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 食品横流し問題で一因と言われた「食品ロス」。日本では、食べられるのに捨てられている「食品ロス」は年間642万トンで、そのうち約半数が家庭からの廃棄です。安売りや特売で買いだめしたり最後まで使いきれずに捨ててしまったり……“もったいない”をもう1度、見直してみませんか?

 食品ロス削減に向けた企業の取り組みが進むなかで、今年1月、キユーピーが主力商品『キユーピー マヨネーズ』(一部容量)と『キユーピーハーフ』の賞味期限を、従来の10か月から2か月延長し、12か月にすることを発表した。

 ほかには、日清食品や明星食品が、加盟する業界団体『日本即席食品工業協会』が定めたガイドラインにのっとり、インスタントラーメンの賞味期限を、カップ麺は製造日より6か月(従来5か月)、袋麺は製造日より8か月(同6か月)に延長した。

 カゴメは、東日本大震災後に、『野菜一日これ一本』(缶入り190g)を、災害時の備蓄品として賞味期限を2年から3年に延長している。

 こうした動きのきっかけは、2011年、国際連合食糧農業機関(FAO)が、世界の生産量の3分の1にあたる13億トンの食糧が毎年廃棄されているとの調査結果を公表したことによる。食品ロスが相当量にのぼるとして、食品ロスの削減が世界的に大きな課題とされ、日本でも問題意識が高まった。

 製造業(メーカー)、卸業、小売業、約40社が一堂に会して検討を重ねるワーキングチームを立ち上げ、問題の要因ともいわれる流通の効率化を図るため、商慣習見直しの活動を始めた。

 これまでの商慣習では、製造日から賞味期限までの日数の3分の1が過ぎるまでに、小売業者に納入しなくてはならない。例えば、賞味期限が製造から6か月の食品の場合、卸業者は2か月以内にスーパーやコンビニなど小売りに納品。これを過ぎると卸業者がメーカーに返品し、大半が破棄されることになる。

 こうした商慣習を見直すため、3年前にパイロットプロジェクトを半年程度、実施した。

 菓子と飲料の一部品目の店舗への納品期限を現行より緩和(賞味期限の3分の1を2分の1に)し、それに伴う返品や食品ロス削減量の効果を測定した。その結果、約4万トン、金額にして約87億円の食品ロス削減が推計された。

 このプロジェクトの成果を踏まえて、納品期限を緩和する動きが、大手小売業に広がり、イトーヨーカ堂、東急ストア、ユニー、セブン-イレブン・ジャパン、サークルKサンクスが、ワーキングチームの提言に賛同、納品期限を緩和した。

 納品期限が延びると、販売する期間が長くなり、卸業者がメーカーに返品する食品の量も減る計算になる。

 賞味期限延長は、すでに実施ずみの958品目に加えて、新たに199品目で見直しがされ、今後も227品目が予定されている。

「賞味期限の延長は、各メーカーや企業の決断。賞味期限が延びたことを心配する声など、消費者の反応を踏まえた、情報を共有しながら、業界全体で取り組んでいる状態です。

 長期的にみると、食品ロスが削減できれば企業の負担が減り、価格が下がる可能性もあるので、消費者にとってもメリットはあると思います。消費者と企業は、対等であるべきだと思うので、お互いにロスを削減する努力をする。

 ただし、企業は消費者にリスクのない範囲で、できることをやり、その姿勢を消費者に理解してもらう必要があると思います」(流通経済研究所・石川友博主任研究員)