「お彼岸の日だった。ポッと出てきた国の政策に怒ったり悲しんだりすることが、いつの間にか当たり前になっている。つらいし、疲れた

 本宮市の高橋治夫さん(80代)は、「ありえない。モニタリングポストがあると、何か問題なのか」と話す。郡山市の中本利恵さん(50)も、「“事故を忘れろ”ってことなのか。お金をかけて設置したのに」と憤りを隠さない。

福島県内に現在、約300台が設置されているモニタリングポスト 撮影/吉田千亜
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 原発事故は現在進行形と指摘するのは、いわき市の小林彩子さん(40)だ。

「もし撤去されたら、いちばん近い放射線量計は5キロ先。原発に何かあったとき、わざわざ5キロ先まで確認しに行けというのでしょうか」

 前出の鈴木さんは「モニタリングポストは、数値に変化がないことを祈りつつ、そこにあってほしい“お守り”なんですよ」と心情を語り、

 「撤去しないで、PM2・5をはじめ大気中の汚染物質も同時に監視できるシステムにして、あらためて測定数値に関心を持つ機会にしたらどうか」と提案する。

募る国や自治体への不信感

 特筆すべきは自治体の反応である。原子力規制庁は昨年12月、福島県内市町村へ意見照会を実施したが、その回答の多くは否定的、懐疑的だ。

「撤去は、現在も地中や敷地内に置かれている汚染土とともに生活する市民にとって、多大な不安材料となることは確実」(福島市)

「国の震災対応に対する住民の不信感を助長する」(二本松市)

 撤去を危惧する住民たちは立ち上がり、県内各地のメンバーで構成される「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」を設立。今月16日、原子力規制委員会委員長更田豊志氏あてに「モニタリングポストの継続配置を求める要請書」を提出した。

 《撤去は、住民に判断決定の権利を持たせてほしい》《廃炉作業終了まで「知る権利」として継続してほしい》《この問題を隅々まで周知徹底してほしい》といった内容だ。

 共同代表の千葉由美さん(いわき市=48)は言う。

「撤去を疑問に思う住民とともに、国や自治体に、丁寧に配置継続を訴えたい」

 震災から7年がたち、原発事故に関する報道量は大幅に減った。一方で国は、例えば避難解除を進めることで避難者の存在を覆い隠したように、被害を矮小化して、原発事故の実態や影響を見えないようにしてきた。

 この欺瞞に傷ついた子どもたちがいる。孤立感を深める大人たちもいる。そうした人々の声に誰もが耳を傾けるべきだろう。


〈取材・文/吉田千亜〉 
フリーライター、編集者。東日本大震災後、福島第一原発事故による放射能汚染と向き合う被害者への取材を精力的に続けている。近著に『ルポ 母子避難』(岩波書店)