シルバー人材の仕事で不足を補う

 生活は年金の7万円で成り立つが、ミツコさんは毎月、教会への「献金」をしている。

仕事先での清潔感あふれる掃除の身支度。頭に巻く手ぬぐいは夏場、ハチマキにして汗止めに 撮影/林ひろし
仕事先での清潔感あふれる掃除の身支度。頭に巻く手ぬぐいは夏場、ハチマキにして汗止めに 撮影/林ひろし
【写真】9~10品目が並ぶ、ミツコさんの食卓

「クリスチャンにとって献金は、生活費よりも優先すべきものです。毎月の献金は、私の中で絶対に譲れないこと。牧師を引退しても働く必要があるだろうと、以前から覚悟をしていました」

 引退後、2015年から地元の自治体が運営するシルバー人材センターに登録。

「自分に何ができるかを考えたところ、4人の子どもたちを育てながら担ってきた家事ならできるのではと思いました。

 いまは掃除や料理のため、3軒のお宅に火曜日と木曜日、金曜日にそれぞれ通っています。いずれも子育てをしながら共働きをしているご家庭。若いころの自分と同じような状況のママたちのサポートができるのはうれしいですね」

 時給は1時間約千円。週3日働いて月に2万~3万円の収入に。そこから献金や美容院に行ったりするときの臨時出費を出している。

「身体を動かして働くと若さも元気も保てるので、私は仕事があること、働かせていただけることはとてもありがたいことだと思っています。出かける用事があることで生活リズムも整います。働かせていただける限り、この先も続けたいですね」

お金をかけずに楽しむおうち時間

「夫を亡くしたときは寂しい気持ちもありましたが、子どもと暮らすことは考えませんでした。子育ての最大の目的は自立。娘たちには『18歳までは面倒をみるけど、あとは自分でどうにかして』と言ってきたので、私が自立しないわけにはいきません。自分のことには責任を持ちたい

 子どもから金銭的な援助はしてもらっていない。

玄関の写真コーナー。孫たちが小さいころの懐かしい写真が並ぶ 撮影/林ひろし
玄関の写真コーナー。孫たちが小さいころの懐かしい写真が並ぶ 撮影/林ひろし

「いまの生活は、好きなときにご飯を食べたり、昼寝をしたりできて、自由を満喫しています」

 ひとり暮らしでも少しの工夫で生活に彩りを添えれば、心が安らぐ。子どもや孫と撮った写真は、しまい込まないで玄関に飾っている。遊びに来た孫が昔の写真を見て喜ぶ姿を見ることが、ミツコさんの楽しみだ。

 ただ、病気になるとお金がかかるし、家族に迷惑がかかるので普段から健康でいることを意識している。

「死ぬのは怖くはありませんが、介護で迷惑をかけるのは避けたいですね。朝起きたら30分ほど、筋トレやストレッチをします。テレビや本で紹介された健康法はどんどん取り入れています」

 なるべく“笑顔になること”も心がけている。台所や机の上に小さな鏡を置いて、常に自分の表情をチェック。

「笑顔で過ごせば免疫力が上がると聞いて実践中。気持ちも上向きになれます」

 牧師の活動から、介護や福祉の現場を知っているので老後への過度な不安はない。

「老人ホームや病院にいる親族、教会員を訪ねることも多いんです。私もひとり暮らしが難しくなったら、老人ホームのお世話になるつもり」