『渡る世間は鬼ばかり』最新版の構想

 そんな橋田さんにはライフワークとも呼べる年に1度の“大役”がある。毎年、敬老の日に放送される『渡る世間は鬼ばかり』スペシャルドラマの脚本執筆だ。'90年にスタートした国民的ホームドラマである本作は、その時々によって時代の世相や社会問題を物語に反映し続けてきた。

 '19年に放送されたスペシャルでは、中華料理店『幸楽』に世代交代が起こり、泉ピン子演じる五月は自分の仕事を若者に取って代わられてしまう。時間を持て余した五月はスマートフォンを購入し、レシピ動画を配信してネット上の他人とつながってゆくという話を描いた。いわゆる、ユーチューバーデビューだ。

【写真】橋田氏が脚本を手がけたTBS系ホームドラマ『渡る世間は鬼ばかり』

『渡鬼』はその時代を切り取ったものだから、30年以上も続く名作になりえた。しかし、長年の放送の間に山岡久乃さん、藤岡琢也さんら主要キャストが亡くなるといった事態にも見舞われます。'18年には赤木春恵さんもこの世を去ってしまいました。昨年はコロナの影響で作品の制作自体が中止に」(TBS関係者)

 コロナ禍“2年目”となり、ドラマ撮影での感染対策の勝手がわかってきた今年は、『渡鬼』スペシャルの制作が現実味を帯びてきており、エッセイでも新作の構想について触れていた。もちろん舞台となるのは、いまだ収束をみせない“コロナ禍”の日本である。