が乾く前に全部拭いてしまっては、熱を外に逃がすことができず、熱中症のリスクを高めることになります」

 ちなみに、汗をかきにくい体質の人は、霧吹きで水を肌にかければ、身体の熱が気化熱として逃げやすくなるという。だが、かいた汗をそのままにしておけばいいかといえば、そうではないようだ。

「滴り落ちるほど大量の汗をかいたときは、水分はどんどん体外に出ているのに、なかなか汗が乾かず体温が下がらないという、身体にとっては効率の悪い状況。汗をすべて拭き取るのはNGですが、大量にかいた場合は、定期的に軽く拭いたほうが効果的な体温調節が望めます」

夏は我慢せず、ずっとエアコンに頼るべし

 エアコンは熱中症対策に必要不可欠。節電の必要性も叫ばれているが、やはり命にかかわる熱中症を防ぐことのほうが重要だ。

熱中症の約半数は屋内で発生します。夏場は、ためらうことなくエアコンを使って、熱中症対策を行いましょう。

 ただ注意したいのは、常時エアコンに頼りきってはいけないということ。汗をかく機能が衰えて体温調節機能が働かなくなり、結果的に熱中症のリスクを高めてしまいます」

 例えば、夏休み期間中、ずっとエアコンの効いた屋内で過ごした子どもは、新学期が始まると、ほかの子よりも熱中症になりやすいという。

「子どもだけでなく、大人にもこの傾向は見られます。夏場こそ、汗をかく機会を意識的につくることが必要です」

 運動習慣のない人は、朝夕の過ごしやすい時間に軽く散歩をして汗をかくのもおすすめだ。