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「みんな死に向かっているけど、どんなことがあっても生き続けることは美しさだと思う」 撮影/佐藤靖彦

 70万部突破の直木賞作品で、天童荒太原作を映像化した映画『悼む人』。主演を務めるのは高良健吾。

「自分の内面にこもっていく感じと、浄化されていくような気分になりました」

 主人公・静人が、不慮の死を遂げた人を悼むために巡礼する旅を描く。

「僕は、役を演じているから静人の行為や言葉が聞こえるけど、彼は誰かに聞こえるためとか、伝えるためにやっているのではないということです。天童さんと話して思ったのは、この人は命を差別していない。ひとつの命に対して愛と感謝を悼み、全国を巡っている。命との向き合い方が真摯で、まじめ。理解されなかったり、批判されてしまうことがあるかもしれないけど、やり続ける彼の生き方は、誰も否定できないと思います」

 死とは、生とは、愛とは何かを静謐な映像で訴えかけ、さまざまな感情が呼び起こされる。

「見る人の家庭環境、年齢、性別、経験してきたことなどで受け止め方は違う作品だと思います。この作品で、死生観が変わりましたか? とよく聞かれるけど、僕は役で人を殺したり、殺されたり、自ら命を絶ったりすることを演じてきたので、そういうことを考えることが多く、しんどかったし苦しかったです。今回に限らず、役を通し以前から死生観を感じて生きてきたと思うので、静人の気持ちがわかるところがあります」

 静人が、信じてやり続ける行為は、自身の役者道にも通じる。

「俳優になって10年ですが、ようやく気づくことばかりで、やり続けないと何も見えないし、見つからないと思うようになりました。作品選びでは、台本にひとつでも興味を引くところがあり、自分はどう演じるのかと思えたらやることにしています。そういうところは、以前ほど頑固でないかなと思います。以前なら静人役は僕じゃないとか悩んでいたかもしれないけど、そんなことを言っていたら何もできないですから」

 デビューした10代後半から20代前半までは、シンクロしていなかった感情と身体がしっくりするようにもなったという。

「20年後、30年後は、また違った感覚なのかもしれないけど、いろんなことにチャレンジして、自分がどう感じるのかを大切にしたいです」