「この夏も山本太郎を応援する」と答えた支持者は少なくない。一例を紹介したい。

《野党共闘を目指しながらも「消費税5%」は譲らず、黙々と全国街宣を続けた。軸がぶれず、熱も冷めず、頼もしく感じている》(東京都の60代男性)

《次の衆院選まで待つよりも、いま苦しんでいる人を救うために行動した点がすばらしい。食品関連会社に勤めているが、コロナで休みが増え、給料が減った。取引先では閉店が相次ぎそうだ。ケガに例えれば、大量出血している人がたくさんいる。急いで止血が必要だ。投票権はないが、寄付はもちろんする〉(千葉県の40代男性)

《都内でポスター貼りなどをしています。宇都宮健児さんを応援するつもりでしたが、困った人を助けたいという信念だけで立候補を決めた太郎さんを、やはり応援しようと決めました》(神奈川県の60代女性)

課題や違和感を指摘する声も

 一方、心が揺らいでいる人もいる。都内在住の20代、岡本次郎さん(仮名)は「正直、迷っています」と答えてくれた。

 岡本さんはバイセクシュアルだ。そのことを友人にバカにされ、不登校になった経験がある。れいわ新選組は昨夏、重度障害がある木村英子氏と難病を抱える舩後靖彦氏を国会に送りこんだ。弱者もマイノリティー(少数派)も生きていていい、という山本氏のメッセージだと感じた。

 ところが、参院選後は少しがっかりした。

次の衆院選の候補者を公募し、顔ぶれを発表しましたよね。それを見て“参院選のときと違って当事者性が薄いな”と感じたんです

 参院選におけるれいわ新選組の候補者は、何かしらの問題における「当事者」だった。上述の2人に加え元非正規・シングルマザーの渡辺照子氏や、コンビニオーナーだった三井義文氏らだ。「当事者の立場から社会を変えよう」という思いが伝わってきた。

「でも、衆院選の立候補予定者を見ると、元政治家や元スポーツ選手など、ほかの政党と変わらないと感じました。うつ病を患っている人、性被害のサバイバー、外国にルーツを持つ方、そしてLGBTQの当事者など、多様な背景を持つ人たちを候補に選んでほしかったな、と思いました」

 関東地方に住む60代、寺原京子さん(仮名)は、彼を今回は応援しないと決めた。

 昨夏は「誰もが生きていける社会」の構築を望み、れいわに5万円を寄付した。しかし、1年間の山本氏の動きを見て気持ちが動いていった。「消費税5%」に乗れない野党を、必要以上に敵視しているように感じた。

「山本さんはとても純粋な方だと思います。国民を救おう、という理想は分かります。ただ、考え方が相容れない相手と『対立』の構図を作ってしまうのは、どうなのかなと。山本さんにはもう少し、人間的な包容力があるといいのではと思います」

 SNSで一部の支持者が他党のシンパ(政治的思想における共鳴者)と「批判合戦」をしていることも耐えられなかった。争いごとに辟易(へきえき)し、距離を置きたくなったという。寺原さんはそう語ったうえで、自身の近況も話してくれた。

「要するに疲れてしまったんですね……」

 感染におびえる日々が続いた。夫と公園を散歩してバラや藤の花を楽しむことができず、初孫にも会いに行けなかった。そんななか、政府の対策は迷走を続けた。PCR検査を受けられない人が続出。医療従事者たちはマスクやガウン不足で苦しんだ。アベノマスクは送りつけられたが、定額給付金の10万円はまだ届かない……。

 桜を見る会や検察庁法改正の問題もある。現政権にはうんざりすることばかりだ。政治を変えなければ、と思う。だが、疲弊した心身には「闘おう」という気持ちがなかなか湧かない。いつだってファイティングポーズを見せるのが山本氏の個性であり魅力だが、ついていく元気が寺原さんにはないのだという。

「参院選のときは頑張ったんですけどね。いまは疲れて、ダメですね」