2大頭痛との上手な付き合い方

【片頭痛】

「片頭痛は生活習慣病のひとつです」(丹羽先生、以下同)

 ストレスをためず、バランスのとれた食事をとり、適度な睡眠をとる。それをベースに、片頭痛を招く誘因を避けることで改善できるという。

「例えば、雨の日に満員電車に乗ったら、すでに2つの誘因の地雷を踏んだことになります。これにストレスや睡眠不足が重なれば、一気に頭痛の引き金を引く可能性が。天候や生理は自分ではコントロールできないので、ほかの生活部分で、誘発する行動をできるだけとらないようにする。例えば“飲み会に誘われたけど、今日は生理だし、台風も接近しているので、まっすぐ家に帰ろう”とか。

 ちょっと生活を律するだけで防げます」

 誘因すべてを禁止するとストレスになるので、1~2個に抑える工夫を。

「お酒は血管を広げる作用があるので、ほどほどに。

 特に赤ワインには血管拡張成分が含まれています。一方、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには血管を収縮する作用があり、片頭痛の予防になります。ただし、飲みすぎるとリバウンドで血管が広がるのでコーヒーなら1日2杯程度に。

 また、空腹になると血糖値が下がり、片頭痛が起こりやすくなります。どんなに忙しくても朝食はとりましょう」

 それでも頭痛が起きてしまったら、どうすれば?

「簡単に言うと、広がった血管を収縮させることが痛みを抑えるコツ。頭部に血液を送っている頸動脈を冷やすと効果的なんです」

 なお、薬は飲むタイミングが重要だとか。

「片頭痛は血管が広がってしまうと鎮痛剤が効きにくくなります。片頭痛に処方されるトリプタン系の薬(イミグラン、マクサルトなど)は、血管が拡張するのを止めるものなので、我慢できないほど痛くなってから服用しても遅いのです。

 軽い痛みを感じたときに早めに飲むのがコツ。それでも痛いときはロキソニンなどの鎮痛剤を服用する。これが正しい飲み方です」

【緊張型頭痛】

 血行が悪くなることで起こる緊張型頭痛は、家庭や仕事などライフスタイルが大きく影響しているという。

「デスクワークで長時間うつむきの姿勢でいると、どうしても肩や首の筋肉に負担がかかり、こってしまいます。また、片頭痛と同じく、ストレスは緊張型頭痛にとっても発症の大きな要因です。

 例えば、親の介護をしていたり、精神的、肉体的ストレスがかかったりすると血行が悪くなるのです」

 逆に言うと、心身の緊張を解いて血行をよくすることが、予防、緩和につながる。

「簡単にできて効果的なのが、ストレッチです。背中側に首筋から肩、腰の上までつながる僧帽筋という大きな筋肉があります。ここをほぐすと、肩や首のこりが和らぎ頭痛にも効きます。

 また、手を握り、まっすぐ前方に手をのばして突く、“正拳突き”の動作を左右交互に行うのも効果的でしょう。どちらも仕事の合間などに気分転換でちょっと動かすだけでラクになります。ぜひ日々の習慣に取り入れてください」

 ウォーキングなど、リズミカルな運動も効果的だという。

「姿勢も大事です。猫背、あぐら、肩ひじをついて横たわる、脚を組む……。こうしたNG姿勢のクセを改めましょう」

 “温める”ことで血行が促され、症状が緩和される。

「入浴は首や肩の筋肉をほぐし、心身のストレスもとるのでおすすめ。なお、蒸しタオルなどで首を温めるときは後ろ側に当てます」

 片頭痛と緊張型頭痛、両方持っている人は、どうすればいいのか?

「首の前面は冷やし、後ろは温めると覚えておきましょう。

 同時に発症することはありませんが、これを覚えておけば、どちらの症状が出ても適切に対処できます」

 また緊張型に限らず体内の水分が不足すると頭痛が起きやすくなるという。

「本格的に痛くなってからでは水分を補給しても痛みがとれないので、早めにこまめに水分補給を。普段から野菜や果物など水分の多いものを積極的に摂取しましょう」

<プロフィール>
丹羽潔先生◎東京頭痛学会専門医・指導医。東海大学医学部卒業後、ドイツ、アメリカの大学病院を経て、にわファミリークリニックを開業。2015年、頭痛に特化した専門クリニックを開院。両病院の理事長を務める。