ドラマ不振のひとつは“ながら見”が要因に

 昨今、視聴率が低下しているといわれるテレビドラマ。井上さんはどのように感じてらっしゃるのでしょう?

「いちばん感じるのは、スマホをいじりながら、ネットしながらドラマを見るようになったことですね。じーっとテレビの前に座って、このシーンのセリフを見逃したら筋がわからなくなるというドラマはなかなか受け入れられにくくなっていて、部分部分を見て面白かったなというドラマが求められているなと思います。ただ、そういうことは度外視して、数字は狙わなくていい、全世代ではなくて、ある一定の層だけが見ればいいんだ、というドラマの作り方も増えてきていて、それはそれでいいことだと思っています」

 また、キャスティングが先行するドラマ作りの弊害も指摘されていますが?

「作品によっては、キャスティングが決まってから台本を作らなければならないケースもあるので、ギリギリになってしまったときはキツイですね。以前、男性主人公で書いた脚本を女性主人公に変更してくれといわれたときは、冷や汗が出まくりました(笑)。

 ノーキャストの段階で企画書を出してもなかなか通りませんが、めげずにやってると、ごくたまにうまくいくこともあります。そういうときは、本当にうれしいです」

 また、井上さんは、テレビは女性が見ることが多いので、夢中になって見た後に“ああ面白かった”“腹立った”など、何か言いたくなるドラマを作りたい、と言います。

「私がドラマを好きになったのは、NHKのドラマ人間模様やTBSの金曜ドラマなどを見たからなんです。早坂暁さんの『花へんろ』シリーズや『事件』シリーズは好きでしたね。向田邦子さんの『幸福』、山田太一さんの『想い出づくり。』などは、何度でも見たいです。『やすらぎの郷』が人気の倉本聰さんだったら、時代劇で『文五捕物絵図』というのがあって、これがとても面白い作品なんです。こうした素晴らしいドラマを作ってきた人たちは、いつも挑戦していたと思います。だから、私も挑戦していきたいですね。

 キントリの反動かもしれませんが、今後は、日常生活をメインにしたお話を書いてみたいですね。人が死んだりするのではなく、すごい事件も起こらないところで物語があるものを書いてみたいです」

 最後に、いよいよ最終回を迎えるキントリの見どころを教えてください!

「過去に密室で行われた取り調べと、現在の緊急取調室がつながる物語です。有希子とおじさん刑事たちに“取り調べとは何なのか?”が突きつけられます。誰が最後の被疑者の取り調べに適任か、みんな手を挙げたいけど、それを選ぶ人がいて、選ばれた人がいる。でも、やっぱりこの人に譲る……といったキントリのチームプレーを楽しみにしていただければと思います」

有希子(天海)は、刑事部長の磐城(大倉孝二)をかばって被弾。撃ったのは、亡き夫に瓜ふたつの峰岸(眞島秀和)だった。キントリのメンバーは、峰岸と共犯者の久保寺(鶴見辰吾)には因縁があり、5年前に起きた事件が発端だったと捜査するが……。テレビ朝日系6月15日木曜夜9時~10時09分放送(c)テレビ朝日
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<プロフィール>
いのうえ・ゆみこ/脚本家。1961年、兵庫県生まれ。立命館大学文学部卒。テレビ東京勤務を経て、脚本家デビュー。連続テレビ小説 『ひまわり』、大河ドラマ『北条時宗』、『きらきらひかる』、『タブロイド』、『GOOD LUCK!!』、『白い巨塔』、『マチベン』、『14才の母』、『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』、『お母さん、娘をやめていいですか?』、『パンドラ』シリーズなど数多くの作品を手がける。芸術選奨、向田邦子賞受賞。上戸彩と斎藤工が共演する不倫ドラマの完結編となる映画『昼顔』が公開中。

<井上さんがドラマ好きになる契機となった作品>
●『花へんろ』シリーズ
 NHKドラマ人間模様で’85年『花へんろ 風の昭和日記』が放送され、’86年『花へんろ第二章』、’88年『花へんろ第三章』、’97年『新花へんろ』とシリーズ化。四国の遍路道に面した商家を舞台に、大正から昭和の時代の庶民の暮らしを描く。脚本・早坂暁、出演・桃井かおり、河原崎長一郎、語り・渥美清。
●『事件』シリーズ
 NHKドラマ人間模様で’78年『事件』(原作・大岡昇平、脚本・中島丈博)を放送。弁護士役の若山富三郎がさまざまな事件を担当するヒューマンドラマで、以後、早坂暁がオリジナル脚本を担当。’79~’84年に『続・事件』『続・続事件』『新事件~わが歌は花いちもんめ』『新事件~ドクター・ストップ』『新事件~断崖の眺め』を放送。
●『幸福』
 TBS金曜ドラマで’80年に放送。大学受験失敗後、妹と暮らしながら鉄工所で働く数夫を恋人が訪ねてくる。恋人の姉は数夫の兄の元恋人であり、数夫とも関係があった。脚本・向田邦子、出演・竹脇無我、岸本加世子、岸惠子、緒形拳。
●『想い出づくり。』
 TBS金曜ドラマで’81年に放送。結婚適齢期を迎えた3人の女が偶然知り合いとなり、結婚を迫る親とのやりとりや、心から誇りにできる青春=想い出を作る日々を描く。脚本・山田太一、出演・森昌子、古手川祐子、田中裕子、柴田恭兵。
●『文五捕物絵図』
 NHK金曜時代劇で’67~’68年に放送。神田天神下に住む岡っ引き「文五」の活躍を描く。原作・松本清張、脚本・倉本聰、杉山義法、出演・杉良太郎、露口茂、東野英治郎。