『少年ジャンプ』で連載中の漫画『鬼滅の刃』が、コミックだけでなくアニメや2.5次元舞台なども巻き込み大ヒット中。ハマっているのは少年だけでなく、大人の女性にも多く、芸能界きっての大ファンがお笑い芸人の椿鬼奴だ。

「とにかく主人公の炭治郎(たんじろう)優しい。私が読んできた漫画の中で、いちばん優しい主人公じゃないかと思います。妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻すということが目的で、最優先は彼女ですけど、それ以外のみんなにも優しい。自分のことを考えるのはいちばん最後っていう優しさがあるんです」

大人の女性の視点

『鬼滅』の敵側である鬼は、もともとは人間。鬼になると人間時代の記憶がなくなっていくが、当時のつらい過去などは鬼になっても潜在的に影響し、態度や性格に表れる。

「悲しい鬼が多いんですよね……。炭治郎や禰豆子につらく当たる味方も鬼も、みんなそれぞれ理由があるし、悪い人じゃない。“実はいい人”って女性は好きじゃないですか。女性は“全員悪人”っていうキャッチコピーより、“全員善人”のほうが好きなんだと思いますね(笑)

 鬼奴のもとには、『鬼滅』読者の子どもからお礼のメッセージが届くとか。

「親って子どもに漫画を買ってほしいって言われても断ったりするじゃないですか。漫画ばっかり読んでないで……だったり。でも私がテレビでけっこう『鬼滅』のことを話したりしていたので、普段お母さんはあんまり漫画を買ってくれないけど、興味を持って買ってくれたとか、いい漫画だって言ってくれてるとか」

 基本的にはバトル漫画なので、首がはねられるなどの残酷なシーンもある。

「でも、その奥には優しい気持ち、人を助ける気持ち、努力を怠らないこととかが描かれています。大人の女性は、子どもや孫に“炭治郎のようになってほしい”と思って読んでるんじゃないかって思うんですよね。いいメッセージがもらえて教育になると思います。私は子どもがいない代わりに、自分が炭治郎にどれだけ近づけるように頑張って生きるかって照らし合わせて読んでいます

 また、大人の女性たち“自身”のためになるとも。

「『鬼滅』のいちばん好きな部分って、笑いもあるところなんです。感動があっても、面白くなかったら読み進められない。炭治郎の大変なシーンで、“骨が折れて動けないけど、長男だから頑張れる”っていうフレーズがあるんです。ちょっとクスッとなるじゃないですか。“長男だから”って頑張ろうとする炭治郎が面白くてかわいい。大変なときでも少しユーモアを持ってくれているっていうのがいいですね。

 私もつらいときに全部真剣モードでは生きていけないタイプなんですよね。どこかでいつもふざけてしまうというか。お葬式でもちょっとクスッと笑えるところを探しちゃったり。つらすぎると受け止めきれなかったりするから。あのおじさん、酔いつぶれてだらしなかったなとか。そういうところが『鬼滅』にはあって好きなんです」

 修行して強くなって、敵に勝つ─少年漫画のテンプレートに加えて、優しさとユーモアが『鬼滅』にはある。

「女性のほうが茶化したいノリってあると思うんです。先生に怒られながらもしゃべってるとか。窮屈なままでいられないのは女性のほうなのかなって思います。生き方にいい影響があり、大変なとき、くじけそうになったときの支えになるくらいの漫画だから読んでほしいです!


椿鬼奴(つばきおにやっこ)/'72年生まれ。最近ではお笑いだけでなく女優としてドラマ出演も多く、『グランメゾン東京』(TBS系)などに出演。同作では『鬼滅の刃』の主題歌を熱唱する場面も