儀式中の佳子さまの様子

 紀子さまの歌に続いて、秋篠宮さま《早朝の十和田の湖面に映りゐし色づき初めし樹々の紅葉》という歌が紹介された。この歌は40数年前、早朝に十和田湖(青森、秋田両県)の周辺を散策し、澄んだ湖水と周囲の樹木の紅葉を楽しんだ、その時の光景を詠んだという。色づいた葉の風情を楽しむ姿勢が父と娘の歌で似通っていて微笑ましかった。

 儀式の間、佳子さまは背筋を伸ばして真っすぐ、前方を見つめていた。式全体の進行役である読師が、皇后さまの席から歌が書かれた紙を受け取って2度、皇后さまの歌を紹介した。最後に読師が、天皇陛下の席から歌が書かれた紙を受け取って3度、陛下の歌を詠み上げた。

 佳子さまは2014年12月29日、20歳を迎え成年皇族となり、翌'15年1月14日、『歌会始の儀』に初めて参列した。この時のお題は「本」で佳子さまの歌は、《弟に本読み聞かせゐたる夜は旅する母を思ひてねむる》というものだった。以前の記事でも触れたが、姉の小室眞子さんは当時、外国留学中で、両親が国内や外国を訪問して留守の間、弟の悠仁さまと佳子さまは一緒に過ごす。夜、就寝する前、弟に本の読み聞かせをしながら彼女は、仕事で遠くにいる母、紀子さまのことを思う情景を詠んだという。

 '22年、『歌会始の儀』のお題は「窓」で、佳子さまは《窓開くれば金木犀の風が入り甘き香りに心がはづむ》と詠んだ。宮内庁の説明では秋のある日に、佳子さまが部屋の窓を開けると、金木犀の香りが風にのって漂ってきた。甘い香りに触れてうれしい気持ちになったことを表した。

 続く'23年のお題は「友」。佳子さまの歌は《卒業式に友と撮りたる記念写真裏に書かれし想ひは今に》だった。高校の卒業式の日に友人2人と、記念の写真を撮ったという。後日、友人が、プリントした写真の裏側にメッセージを書いて佳子さまに渡した。その思いが3人の中で今も続いていると感じられたことを歌に詠んだ。

 陛下と秋篠宮さまの妹、黒田清子さんが紀宮清子内親王時代の1999年1月のお題は「青」。清子さんは、今の佳子さまと同じ年の29歳で、その歌は《まさをなる空に見えざる幾筋の道かよひゐて渡り鳥くる》。翌2000年のお題は「時」。清子さんの歌は《時空こえて宇宙のかなたに吾(あ)をまねくすばるより見し青き星雲》だった。