20160712_takarada

 ‘54年、映画『ゴジラ』で初主演を果たし一躍トップスターとなった宝田明。82歳になった今でもミュージカルに精力的に出演している。若々しくいられる彼の健康法や、今後はどんな生き方をしていくのかを聞いた。

■『ゴジラ』の主演に抜擢

「友人に“とにかく宝田やってみろよ、落ちてもともとじゃないか”と言われたのがきっかけなんですよ」

 参院選に出馬するとの報道もあった宝田明だが、これは選挙の話ではない。今なお旺盛に活動する彼の原点となった、東宝ニューフェイスのオーディションのこと。

「終戦の2年後に満州から帰ってきて、やっと平和に暮らせるようになりました。学校の演劇で自分以外の者になることに興味を持っていたときに誘われたんです。

 受験会場の撮影所に行くと何千人も並んでいて、怖くなって帰ろうとしました。守衛さんに引き止められて思いとどまり、5か月後に最終の6次審査まで進みます。1次から残ったのは僕ひとり。ほかはみんな縁故でしたから」

 東宝演技研究所での研修中に、宝田は映画『ゴジラ』の主演に抜擢される。

「ビキニ環礁の核実験や第五福竜丸の被ばくが問題になっていたころです。経験は浅いけど精いっぱいスロットル全開にしてやることはやった。観客動員数は960万人という大ヒットになって、その後50年間のうちに28本もゴジラ映画が作られることに。歴史に残る大変な作品に出演できたことはラッキーでした」

■撮影所から銀座に直行

 一躍トップスターになった宝田は、派手に遊ぶようになる。夜な夜な銀座に出かけてバーやナイトクラブをハシゴ。

「遊びたくもなりますよね、自分の金だもの。銀座なんてやっぱ夢だからねぇ。自分の金で飲むから何も文句言われることはないわな」

 昭和のスターらしく、遊び方は豪快。仕事が終わると、撮影所から銀座に直行した。

「車で向かうんですが、飲むと乗れないから置いて帰る。翌日取りに行くと、どこにあるかわからない。ドアボーイさんに聞くと“何丁目のどこどこに止めてあるよ”と教えてくれます。ピンクのキャデラックに乗っていたから、すぐにわかるんですよ」