忘年会の季節がやってきた。幹事さんにはご苦労様というほかないが、参加者すべてを平等に満足させるのは国連決議並みの難題だろう。

 なかでも、いちばん頭を痛めるのは会費だが、その際に一定の納得を得られる魔法の呪文が「飲み放題付き」だ。われわれは、とにかくこの「食べ放題」「飲み放題」の文字を目にすると、つい思考停止して舞い上がるものだ。

 いくら飲み食いしても定額である、これ以上払う必要がないと言われると、お財布を気にせず飲食を楽しむことができるのだから。

 そして、次に考えるのは「必ず元を取る、元を取ったうえで、できるだけ飲む」だろう。自戒を込めて言うが、飲みの心理とはそういうものだ。しかし、そこで思考停止してしまってはいけない。この食べ放題と飲み放題での損得勘定を考えてみよう。

そもそも「元を取る」と思った時点で勝負あり?

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 まずは食べ放題だが、結論から言えば「トクはしない」だろう。その答えはわれわれ自身が知っている。なぜなら、皆が考えることは「元を取ろう、元を取るまで食べよう」ではないか。

 つまり「元を取りたい」と考えること自体、普通に食べたら元が取れないはずだと悟っている証拠で、知っていながら自ら損する勝負に挑んでいるのだ。

 ホテルのビュッフェなら、ランチであっても3000円程度はかかるものだ。しかも、並んでいるメニューの全容を目にするのは、オーダーつまりおカネを払う契約を先に済ませてからだ。これが本当に3000円の価値があるのか、吟味をとことんやってからようやくオーダーするという人はそうはいないだろう。

 食べ放題の損得を論じるときに必ず語られるのが「サンクコスト」というもの。これは、すでにつぎ込んでしまった費用で、後から取り戻せないものを指す。3000円払ってしまった以上、大量に食べても1皿しか食べなくても同じことで、本気で損得について考えるなら、財布から3000円を出す前にそれをするべきなのだ。