親離れ、子離れ─。いつの時代も議論されるこの問題だが、最近の親子の関係性は、より緊密なものになっているように感じる。親のあり方、子のあり方。はたして、どちらがどう変わってきたのか? いったいなぜ変わってきたのか? 現代のリアルな親子関係を緊急レポート! 第6弾は「社会環境の変化」がテーマです。

■出たくても出られない若者たち

 “まるで、檻のない監獄”。そんな環境に悩まされているのが「出たくても、出られない」と嘆き、実家で親との同居生活を続ける若者たちだ。親子ともに“巣立ち”を望んでいるのに叶わない状況とは、いったいどういうことなのか。すれ違う親子の葛藤を取材した。

 大学卒業後、PR会社に就職し、親元を離れた都内在住の菅原雄大さん(仮名=26)。順調にスタートを切ったはずの社会人生活は長くは続かなかったという。

「残業は月100時間を超え、残業代、ボーナスは出ない。泊まり込みで働く毎日でボロボロだった」

 過酷な日々を振り返る表情は複雑だ。限界を感じて退職を決意したのは入社1年後。不安はあったが、身体が悲鳴をあげていた。収入がなくなり、ひとまず実家に戻ると、

「“なんで、簡単に辞めちゃうの?”って、おふくろは嫌な顔をしましたね。歓迎はされないですよ。就職先が決まったとき、あんなに喜んでいたんだから」

 と寂しそうに微笑む。「いつ出て行くのか」という両親からの無言の圧力に苦しむ日々が続いているという。

「一刻も早く実家を出たいです。でも、今はひとり暮らしできる余裕がない。安いアパートの家賃をギリギリ支払えても、生活費が手元に残らない。病気やケガで急にお金が必要になっても、どうにもできない」

 菅原さんは現在、運送会社で非正規社員として働いているが、決して恵まれた環境ではない。残業代なし。ボーナスなし。有給なし。手取りの月収は15万円。昇給のため、4トントラックを運転できる中型免許の資格取得を目指しているが、受験にかかる費用は約30万円。当面、家を出られる見通しは立っておらず、

「家を出るメリットがなく、むしろマイナスが大きい」

 と、本音を漏らす。

■よい学歴が“生涯安定”を保証する時代は終わった

大手派遣会社の職員によれば男性は40歳以上、女性は35歳以上から、派遣で紹介できる仕事が激減する(写真はイメージです)
大手派遣会社の職員によれば男性は40歳以上、女性は35歳以上から、派遣で紹介できる仕事が激減する(写真はイメージです)

 菅原さん同様、生きる手段として、親との同居を選ぶしかない若者は珍しくない。埼玉県で生活困窮者の相談・支援を行うNPO法人『ほっとプラス』代表の藤田孝典さんによると、

「問題の渦中におかれているのは、年収200万円未満で未婚の男女(学生を除く20~39歳)。首都・関西圏に住む年収200万円未満の若年・未婚者に実施したアンケートでは、約7割が親と同居をしていることがわかりました」

 仕事が安定せず、実家を出られない。そんな現状で結婚など空想でしかない。そんな若者の存在が“少子化”にも拍車をかけている。

 なぜ、親元からの自立は難しくなったのか。

「今、全体の労働者の4割が非正規社員です。彼らは10年たっても昇給なし。ボーナスは1度も払われない。居酒屋やコンビニでも、店長ひとりが正社員で、残りは非正規とアルバイト。人件費をばっさり切る企業が増え、雇用形態は崩壊している」(藤田さん、以下同)

 正社員が9割を占めた20年前までの働き方は、今や遠い昔の夢物語。よい学歴が“生涯安定”を保証する時代はとうに終わった。前出のアンケート回答者で、親と同居している若者の最終学歴で、最も多いのは「大卒33.9%」。以下、「高卒24.5%」「短大・高専・専門学校卒22.2%」と続く。学歴の低い中卒と高校中退は合わせて8.4%だ。

「親世代は、高卒・大卒で働き始めれば、すぐに自立できると思っている。でも、正社員として就職してもブラック企業に使いつぶされて精神が病み、親元に戻るケースが相当数ある」